’00.3.7

                                           NO.145


花屋のじいさん
 

○ はじめに

 実践にあたっては、岸岡浩子氏の論文(「鍛える国語教室」明治図書16号)を参考にした。

氏は、この詩を、2年生になったばかりの子供たちに実践している。 

金子みすゞの詩は、何度読んでも心にやさしい。

 文も平易で、子供から大人まで楽しめる。

 しかし、実に読むたびに新しい発見がある。

 奥が深いのである。

 「あれども見えず」を問うことは、詩の美しさ、内容美を鑑賞させるのに、恰好の教材と成りうる。

 実施学年は6年生。教材を記す。


    
花屋のじいさん
                  金子みすゞ
  花屋のじいさん
   花売りに、
   お花は町でみな売れた。

  
花屋のじいさん
   さびしいな、
   育てたお花がみな売れた。

  
花屋のじいさん
   日がくれりゃ、
   ぽっつり一人でこやのなか。

  
花屋のじいさん
   ゆめにみる、
   売ったお花のしあわせを。
      (金子みすゞ童謡集「明るいほうへ」JULA出版)

 

 

○ 授業の流れ

 教材詩を板書し、視写させる。

 速くできた子には、小さな声で読むように告げておく。

 全員視写後、一回教師が範読する。

 その後の指示。


指示1 全員起立。3回音読します。一回目はその場で、二回目は真後ろを向いて、三回目は座って読みます。
はい、はじめ。

 

全員音読後、


説明1 金子みすゞさんの詩というのは、とっても分かり易く、や
さしいですね。だからこそ、多くの人に読まれ続けてきたのでしょ
う。

さて、2,3聞きたいことがあります。
これは、書かなくていいです。

 

 


発問1 花屋のじいさんは、どこへ行ったのですか?○○さん。
 

 一人を指名。「町」と答えた。「その通り。」と言って次の問答。


発問2 花屋のじいさんは、どこに住んでいるの?○○さん。
 

 同様に座らせたまま、別の子供に列指名で答えさせる。

「わかりません。」「小屋。」しか出なかった。

 これは、発問が良くなかったからであろう。そこで、以下の問いに替えた。


発問3 じいさんは、町に住んでいるのですか。
 

 列指名で尋ねた。

「わからない。」「町ではない。村かな。」「町から離れたところ。」と数名が答えた。

そこで次のように問うた。


発問4 どこから、そのことが分かるのですか。
 

 『「花売りに」と書いているから、売るために町に出ていったと思う。』

と一人の子供が答えた。

 「なるほど。正しいかどうか分かりませんが、書いてあることをもとにして答えられることはすばらしいことです。」とここでは告げた。


指示2 さて、ノートに「?」マークを書きなさい。
 

 


発問5 それでは、花屋のじいさんは、今どこにいるのですか。
「?」の下にズバリ一言で書きなさい。

 

 即答を命じた。この程度の問いには、6年生であればすぐ答えられなければならない。

 一人を指名。「小屋の中」と答えた。

すぐに「どこから分かった?」と聞き返す。

「三連に『ぽっつり一人で小屋の中』と書いています。」と子供。


説明2 その通り。今、じいさんがいる場所は分かった。
小屋の中にいる。ここに住んでいるかは分からない。

 

 間髪入れず問う。


発問6 では、なぜ小屋の中にいるのですか。これは聞くだけにします。
 

 同様に列指名で座ったまま答えさせていく。

 「分かりません。」「寝るため。」「花を育てるから。」「自分の家だから。」

「そこが寝床だから。」「花が売れたから。」など明確でない発言が続く。

 そこで次のように尋ねた。


発問7 普通は、小屋は何のためにあるのですか。
 

 「物置」と子供たち。辞書で調べて答える子もいた。


発問8 物置なのに、なぜ、じいさんは今小屋にいるのかなあ。
これが分からないと、この詩が分からないんだよ。・・・(間)
目を閉じてごらん。小屋の中に入りますよ。何かありますか。
何か見えてきましたか。口々に言ってごらん。

 

 「農機具」「花を作るための道具」「プランター」「肥料」「スコップ」

「くわ」「藁」「リヤカー」「車」などが出された。


説明3 はい、静かに目を開けなさい。
先生はね。こう考えているんですよ。
町とじいさんのうちとは、そんなに近くはない。ものすごく遠いというわけでもない。
しかし
花を売りに町に行くためには、さっき言っていたんだけれ
ど、それを乗せるリヤカー、つまり荷車がいる。
荷車にひとつひとつ丁寧に育てた花を摘んで町に行き、売れた後の荷車をまた、うちまで引いてきて、そっと小屋に入れた。
そのために、今、小屋の中にいるのだ、そう考えるんです。

 

 あれども見えずの問いである。

 どうにでも解釈できるかもしれない。

 しかし、こういうことを明らかにしていくことが、詩の鑑賞には必須であると考えている。

 かつ、教師の自分なりの明確な解釈を持っていなければならない。

 押しつけになるやもしれぬが、時にこのように教師の考えを伝えることも大切なことである。


指示3 では、こういうことをもう一度頭に描きながら、みんなで
一回読みましょう。

 

 一斉読みした後、次の指示。


指示4 二つ目の「?」をノートに書きなさい。
 

 


指示5 二連を指さしなさい。「花屋のじいさん さびしいな」とあります。「さびしいな」に赤鉛筆で線を引きなさい。
 

 


発問9 どうして、花屋のじいさんはさびしいのですか。「?」の下に自分の考えを書きなさい。
 

 作業後、列指名で座ったまま答えさせていく。


・育てたお花がみんな売れたから。
・一人になったから。
・自分で育てたお花が売れてしまったから。
・荷車が軽くなってしまったから。

 

 このような的を射ぬ曖昧な意見が続く。

 ここでは、あえて深入りせず、聞くだけにして次へと進めた。


指示6 さて、四連目に「ゆめにみる」と書いてあります。
そこに、赤鉛筆で波線を引きなさい。

 

 


発問10 「ゆめにみる」ということは、どういうことですか。
ノートに書きなさい。

 

 作業後、列指名で答えさせる。


・お花が幸せになってほしいと思うこと。
・お花の幸せを心からそうなってほしいと思っている。

 

 他の子供も、そうだと言う。

ここて゛、「花のしあわせとはなにか」ということも考えていくと、

発問9の「さびしさ」が、さらに深められたところまで解釈されることであろう。

 ところで、ここでこの詩に対する私の考えを述べる。

 この詩の美しさは、じいさんの花に対する愛情そのものにある。

 花を育てることに多くの時間を費やし、見つめ続けてきた花なのである。

 「さびしい」のは、なくなったからではなく、慈しんだ花との別れが寂しいのである。

 その背後にあるのは、紛れもなく花売りのじいさんの花に対する愛情なのである。

 だからこそ、花のしあわせを願うのである。

 そうでないと、花は単なる商品であり、儲けを得て売れたことを喜ぶはずである。

 このあたりを子供たちに是非とも感じさせたい。


説明4 みなさんが言ったように、先生もそう考えます。
「ゆめにみる」とは、強く願うと言うことです。
じいさんは、売られていった花がしあわせになってほしいと強く強
く願っているのです。

 

 


発問11 もう一度戻りますが、問題になるのは「さびしいな。」
なんです。さきほど尋ねたら、「みんな花が売れたから」と答えて
くれました。
では、一本だけ残って、他の物が全部売れたとしたら、じいさんは
やはり寂しいでしょうか。(○)それとも、寂しくはないでしょうか。(×)
ノートに○か×か書きなさい。

 

 1分ほどで、子供たちはとりあえず自分の立場を決めた。

 挙手で調べてみる。


○・・・・・21人、×・・・・・12人
 

 人数の少ない×派から意見を求める。


×花が一本だけでも残ったので、寂しくないと思いました。
×みんな売れたんじゃなくて、一本だけでも残っているんだから、
別にそんなに寂しいというわけではない。
×一連と二連に、花がみんな売れたということが強調されていて、さびしいという気持ちが強く出ているから、一本でも残っていれば逆に寂しくない。
×今まで花はいっぱい売っているんだし、一本だけ残ったぐらいで
 寂しいはずがない。
×このじいさんは、多分おばあさんが亡くなったと考えて、花がじ
いさんの話し相手になっていたんじゃないかと思ったので、一本
でも残っていれば寂しくないと考えました。
×花が一本でも残っていれば、その時売れた花が思い浮かぶので寂しくなくなる。
×「さびしい」の次の行に「みな売れた」と書いていて、「さびしい」のと「みな売れた」を入れ替えると、「みな売れたさびしい」となるけど、一本残っているとみんな売れていないことになるし、別に寂しくとも何ともない。
○大切に育てて、いろんな思い出があって、だからこそ売れてほしいと思ったんじゃないですか。一本だけ残れば、かえって寂しい
のではないですか。
○その意見はぼくも思ったんですが、多分花を育てるときにいい思い出がいっぱいあったから、一本残った花があればその思い出がよみがえってくると思うので、花との思い出がまた芽生えてきて寂しくなると思うのですが。どうですか。
○二連目に「全部売れてさびしい」と書いているから、やっぱり寂しいでしょう。違いますか。

 

やはり、子供たちにとっては、何が寂しいのかと言うところが難しいように思えた。

発問を変える。


発問12 では、これだとどうでしょう。一本だけ売れて、後は残
った。さびしい○、さびしくない×。どちらかノートに書きなさい。 訳もできたら書きなさい。

 

 3分後、○×を挙手にて確認する。


○・・・・・27人、×・・・・・6人
 

 


指示7 ×派の6名の人が先に意見を述べます。そしたら、○派の人が意見や反論があったら述べていきなさい。はい、どうぞ。
 

 


×二連目に「育てたお花がみな売れた」と書いていて、全部売れたからこそさびしいのだから×です。
×みな売れて、じいさんは寂しがっているのだから、やっぱり×で
す。
×花が一つ売れただけなら、がっかりするかも知れないから、寂しいのとは違うと思う。
×花との思いは、やはり強いのだと思います。残ったら寂しいのと
は違うと思います。
×残った花に話しかけたりして、寂しい気持ちなんてないはずです。
○全部売れたから、寂しいと言いましたよね。全部売れたから、寂しいと言うより、一本だけ売れたら余計花屋としては、寂しいと言うことになりませんか。商売だから・・・。
×一本ぐらい残った方が、何か自分でも一本ぐらい取っておきたかったという気持ちになって、寂しくなくなると思うのですが。

 

 この辺りで、意見が途切れた。


指示8 うまく言えないでいるようですね。何が寂しいのでしょう。何が寂しいのですか。花屋のじいさんです。
花を売るのが商売です。お金が入るには、全部売れる方が嬉しいはずです。しかも、買っていく人は、花が好きだから買っていくのでしょ。
嬉しいはずじゃない?自分の花を買ってくれた人たち、大事にしてくれるだろうと思う。
それなのに、なぜさびしいのですか。ここだけひっかかりますね。
討論しません。もう少し意見を聞かせてください。

 

 時間も押し迫っていたので、ここは多くの意見を促した。


・おじいさんが親だとして、花たちが子供だとすると、花が売れる
と言うことは、何か嫁に行ったようなそんな気持ちに近いのかも知
れません。
・うまくは言えませんが、その花は花屋だから売らないといけない
し、そういうことなんだけど、とうとう他人の手に売られていくことになるのだから、買ってもらって嬉しいんだけど、育てた愛情があるから、何か、その思い出とかよみがえってきて、さみしいのじゃないかと・・・。
・このじいさんは、花を買ってくれる人と同じように花が大好きだ
から、花屋になったと思います。だからなくなっちゃうとやっぱり寂しい。

 

最後に教師の解を告げ、音読して終わりたかったが、ここで、時間切れ。

「たくさんの意見ありがとう。おわります。」と言って授業を終えた。

 拙い授業にご意見いただければと思う。

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