グレートバリアリーフが危機的な状況
1 名前: 収斂 投稿日: 2001/4/20(金) 20:49:02
ブリスベーンからの18日のロイター通信の記事によると、グレートバリアリーフが危機的な状況にあるそうです。以下その記事です。

「科学者らの報告によると、世界遺産に指定されている世界最大のサンゴ礁群、オーストラリアのグレートバリアリーフが深刻な状況にある。隣接するクイーンズランド州の海岸沿の熱帯多雨林などで伐採が進み、化学肥料を含んだ泥が流れ込んでいることが原因という。オーストラリア海洋科学研究所によると、世界各国からの科学者30人による研究で、農業など人間の様々な活動の影響からグレートバリアリーフを救うために、至急支援が必要なことが分かった。 マックォーリー大学のFrank Talbot氏は、同研究所が公表した報告書の中で、「グレートバリアリーフは、新たな思考や管理面での変革なしには、現状のまま存続しないだろう。生物学的にも美的にも、ゆっくりだが継続的に悪化している」と結論付けている。報告書によると、熱帯気候のクイーンズランド州沿岸の湿地帯や多雨林が広範囲に、サトウキビ栽培のために消失し、化学肥料を含んだ泥が流れ出ている。」

あちこちで世界遺産の危機が報道されていますね。なんとかしたいものです。

2 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/4/25(水) 10:21:22
グレートバリアリーフは以前から、観光客の増加などによる危機が唱えられてきましたが、農薬の流入問題もあったのですね。本当に、人の生活と自然保護の関係というのは、いつまでも解決しないものです。どちらを守ることも出来なくて、自然保全するにも動くことが出来ないのですね。

3 名前: 収斂 投稿日: 2001/5/28(月) 23:13:06
<グレートバリアリーフの危機的状況について>
グレートバリアリーフに、沿岸から土壌が流入して危機的な状態にあるという指摘は、私個人が見ても事実に感じました。少なくとも、ホテルとケアンズの25キロの道のり間には原生林のようなものがほとんど無いのです。別に建て込んでいるわけでははなく、林やサトウキビ畑が延々と広がっているのですが、まとまった森は無いのです。それとグレートバリアリーフ周辺の陸地の土砂のせいかどうかは知りませんが、たしかにホテルの近くのパームコ−ブ海岸はいつも黄色く濁っており、滞在中、一度も澄んではいませんでした。それほど波が強いわけではないのに、全然美しくないのです。実際、ほとんど誰も泳いでいませんでした。
またケアンズ周辺にも海水浴ができる場所はほとんどないそうです。やはりサトウキビ畑や森林伐採が水質を悪くしているように感じました。
それからオーストラリア国民の意識もちょっと低いようでした。オーストラリアは人口が少ないので、今のような自然保護行政でも許容範囲内なのかもしれませんが、少なくとも日本では甘い基準に思えました。建物に断熱材があまり入っていないし、冷房をガンガン効かせながら、ドアを開けたままにしていたり、閉めても隙間が大きく開いていたりと、よくないですね。なんとか改善して欲しいものです。

4 名前: キタキツネ 投稿日: 2001/6/11(月) 22:48:25
収斂さん> ご報告にあった様にグレートバリアリーフの水質汚染はかなり深刻な様ですね。ケアンズ駐在のクィンズランド州政府の公園・野生生物担当官からもグレートバリアリーフ海域の水質汚染の原因等について詳しい話を聞けました。今月パリで開催されるビューロー会議でもグレートバリアリーフの保全状況についての報告がなされるそうです。グリーン島の船着場側の人工護岸にはお気づきになられましたか?スコールなどにより土砂が流出することによる
水質汚濁を防ぐ目的があるのでしょうか,自然に人工の手を加えることは私はもともと好きではありませんがこれも土木技術のなせる英知なのかもしれません。グレートバリアリーフの空撮は雲が邪魔をしてなかなかベスト・ショットまではいきませんでしたがアンセット航空の親切なパイロットのお陰もあって何とか撮影できました。
http://www.dango.ne.jp/sri(Text)で公開していますので,ご覧下さい。
フレーザー島もブリスベーンの空港から飛び立った間もなく幸運にも空撮に成功しました。世界遺産についてはこのほか中東部オーストラリア雨林,ブルーマウンテン,それに,世界遺産候補のオペラハウスも見学することが出来ました。オペラハウスについては様々な評価がありますが国際設計コンペで入選したデンマーク人の作品とあってその着想には感心しました。また,キュランダでは先住民族アボリジニーの風俗習慣にも接し伝統舞踊も見ることが出来ました。オーストラリアはやはり雄大な自然,そして,古いものと新しいものが共存した歴史,なかでも,負の遺産があることも忘れてはならず,金鉱山開発関連の産業遺産も
いずれ脚光を浴びてくるものとみています。

5 名前: 収斂 投稿日: 2001/6/12(火) 01:55:14
キタキツネさん>
ご無事で帰国されましてなによりでした。お疲れ様でした。

グレートバリアリーフの汚染はやっぱり進行していたんですね。破壊箇所が、観光化された場所だけに限定されていることを願っていたのですが。
考えられる問題点として私が一番に感じることは、どうも人々の意識が足りないように思うのです。リーフには、世界中から観光客が大挙して来ていましたが、ほとんどの人がその汚染に気付いていない気がしたのです。遊覧船の乗務員でもそうです。観光パンフレットにも、美しい写真ばかりが掲載されてあって、危機が進行していることに観光客が気付かないのです。またオーストラリアには日本とは比べ物にならないくらい土地があるので、見かけ上、林や小さな森といった自然は生活のごく身近にあります。しかも農業も盛んですから、国民は、オーストラリアでは工業化による自然破壊は起こっていないと錯覚しているのではないでしょうか。
それに政府としても貴重な観光収入源にとってネガティヴな情報を進んで提供するとは思えません。なんとか対策を検討すべきでしょう。

金鉱山開発関連の産業遺産についての指摘は面白いですね。ケアンズの西にもそういう鉱山開発のために敷設された鉄道がありました。私は、そういう鉄道があることをケアンズに着いて初めて知ったのですが、面白い産業遺産といえましょう。

6 名前: キタキツネ 投稿日: 2001/6/12(火) 10:13:26
収斂さん>同感です。グリーン島周辺の海中をグラス・ボートで見ましたが,死んで白くなった珊瑚も数多く見られました。北方には太平洋戦争の珊瑚海海戦の舞台となった珊瑚海が広がりますが,死んだ珊瑚は戦争で海でなくなられた方々の遺骸の様にも映りました。ケアンズ駐在の担当官からもらった資料の中にオーストラリア環境省が発行しているShorelinesというニューズレターがあります。その中に海洋環境における栄養物と沈殿物の発生源がフローチャートで示してあるのですが,その発生源として,industrial discharges,stormwater run-off,urban sewage,soil erosion,phosphate&nitrogen fertilser,shipping wastes,boating wastesがあげられています。お気づきになられたかと思いますがケアンズ周辺にはサトウキビ畑が目につきました。農薬に含まれる尿素,窒素,過リン酸石灰などが土砂などと共に海域に流出しているのでしょうか。また,汚水の浄化システムについても図示されていますが限界があるのでしょうか。下水道処理システムも浄化後,海域に流さず循環浄化させることは出来ないものでしょうか。海の富栄養化,沈殿物の堆積による影響は,赤潮の発生なども含め酸欠状況などを招いて珊瑚の死滅にも至っている様です。また,船がよく座礁する様ですね。オイルの抜き取りなどパニックによく陥ると聞いています。何とかしなければなりません。グレートバリアリーフの環境問題も私どもの通年の研究テーマに加えウオッチしていきたいと考えています。また,ドキュメント番組として取り上げるテレビ会社などがあれば協力していきたいと考えています。

7 名前: キタキツネ 投稿日: 2001/6/12(火) 10:18:49
訂正>ドキュメント番組→ドキュメンタリー番組

8 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/6/13(水) 19:32:28
汚染の要因として挙げられるものの一つにサトウキビ栽培があるようですが、これは近年進出もしくは急増したものでしょうか。グレートバリアリーフ沿岸の森林地帯を伐採するだけでも、サンゴ礁に大きな悪影響が及ぶということは明らかな事だと思います。広いから大丈夫だ、などという考えでもあるのでしょうか。

別のスレッド(オーストラリアの世界遺産。)で収斂さんが指摘された、遊泳地区のサンゴの破損が甚だしいというのも、私は当初、人為的な故意の破壊行為によるものと思ってしまいました。しかし、どうもそうでは無いようですね。

またパンフレットに美しい写真ばかり、というのも私は好きではありません。汚染や破壊が進んでいるのなら、それも併記したり、一コーナーとして過去100年くらいの歴史を載せてもいいかもしれませんね。そうして観光客に広く知らしめることも大切です。実際に私も国内を色々と旅行して、見てきた後に、そこが何らかの危機に面していることや、最初の状態とはまったく違うものになっていると知ったこともあります。もっともこれらのケースは私の事前研究・調査不足が災いしているだけかも知れませんが・・・

キタキツネさんの報告にある船舶やボートによる廃物というのは、やはり観光公害なのでしょうか。それとも漁業(あの辺でやってるのでしょうか)によるものでしょうか。

キタキツネさん>
シドニーはオペラハウスや港よりも、オーストラリアの初期ヨーロッパ人都市としての意義の方が大きいように思えます。私はシドニーへ一度だけ行ったことがありますが、オペラハウスではあまり感動を覚えませんでした。それよりもハーバー・ブリッジの方が見て面白かったです。またシドニーの古い地区や、市街の古建築なども印象的に覚えています。ただその頃はあまり世界遺産などに詳しくなかったものですから、気付いた点などを記録した訳ではないので、記憶違いの部分もあるかと思います。

全体的にシドニーの港の方は、あまりにも観光地として整備されすぎているような感じがしました。中心からちょっと外れると緑も多く、古建築も残されていました。それでもあまり古いものは無かったように記憶しています。

1981年にシドニー港が世界遺産登録を見送られた時、植民地時代の遺構も含むようにと通告されていましたが、世界遺産になれるほどのものが残っているのか疑問です。

9 名前: キタキツネ 投稿日: 2001/6/13(水) 22:13:57
浦に〜とさん>オーストラリアのサトウキビの生産は世界7位で,サトウキビの栽培に肥料が使われ始めたのは1950年頃だそうです。肥料を使う理由は土壌が肥沃ではないということによります。スコールや大雨が降った時に土壌が雨水と共に川に流出しそれが海に流れ込むわけです。船舶やボートの廃棄物は,主に糞尿や廃油等によるものだそうで,私が乗船したクルーズ船のトイレも生放流ということなのかもしれません。ヨットやモーターボートなどのプレジャー・ボートの汚水処理は日本も含めて一般的にどの様にされているのでしょうか?富士山もし尿問題が深刻化していますが,海の場合も富栄養化の原因の一つとなり気付かぬうちに水質を汚染しているわけです。シドニーについては都市建設の歴史が200年くらいであるにもかかわらず実に立派な都市をつくったものだと感心しています。世界の三大美港の一つとあって夜景は実に美しく思いました。ハイアットのレストランで潮騒をきき正面のオペラハウスを見ながら飲んだXXXXのビールは格別でした。子供達が新婚旅行でここに来れればと思いました。シドニーも都市研究の題材の一つに加えようと思います。

10 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/6/17(日) 18:38:28
キタキツネさん>
解説ありがとうございました。ということは、最近になって自然の浄化能では処理しきれなくなったということでしょうか。それとも本格的な調査などによってようやく明らかにされたということ?

ともあれ、サンゴ礁が甚大な被害を被っていることは確かなようなので、対策が問われますね。今後、汚水や廃物などの放出を抑えたり、化学物質を含む土壌の流入を防ぐのは当然のことでしょうが、既に汚濁の著しい箇所はどうすれば良いのでしょうか。
また船舶は、日本において小型船やヨットでは生放流というものも結構多いと思います。

11 名前: キタキツネ 投稿日: 2001/6/17(日) 19:52:26
最近になってという話ではなく慢性的な堆積でそれが様々な側面で露見してきているということではないでしょうか。人類の英知が必要なんですよね。大型タンカーの座礁にしても積載物が石油や化学性物質であると被害はますます広がるわけです。人間が産業なり生活していく上で必要なものが運搬されているわけですが港に陸揚げせざるを得ない。水質汚染の問題についてはグレートバリアリーフに限らず様々な水域で問題になっています。地中海,国内では,瀬戸内海,有明海,東京湾,琵琶湖など閉鎖性海域では問題が一層深刻になります。生物であるグレートバリアリーフの珊瑚はむしろ早めに人類にその警鐘を鳴らす生き証人かもしれません。東京湾の生物はどうでしょうか。羽田空港への着陸前,千葉方面からアプローチしますが,東京湾の赤潮をこの前も目にしました。下水にしても一定の環境基準をクリアしているものが放流されているのでしょうが,基準以下のものでも長年の歳月が汚濁物の堆積となり生物の酸欠状況を生んだりしているのではないでしょうか。人類と科学技術との相克ではありませんが,負の側面をクリーンに転換する,或は,排出物を出さないメカニズム,或は,社会システムの変革が必要だと思います。小型船やヨットでの生放流,これくらいだったら良いだろうといった人が一人,二人,三人と増えていったら気付かぬうちにという図式なのでしょうか。人類の英知が問われています。

12 名前: 収斂 投稿日: 2001/6/17(日) 22:06:05
<水質汚染について>
私の高校時代からの数少ない友人の一人が、東京大学大学院を修了後、地元福岡県で環境行政を担当する公務員をしておりますが、彼の話では、水質汚染の主原因は、やはり下水道の整備不足と環境基準の甘さにあるのだそうです。諫早湾の問題も、干拓事業だけではないはずと言ってました。水門の閉鎖であれだけの被害が出るのはおかしいそうです。つまり干潟を閉め切る前から、何らかの変化があったはずで、その異常に気がつかなかった行政にも責任はあるが、一番の責任は、毎日、漁をしている漁民にも対策をしなかった過失があるのではないか、というのです。実際、周辺の市、町の職員は、諫早湾の閉め切りが汚染の原因ではないと気付いているそうですが、漁連が恐ろしいから、一応、排水門を悪者に祭り上げて、知らん顔しているそうです。(ひどい話ですね)

ただ、高度経済成長時代の公害の反省から、瀬戸内海だけは特に排出基準が厳しく、一定量以上の排出には届け出が必要なのだそうです。実際、瀬戸内海では、夏季になると、たいてい毎日どこかで赤潮が頻出しているそうですが、大規模な被害が出ることは少ないそうです。

またこれも、別の知人から聞いた話ですが、下水道の普及が遅い原因として、下水処理場を建設する用地の買収が難しいからだそうです。住宅密集地の地価は高く、3割自治といわれる地方都市の少ない予算では、必要と知っていても、建設に経費がかかりすぎて、どうしても対策が後手に回ってしまうのだそうです。ですから、私は、そういうどうしても必要な公共施設の建設には、土地の強制買収なども行えるように法律を改正した方がよいのではないかと思います。

水質汚染は、その原因が、確実に人間生活に起因したものであるので、なんらかの強制的な法的対策が必要だと感じます。

13 名前: キタキツネ 投稿日: 2001/6/18(月) 01:18:41
日本の公共下水道整備率は約60%で,欧米諸国と比較してもまだまだ低いですね。日本のODAのあり方については,いろいろ批判も強くなっていますが,公共下水道の整備状況を見る限り,開発途上国に援助するどころか,自国の整備率をあげていかなくてはという感を強くします。それにしても,上水については,オーストラリアでは水の心配がいりませんでした。水をまともに飲めない国が欧米にしろ中国などアジア諸国にも多いですが,オーストラリアではレストランでも水はただで出してくれました。