| 湧出地泉温と浴槽泉温 |
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| 温泉施設の脱衣場等の壁を注意深く見渡すと、「温泉分析書」という、いわば温泉のプロフィールが記された掲示物が掛かっており、ご覧になったことがある方も多くいらっしゃるかと思います。 そのなかの項目の一つに、下記写真のような「湧出地の泉温」が記載されております。 |
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| また、違う項目に目を移すと、下記写真のような、「泉質分類」が記載されております。 |
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| 上記二枚の写真は、同じ大分県:「まほろば温泉菟狭」のものですが、ここで記されている「42.6度」という湧出地泉温と、「高温泉」という泉質分類とは、どのような関係になっているのでしょうか?【表1】をご覧下さい。 | ||||||||||
表1:湧出地泉温と温泉分類の関係
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| 【表1】で示されているとおり、「まほろば温泉菟狭」は、「42度以上の湧出地泉温」であることから、「高温泉」の分類で間違いないことが分かります。 さて、みなさまもこのような経験がおありではないでしょうか? 「分析書に書かれた温度は26度しかなかったのに、浴槽のお湯は40度以上はあり、汗だくになりながら入浴した。」 逆に 「分析書では83度と書かれていたので覚悟して入浴したら、どう考えても浴槽のお湯は40度未満で、とても気持ちよかった。」 (実際問題、83度もあるお湯をうめないで入浴すれば間違いなく火傷しますが…。) などといった経験が。 今までのご説明で、ただの「泉温」では無く「湧出地泉温」という言葉を使用させて頂いたところに鍵があります。 当サイトでは、 「温泉の利用形態として最もポピュラーな、浴槽内のお湯に入浴し、肌に触れるときの泉温の情報が最も求められている」 という考えから、私がpH・温度計にて浴槽の泉温を計測した結果を「浴槽泉温」として掲載させて頂いております。 (浴槽が複数ある場合は、いちばん大きいメイン浴槽または源泉度がいちばん高い浴槽の値を計測しております。) 「グラフで分かる!温泉プロフィール」で「まほろば温泉菟狭」の浴槽泉温は、以下の通り、「39.7度」という測定結果となっております。 |
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| 湧出地の泉温と比べ、約3度下がっており、浴槽にはむしろ「高温泉」ではなく「温泉」に分類されても不思議ではないお湯が満たされていることになります。これは、源泉地より浴槽まで引湯をしている間に温泉水が冷やされ温度が下がったと考えることができます。 (また、「温泉は生き物」であり、源泉の状態も日々変化するゆえ、計測した日(この場合は2005(平成17)年10月25日)に「たまたま」42.6度であった…ということもできます。) よって、湧出地泉温が高い高温泉は、源泉地から浴槽まで長い距離がある場合、意図的に空気に触れさせて入浴に適した温度に下げるといった工夫をしています。この原理を利用したのが、観光資源にもなっている「草津温泉の湯もみ」ですね。 また、温度が高過ぎて空気に触れさせるだけでは入浴に適した温度にならない場合、源泉地から浴槽まで、温度を下げるだけの距離や施設をつくる場所が無いといった場合には、水を加えて泉温を下げることも行われます(いわゆる「加水」)。 当然のことながら、水を加えることで、温泉成分が薄まり、本来の分析書で記載されている入浴効果も薄まってしまうのですが、上記のような工夫により私達が気持ちよく入浴できる泉温でお湯が提供されていることになります。 まあ、細かく言ってしまうと、空気に触れて温度を下げることも、行き過ぎれば「酸化」による源泉の劣化を促してしまうことになるのですが…。 (このことについては、いずれ回を改めてやりたいと思っております。) 逆に、20度、30度といった低い温度の源泉については、「加温」といったかたちで(すなわち源泉を沸かす)入浴に適した泉温になるまで温度を上げて提供しておりますが、これも加熱することで泉質に変化が生じてしまう要因にもなるため、加温した浴槽とは別に、「源泉浴槽」と銘打って別に加温しない、源泉温度のままのお湯を提供する浴槽を設置している温泉施設が多く見受けられることは嬉しい限りです。 また、高温泉の場合同様に、「あらかじめ沸かしておいたお湯を温泉に混ぜる」といった方法(これもいわゆる「加水」にあたる)で温度調整する温泉もあります。 最後に、上のグラフをご覧になり、34度、37度、39度、42度、45度といった5箇所に太線が引かれており、これが何を示すのか疑問に思った方もいらっしゃるかと思います。次回は、「浴槽泉温別入浴法」と題しまして、この疑問にお答えしたいと思います。 |
| 【参考文献】 ・「温泉ソムリエ テキスト」(温泉ソムリエ協会) |
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