- 大分県の石仏について
- 1 名前: 収斂
投稿日: 2001/7/15(日) 22:10:47
- 大分県の石仏といえば、臼杵、大野川流域、国東半島という3個所に大別できます。ここは以前、世界遺産に向けた運動をするという新聞記事を読んでから、注目していた場所です。私も一回行ったことがあります。石仏といえば奈良・大和路が有名ですが、ここ大分の石仏も、質・量ともに全国屈指の水準です。
ちなみに、石窟の世界遺産といえばやはり中国の物がずばぬけています。ですから、ここで中国の石仏と比較するのは無理があります。中国の石窟はひとまず抜きにして、それ以外の東アジアの石仏と比較してみたいです。
今回は基本資料として、大分の石仏でも特に世界遺産候補に該当しそうな代表的なものだけを列記しました。
<臼杵の石仏>
大分県臼杵市深田地区の丘陵の斜面にある。彩色を施し、像全体を木彫風に仕上げているのが特徴。平安時代から鎌倉時代に造られ、数体ごとにまとまって群をつくっている。古園15体、山王山3体、堂ヶ迫25体、ホキ19体の62体があり、そのうち59体が平成七年に国宝指定。(解説は長くなるので省略)
<大野側流域の石仏>
鉄釘や粘土を塗布したものもあって臼杵の石仏とは別の製作者集団がいたと考えられている。
普光寺磨崖仏 不動三尊像
高さ20メートルの断崖に彫られた8メートルの坐像。黄色く塗られているのも特徴。また両脇に二童子を従えている。また右手に2つの石窟があり、大日如来と毘沙門天(3.5メートル)の像がそれぞれ彫り込まれている。
元町磨崖仏
大分市内にある元町磨崖仏は高さ3メートルの薬師如来坐像を中心に、左に2.6メートルの毘沙門天像、右に2.5メートルの不動明王と2体の童子を配している。平安時代の作と考えられ、多くの石仏の中でも完成度が高い石仏の一つである。顔は丸く、全体的にやわらかい曲線で仕上げられている。ただし薬師如来像の胸部以下の破損が深刻であるが、その破損した部分から鉄釘を芯にしていたことが判った。国指定史跡。
菅尾磨崖仏
千手観音、薬師如来、阿弥陀如来、十一面観音、多聞天の5体が並ぶ。台座に特徴があり、多聞天以外は裳懸座という飛鳥時代から奈良時代の古い台座をしている。完成度が高く仏師が中央の仏師だった可能性が高い。また、顔料もわずかに残っている。国指定史跡、及び重要文化財。
緒方町の石仏
大分県大野郡緒方町には石仏が多い。中でも緒方宮迫東西磨崖仏は有名である。この磨崖仏は二つの石窟から構成され、互いに200メートルくらい離れている。そのため東磨崖仏、西磨崖仏と呼んで区別されている。東磨崖仏は薬師如来を中尊に左右に多聞天、不動明王を配置している。西磨崖仏は中尊に釈迦、左右に薬師如来、阿弥陀如来を配している。この東西の磨崖仏は彩色が残っており、また裳懸座である特徴がある。国指定史跡。
犬飼磨崖仏と大迫磨崖仏
犬飼磨崖仏(史跡指定)は、大野川の見える丘陵の岩壁を掘りぬいた洞窟の中の、不動堂という堂の中に安置されている。不動明王像は高さ3.76メートルと大きく、また二童子を従えている。石仏にはかすかに彩色の跡が残る。大迫磨崖仏は犬飼町の隣の千歳村にあり、高さ3.2メートルの大日如来が凝灰岩の壁に彫られている。
高瀬磨崖仏
山裾の小さな洞窟内部にあるため、保存がよく、彩色がよく残っている。大日如来、大威徳明王、深沙大将、如意輪観音、馬頭観音の5体が彫られている。史跡指定。
<国東半島の石仏>
熊野磨崖仏
藤原時代末期の物で、国東半島最大の磨崖仏である。左の不動明王は8メートル、右の大日如来は6.8メートルもあり、また、背後には一部曼荼羅の石刻も残っている。ただし、頭から下の彫りが極めて簡素化されているのは不思議である。国の史跡、及び重要文化財。
天念寺川中不動磨崖仏
不動明王と二童子を配している。中央の不動明王は高さ3.2メートル、両脇の童子も2メートル、1.7メートルあり、水の安全を守るとされ今でも供物が絶えない。
元宮磨崖仏と大門磨崖仏
元宮磨崖仏は国の史跡に指定されており、富貴寺から真木大堂に行く途中の、田染の八幡神社横の岩壁にあり、多聞天(2.2メートル)、童子2体、不動明王(2.0メートル)、持国天(1.9メートル)、地蔵菩薩の6体が刻まれている。大門磨崖仏もその近くにあり、大日如来坐像を中心に、薬師如来、多聞天、不動明王、識別不能の如来が並ぶ。
そのほかの磨崖仏
堂ノ迫磨崖仏は天念寺の北西の西国東郡真玉町大岩屋にあり、六観音像や六地蔵が並ぶ小さな磨崖仏である。また大日如来を中尊にした福真磨崖仏など、多くの石仏がある。
<国東半島の文化財>
富貴寺、真木大堂、両子寺
富貴寺は九州最古の木造建築で平安時代のもの。堂内部の壁画は、損傷が激しいが、当時のものとして貴重。国宝指定。真木大堂、両子寺も由緒ある寺院で、六郷満山の名刹の名残を今に伝えている。
<国東塔>
国東半島特有の石塔で、総数は約150。重要文化財指定の物も多い。西国東郡大田村財前家墓地石塔、東国東郡国東町の長木家墓地石塔、岩戸寺の石塔は重文指定。
- 2 名前: 収斂
投稿日: 2001/7/15(日) 22:17:53
- ちなみに南山の石仏は、約60体だそうです。それが2キロ×3キロくらいの南山に点在しているそうです。もしそれが本当なら、臼杵の石仏群だけで数が並びます。おそらく、約60体ではなく、約60個所の間違いではないかと思うのですが、詳しいことはわかりません。だれか教えてください。
- 3 名前: 浦に〜と
投稿日: 2001/7/20(金) 11:23:53
- 収斂さん>
大分にも石仏・磨崖仏が沢山ありますね。世界遺産にするには規模も重要ですが、何より顕著で普遍的重要性の有無が問題になってきますからね。大分では特に国東半島が、独特の文化を育んできたと聞きます。しかしそれらも、日本における重要性であって、世界的に見て世界遺産になれるほどのものとは思えません。非常に興味深いものであり、大切な文化財だというのは分かりますが、それと世界遺産登録とは別問題です。
ただ日本文化自体が、顕著で普遍的な特異性とでもいうべきものを持っているようにも感じられますので、その辺と関連付けられれば、うまく登録できるかも知れませんね。
- 4 名前: 収斂
投稿日: 2001/7/23(月) 02:00:48
- 私も大分の石仏の世界遺産化は無理と感じています。ただここには富貴寺のような古い木造建造物がありますし、真木大堂の仏像も多くが国宝指定です。熊野磨崖仏と普光寺磨崖仏のような大きな磨崖仏もあります。マダラの騎士像や南山が登録できたなら、国東半島も応援したくなります。(ついつい、ひいきしてしまいます。)
大分県では、石仏を中心にした観光がまだ整備不足に感じています。岡山県の吉備路は備中国分寺や吉備津神社、吉備神社、造山古墳、作山古墳、といった重要な文化財をサイクリングコースで結んでいます。そこは自動車が入らないため、自転車は安全に走れますし、観光コースで道に迷う心配もありません。ですから、大分でも、宇佐神宮から国東半島の石仏、富貴寺、真木大堂を通り、大野川の石仏を巡って、臼杵の石仏まで伸びる道を造ったらいいと感じます。狭い道でいいですから、分かりやすくしたらもっと知名度が上がっていいと思います。
- 5 名前: 浦に〜と
投稿日: 2001/7/27(金) 21:39:19
- 「マダラの騎馬像」・・・・・確かに。大分の石仏群と「マダラの騎馬像」との比較も面白いですね。マダラは、本当に全世界的な普遍的重要性をもっているといえるのでしょうか。疑問です。(私は結構好きですけどね)。
あれほどのレリーフを穿つのも、中世ヨーロッパの偉業だというのは分かりますが・・・