’98.11.5

                                                     NO.65


 
 詩の授業〜「星とたんぽぽ」
 

                         

 

1.はじめに

 童謡詩人「金子みすゞ」について先に述べる。


 明治36(1903)年、山口県仙崎町(今の長門市)に生まれる。大正末期にすぐれた作品を発表し、西條八十に「若き童謡詩人の巨星」とまで称賛されながら、26歳の若さで自らの命を絶つ。
 死後、その作品は散逸したが、50余年を経て、童謡詩人・矢崎節夫の努力によりその作品の全貌が顕らかにされ、天才詩人として注目される。


金子みすゞ童謡集「わたしと小鳥とすずと」(JULA出版)より
 

 また、同書P4の中で詩人「与田準一」氏が、金子みすゞについて次のように語っている。


(略三村)・・・。さて、日本で、童謡は詩の芽だと言ったひとがいました。わが国で一,二に数えられる文豪森鴎外その人です。
 鴎外は島根県津和野でこどものころをすごしました。そのとなりの山口県仙崎でそだったのが金子みすゞでした。みすゞは詩の芽であるすぐれた童謡をたくさん書きのこしました。
 童謡が詩の芽だとしたら、こどもの世界、おとなのはじまりの世界は詩の芽でいっぱいだということを、たのしくやさしく、そしてさみしく、またふしぎにゆたかにうたったのが詩人金子みすゞです。
 

 以上の紹介のように天才詩人金子みすゞの詩には、不思議なやさしさがある。

 読んでいると、時と心を止めてしまうやさしさがある。

 その対象は人間だけではない。
 他の全ての生き物に対して、まるで純真な子供のように、子供の直感からくるやさしさなのである。

 そこには、大人の常識を気持ち良く吹き飛ばし、普通の人の目には見えないもの、みすゞだからこそ見える美しい世界が広がっている。

 思いは深く、多彩で、不思議な豊かさがあふれ、そして何より知的である。

だからこそ、その不思議な魅力は、私達多くの読み手の心を掴んで離さないのであろう。

時代を越えても変わらないもの、いや時代を経て一層輝きを放っている詩人と言っていい。

 

 さて、本時で教材として扱った作品は「星とたんぽぽ」である。

 この詩もまた、詩集「わたしと小鳥とすずと」を読んでいて心魅せられた詩の一つである。

 教材として、子供たちに作品を向かい合わせる場合、まず第一に大事なことと尋ねられたならば、率直に言って次の様に私なら答える。

 俗な言い方になるが、教師自身が一人の鑑賞者としてその作品に「ほれる」ということである。
 「ほれもしない」のに「ほれさせたい」という指導欲求は出てこないと考えている。
 教師自ら、その作品集にできるかぎり触れ、これと言ったもの、目に止まったものの魅力を存分に感じたいものである。

 

 ここでは、3年生を対象にした実践例を紹介する。

 教材詩「星とたんぽぽ」は、難解な言葉や漢字もないので比較的すんなり受け入れることができると思われる。

 

2.授業の流れ

 印刷したプリントを配布し、音読から入る。

指示1

全員立ちましょう。3回音読します。1回目はその場で、2回目はしゃがんで、3回目は座って読みます。始め。

 全員音読後、子供たちに聞いてみる。

質問

この詩で分からない言葉ありますか。
 

 口々に言わせたところ以下の言葉が出された。教師側で簡潔に説明する。


・「そこふかく」・・・・底が深いということ。
・「すがれた」・・・・・「素枯れた」みすぼらしいほど枯れてしまったと解釈する。
・「かわら」・・・・・・「瓦」「河原」「川原」などがあるが、「すきに」と続くので「瓦」と解釈する。
・「すき」・・・・・・・「隙」と書いて「すきま」と言う意味。
 

 以上のように考えたが、解釈に問題があれば、ご批判いただきたい。

発問1

 この詩は何連でできていますか。すばやくノートに書きなさい。

 すぐさま「二連。」と子供たち。「花丸しなさい。」と教師。

発問2

さて、一連の主役は何でしょう。詩から抜き出してノートに書きなさい。

 作業後、列指名で答えさせた。次のものが出された。


「星」「お星」「昼の星」「昼のお星」「海の小石」
 

 他にないか尋ねたがなかったので、教師の解を告げた。

説明

正解は「昼のお星」です。「お星」でもいいようですが、星は普通夜光って見えるものですから、ここでは普段見えない「昼のお星」とするのが正しいでしょう。

 テンポよく次の問いかけをする。

発問3

それでは、二連の主役は何ですか。同じように詩から抜き出してノートに書きなさい。書いたらノートを持っていらっしゃい。

 ノートチェックをして、数名に黒板にかかせた。


「たんぽぽ」「ちってすがれたたんぽぽ」「すがれたたんぽぽ」「たんぽぽの根」
 

 「たんぽぽ」と書いている子が、ほぼ90%いた。訳を尋ねると「題名が『星とたんぽぽ』だから。」と言うわけである。

発問4

一連で「めにみえぬ」のは何ですか。

 子供たち「昼のお星。」間髪入れず問う。

発問5

二連で「めにみえぬ」のは何ですか。

 子供たち、「たんぽぽ?」「あっ、つよいその根だ!」

説明

そうです。根です。主役は根です。「たんぽぽ」だけでは、まちがいです。

 次にイメージ語を問うた。

発問6

この詩で「広さ」を感じる言葉は何ですか。

 これは、口々に言わせた。「青い空」「海」などがあげられる。

説明

 そうだね。広いイメージがするね。こういう言葉をイメージ語と言うんだよ。

と軽く押さえつつも、さりげなく詩の鑑賞に必要なものさし(分析の観点)を教えていく。

発問7

では、この詩で「くらさ」を感じるイメージ語は何でしょう。

 これも、口々に言わせる。「そこふかく」「しずんでる」「かくれてる」「ちって」「すがれた」「すきに」など先ほどよりも多く出せるようになった。全て認めた。

発問8

さて、作者はこの詩で、普段見えないものとして何があると書いていますか。ノートに箇条書きで書きなさい。

 作業後、指名発表させた。次のものが出された。


「昼のお星」「たんぽぽの根」「海の小石」
 

 特に「海の小石」を発言した子を、大いに誉めた。

発問9

 この詩で一番大事な部分ってどこだろう。その部分に線を引いたり囲んだりして見つけてください。

 机間巡視すると約半数以上が、次のところを指摘している。


「見えぬけれどもあるんだよ。見えぬものでもあるんだよ。」
 

しかし、ここではあえて解を求めず告げず、「なるほど。」と言いながら次の問いを発した。

発問10

 この詩で作者がいいたいことは、どういうことでしょう。自分の考えをノートに短く1行で書きなさい。

 書いた子からノートを提出させ、授業を終えた。

 

3.おわりに

 発問10に対する子供の意見文をいくつか記す。


・昼のお星もきっときれいなんだよ。
・春がくるまで待っているなんて本当に強い根だ。
・昼のお星は目には見えないということ。
・目に見えないものをいろいろ説明している。
・星はいつでも光っている。
・昼の星や強い根は、本当は見えないんだけどあるんだと思った。
・見えるものも見えないものもある。
・見えぬけれども見えぬものでも同じように命があるんだよ。
・見えないけれども、絶対にいつもあるんだということ。
・見えないものは、いっぱいあるよ。
・見えないから、それを忘れないでほしいと思っている。
・見えないところでも生きているんだよ。
・見えないところでもがんばっているんだよ。
・人の見ていない所でもがんばっているものはあるということ。
 

主題の読み取りにばらつきが見られる。つまり、主題の読み取りが不確かなのである。

モチーフは「昼のお星」「たんぽぽの根」であり、伝えたいもの即ち主題と区別されていない。
 このあたりの指導を今後課題として重視していかねばならないと思われた。

 また、イメージ語を問う発問を中心に組み立てたが、主題や主想に迫る勢いが見いだせなかった点も反省しきりである。
 授業展開並びに発問群の組立てにも問題があろうかと思う。

 いつになっても、授業の難しさ、奥深さを感じる。

 まさに次の言葉をわが胸に刻みたい。


   見えぬけれどもあるんだよ。
   見えぬものでもあるんだよ。
 

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