- 奈良は寺社ばかりじゃなくて・・・
- 1 名前: 惟新斎
投稿日: 2001/4/12(木) 12:24:32
- はじめまして、惟新斎です。
私は奈良に住んでいるのですが、奈良で取り上げられてるのは神社・寺院ばかりで、
何か忘れられてるような気がして投稿させてもらいました。
それは古墳です。正確に言うと前方後円墳です。
古墳というのは日本のものだけを指す言葉ではないらしいですが、
中国・韓国の技術を導入し、あそこまで巨大なものを大量にしかも全国規模でつくったというのは
古代日本の土木技術がいかに優れていたかがを示すものだと思います。
全国に点在する古墳、その中でも特に整備が整っているのをまとめて申請するのは現実的に可能なのでしょうか?
ただ問題となるのは宮内庁が管理しているということでしょうか。
東大寺正倉院宝物堂の例があるので何とかなるものなのかどうか・・・。
- 2 名前: 収斂
投稿日: 2001/4/15(日) 23:45:32
- はじめまして。奈良のキトラ古墳から朱雀の壁画が発見されたニュースは、私を超、超感動させました。多分、奈良の方ではニュース報道や見学者などですごいことになっているのでしょう。
惟新斎さんがおっしゃるように奈良の古墳は素晴らしい。特に大阪の巨大古墳と違って、箸墓古墳のような古墳時代早期から、古墳時代終末期の高松塚古墳、キトラ古墳のような500年以上の古墳の変遷が、奈良県全体で見られます。ほかに北部九州の装飾古墳、出雲の四隅突出墳もあまりに貴重です。
このBBSでは、以前から飛鳥、橿原や、大阪の堺や河内の巨大古墳の話題があがっていました。詳しくは以前の過去の記事を見てください。ただスレッド式掲示板になってから、古墳についての書き込みがないので、近々、明日香村を中心に、古墳時代の物件を世界遺産に登録することについての所感を書こうと思っています。
- 3 名前: 浦に〜と
投稿日: 2001/4/18(水) 18:13:59
- はじめまして。
奈良をはじめ、畿内にある古墳が世界遺産になっていないというのは、歴史的・文化的・建築的に見て極めて不自然なことです。国内の文化財に関しては収斂さんがとても詳しく、私の考えなど本当に素人のものですけど、それでも、古墳が登録されていないのはどう見ても不自然です。
収斂さん>
古墳の中で文化財指定を受けているものとそうでないものの違いって、単に天皇陵か否かということなんでしょうか。私、この辺の文化財指定に関することは何も知らないので・・・ 初歩的な質問で恐縮です。
- 4 名前: 収斂
投稿日: 2001/4/19(木) 00:06:21
- 浦に〜とさん>
実際、何を基準に古墳の陵墓参考地を決めたかは、今となってはかなりいいかげんです。現在、史実によって古墳の被葬者が確実に一致しているのはほんの数例です。それも、史実に記された古墳の形式と、古くからの土地の言い伝えと、古墳の規模・出土品などから、おそらくほぼ間違いないと判断されたものだけで、名前など確実に証明できるものが出土したわけではありません。残念ながら日本の古墳はそういった個人を特定できる証拠を埋葬しないので、いったい誰の墓なのか全然分からないのです。
一方、中国の古墳では、被葬者の氏名、経歴、業績などを克明に記しているので、被葬者を確実に特定できるし、歴史書に登場していない人物や小国の由来までも判明できるのです。
陵墓参考地は、戦前の宮内庁が決めた資料が基本になっています。その資料は江戸時代の国学者や儒学者が考証した内容だったり、日本書紀の記述がもとになっていたりと、科学的信憑性が全く乏しい資料なのです。最近になって仁徳天皇陵という呼称が大山古墳となったのは、日本書紀の記述と土木工学的な築造年代が少し食い違っていて、本当に仁徳天皇のミササギなのか分からなくなったからです。仁徳天皇のミササギは周辺に密集するほかの巨大前方後円墳という説が有力で、近くに埋葬されているのはほぼ間違いないのですが。
私は日本書紀の記述が全て間違っているとは思いません。むしろ正確な記述の方が多いくらいで、今後の歴史学者は、日本書紀の内容をすべて無視するのではなく、誇張した内容であっても、何らかの歴史的事実を暗示しているという視点で考察すべきでしょうが、ただ天皇家の在位期間などは相当いいかげんです。皇紀でいえば今年は2661年ということになりますが(西暦より660年古い)、日本の大和朝廷の歴史は、弥生時代後期から数えても、せいぜい1800年くらいでしょう。戦前の歴史教育では2600年近い歴史に合わせるため、古墳の築造年代が今より500年くらい古く設定されたりしました。
私が、明日香の古墳、特に高松塚古墳やキトラ古墳に関心があるのは、それが日本の古墳ではないという一点に尽きます。あれは朝鮮半島の国の中でもほぼ間違いなく高句麗の古墳なのです。この二つは本来なら高句麗にしか存在しないはずのタイプの古墳なのです。日本人は朝鮮半島の文化財を一まとまりで捉えがちですが、私から言わせてもらえばそれは誤解で、当時は高句麗、新羅、百済という全く違う文化を持った国が朝鮮半島に3つあったという視点が大切だと思うのです。当時この三国は文化が全然違います。そこが飛鳥が世界遺産級の場所であると考えるキーワードでもあります。
今日は時間がないからまた書き込みします。全く素人の意見の雑文を読んでいただきありがとうございました。
- 5 名前: 元村長
投稿日: 2001/4/22(日) 22:45:02
- 浦に〜とさん、お久しぶりです。
一年近く前にアンケートに参加させてもらった某私立大世界遺産
コースで学んでいる「元村長」です。
まあ、HNも変えてしまったわけですが。
この古墳の話は大変興味深いので書きこませてもらいます。
収斂さんのおっしゃる通り、誰のものか分かっている古墳と言うのは
本当に少ないんです。
天皇陵に限定すれば、天武・持統帝夫妻の陵墓だけなのではないで
しょうか。その理由は歴前としています。宮内庁が発掘許可を出さな
いからなんです。不敬だからとかそういう理由だったと記憶していま
す。宮内庁の方々はまだ皇族を現人神だと思っているようですね。
天武・持統陵は盗掘されたため判明した稀有な例にすぎないのです。
少々脱線しましたが古墳を世界遺産にするためにはまず国内法で
文化財(遺産)として保護する必要があります。しかしそれには宮内
庁の許可っていうか日本政府の常識を覆す必要があります。これは
非常に困難な事であるように思えます。この理由のために世界遺産
登録できない伊勢神宮という例もあります(他にも沢山理由があり
ますけど)。そして発掘し、文化財的価値を見せる必要があります。
平城宮跡のように発掘しなくても世界遺産になる例もありますが、
せめて一部は発掘しなくてはならない理由があります。それが、
最後の理由である観光地化させて観光客が来れるような状態にしな
くてはならない、まあ平たく言うと金もうけ出来る状態にしなくては
ならないんです。こう書くと当然反発があると思うんですけど事実で
すから仕方ありません。ユネスコは「世界遺産として認めます。オメ
デトー。これからも頑張れよ。さもないと登録抹消しますよ」と言う
だけで「危機的状況リスト」に入らない限りは一銭の助力もしてくれ
ないからです。事実、世界中のほとんどの世界遺産は観光地化してい
ます。そして旅行会社がツアーを組む時の一種のネームバリューとし
てしか見られないのです。まあそうするしかないんですけどね。保護
には何かと資金が要りますし。宮内庁が管理しないとなると多分民間
で保護する方向になるだろうし、もし国が管理するとしてもそんな余
裕はないでしょうからね。「日本の象徴」のみなさまのご先祖様の墓
っていう定義だったら税金を増やせば何とかなるのかもしれませんけ
ど。だから世界遺産に登録しなくても周りの人がその価値を認めてた
らそれでいいと思うのですよ。躍起になって登録しなくても。
なまじ詳しくなってしまったんでこういう穿った見方しかできませ
んで申し訳無いです。こんな意見で良いんならこれからもBBSに参
加させてもらいたいと思っています。
文章も滅茶苦茶ですが・・・。
あ、あと今宮内庁は無いんでしたっけ。あんまり覚えてなかったの
で使い慣れた呼び名を使ったんですが(苦笑)
- 6 名前: 惟新斎
投稿日: 2001/4/23(月) 00:13:35
- いろいろとご指摘ありがとうございます。
収斂さんのおっしゃるとおり大山古墳をはじめ多くの天皇陵は蒲生君平という変人(笑)が勝手に決めちゃったものを
宮内省(現・宮内庁)がそのまま認めちゃったんです。
私は考古学的発見がどうのこうのと言って故人の墓を荒らすっていうのは余り好かないので、
とりあえず宮内庁管轄から文化財保護への移行さえ認めてくれれば何とか道も開けそうなんですが。
天皇陛下も自分のご先祖様の墓が変人に決まられたのでは納得できないことは・・・ないか(嘆)。
実際問題、ほとんどの古墳はほっとらかしになっているものばかりですね。
考古学的な点で顕著でないものは見向きもされていません。
私の住んでいる町では古墳を中心にした自然公園で結構な娯楽施設になっているんですが、
まあ、そんなのはほんとにいい方なのでしょうね。
大山古墳も最近は仁徳天皇のお墓じゃないかもしれないって言われて落ち目だし・・・。
- 7 名前: 高橋
投稿日: 2001/4/24(火) 00:07:36
- 久しぶりに鎌倉の高橋です。
古墳(陵墓)の発掘調査についてはあまり期待はできそうもありませんね。
岩波新書318椎名慎太郎氏著「遺跡保存を考える」という本に「陵墓の土地はその大部分が法的には国有地であり、国有財産法にいう「皇室用財産」である。その管理は宮内庁法一条の七により宮内庁書陵部が行なっている。宮内庁組織令によれば、書陵部陵墓課は、1.陵墓の管理に関すること、2.陵墓の調査など考証に関すること、を所管している。」
また、「宮内庁は・・・・・墳丘への立入り調査の要求を一貫して拒否してきた。ただし、情報提供については近年若干柔軟な姿勢もあり、日本考古学協会などの学術研究団体と宮内庁書陵部長との年一回の懇談が10年来つづけられている。」とあります。
この、「ただし、・・」の部分もどれほどの内容か、あまりマスコミをにぎわせた記憶はありませんね。
御物、古墳の問題を含め、文化財保護法の歴史は上記の本や、新潮社とんぼの本芸術新潮編集部編「国宝」という本に松山巌氏が執筆している部分にもう少し詳しく書かれていますので、興味のある方は本を探してみてください。
もっとも両書とも世界遺産というシステムが国内で取り沙汰され始める前の内容ですので、現在の御物や古墳に対する国民の関心(と言ったらオーバーか?)よりもトーンは低いと感じます。
上記の本で気づいたのですが高松塚古墳の壁画は国宝、古墳本体は特別史跡に指定されていますが、文部省の管轄なんですね。ちなみに城郭建築なども国(もしくは地方自治体)の財産として登録されていますが、同じく文部省です。
- 8 名前: 浦に〜と
投稿日: 2001/4/26(木) 08:52:52
- 収斂さん>
惟新斎さん>
元村長さん>
高橋さん>
解説ありがとうございました。天皇陵墓の決定はいいかげんなんですね...
私は古墳と文化財指定の関係、それに調査の過去などといった具体的な事を全然知らないので、全くの素人見解となってしまうことをお許し願います。
天皇陵墓に関しては、指摘されている問題点や、近年話題の「世界遺産」というものも絡めて、今後調査が行なわれたり、国指定の文化財になったりすることは期待できないのでしょうか。皆さんの意見を読む限りでは、過去かなりいい加減な決め方であったようなので、ちゃんと調べなおすのが筋だと思いますけど・・・ しかし保全という観点からすれば、このまま放っておくのがベストなんでしょうね。
元村長さん>
>「危機的状況リスト」に入らない限りは一銭の助力もしてくれない
危機的状況リストとは、日本でよく「危機にさらされている世界遺産リスト」と訳されるもの、すなわち
List of World Heritage in Danger
のことでしょうか。しかしこのリストに記載されなくても、保有国が援助を求めて、世界遺産委員会で認められれば、技術的な助力や調査・保全などに世界遺産基金からの援助が出るものだと記憶しておりますが・・・
>世界遺産に登録しなくても周りの人がその価値を認めてた
>らそれでいいと思うのですよ。躍起になって登録しなくても。
そうですね、私も世界遺産に登録する意義などを考えると、結局はこういった考えに帰結します。重要性が認知されていて、ちゃんと保全できていれば登録しなくても良いのです。しかし畿内の古墳は、日本の古代文化をあまねく世界に知らしめることを目的として、世界遺産に登録するべきものであると私は思います。
そこが、単に保全のみを目的としていない世界遺産条約の面白さでもあると思うのです。
最後に単純な質問です。天皇陵墓は国の文化財には指定されていないわけですが、県や市のレベルでの文化財に指定することも出来ないのでしょうか。
- 9 名前: 惟新斎
投稿日: 2001/4/29(日) 14:14:53
- 言い出しっぺなので答えないとまずいと思い書きました。
高橋さんが挙げられた椎名慎太郎氏の「陵墓の土地はその大部分が法的には国有地であり」という言葉ですが、
どうも日本にある古墳は皇族・地方豪族に関わらず全て宮内庁管轄(つまり国有地ということ)にあるのではと思います。
このあたりはhttp://www.kunaicho.go.jp/index.html(Text)「宮内庁ホームページ」の「陵墓」の項にそれらしいことが書いてあります。
また文化財指定について国と地方の二つの方法があるということですが、
意外や意外、奈良や京都って地方での文化財指定ってほとんど無いんですね。
こっちのほうはhttp://www.bunka.go.jp/(Text)「文化庁ホームページ」に書いてあります。
やはりそれだけ重要なものばかりということでしょうか。
まあ私は専門家ではないので古墳を地方の文化財にできるかというのはお答えできませんが、
ただ、古墳から発掘されたものは文化財指定できるようですね。
皇室の意見も尊重し、かつ世界遺産に登録するとなるとそのあたりが適当な妥協点かもしれませんね。
- 10 名前: 浦に〜と
投稿日: 2001/5/3(木) 14:27:19
- 惟新斎さん>
説明ありがとうございました。日本の古墳は全て宮内庁管轄なんですか!?
でも東京にある古墳の中には、国指定史跡になっているものがあるのですが・・・
その上、都指定・区指定の史跡になっているものも数多くあります。そういった点から、国の文化財に指定されていない近畿の古墳でも、県や市のレベルで文化財指定されているケースは無いのかな、と思ったのです。