’98.10.7

                                                    NO.10

  詩の授業〜  かもつ れっしゃ

                      

1.はじめに

 

 「詩」は、言語の本質的要素を備えた文芸である。

 詩の学習指導における本質は、「詩を読む楽しさ・表現の面白さを学ぶ」ことである。
 そのためにも、できるだけ多くの作品に向かい合い、詩の持つリズムや表現・技法、言葉の心地良い響きなどの素晴らしさを味わわせたい。

 

2.指導にあたって

 

① 作者 有馬 敲の作品は、以前2学期の国語の授業開きで取り扱ったことがある。

 夏休みに、以下のような暑中見舞いハガキをクラスの全児童に送った。


   (    )
                有馬 敲
じぶん じぶん じぶん
  じぶん じぶん じぶん
じぶん じぶん じぶん
    じぶん じぶん じぶん

じかーん じかーん じかーん
  じかーん じかーん じかーん
じかーん じかーん じかーん
   じかーん じかーん じかーん

じゆう じゆう じゆう
  じゆう じゆう じゆう
じゆう じゆう じゆう
    じゆう じゆう じゆう


この詩の題名は、何でしょう。ぴったりあたった人は天才!
始業式に教えるから考えて来てね。会う(合う)のが楽しみです。

  〒010-  秋田市
                              三 浦

 授業開きでは、全員一斉音読のあと、自分のペースで2,3度音読させた。
 その際、その教室音読をカセットテープに録音する。

 その録音テープを聞かせて、問う。


何かの鳴く音に聞こえてきませんか?
 

 夏休み後の、まだ残暑の残る時期である。

 子供からは、「あっ!せみだ!?」という声が挙がる。

 この詩の題名は、まさしく「せみ」である。

                     

 この詩は、3つの言葉のリフレインで構成されているひらがなだけの詩である。

 凝縮された「じぶん」「しかーん」「じゆう」という3つの言葉は、作者の思想観念の深さとともに、味わいの深い名作である。

 何より、リズムが心地良く、子供たちにも親しみやすい。

 今回、授業で扱う作品「かもつれっしゃ」も同じような構成であり、違和感なく、子供たちが向かい合える詩であろう。


  かもつれっしゃ
                            有馬 敲
 がちゃん がちゃん がちゃん
   がちゃん がちゃん がちゃん
     がちゃああん がちゃああん

 がったん ごっとん がったん
  ごっとん がったん ごっとん
    がったん ごっとん がったん

 ごっと がった ごっと がった
   ごっと がった ごっと がった
     ごっと がった ごと がた

 がた ごと がた ごと がた ごと
   がた ごと がた ごと がた ごと
     がた ごと がた こと かた こと

 かた こと かた ことかたこと
  かたことかたことかたことかたこと
    かたことかたことことことことこと

     「子どもといっしょに読みたい詩(あゆみ出版)」より
 

②「かもつれっしゃ」を音だけで表現しているところに注目させ、その独特な表現方法に触れさせていく。

 また、音読を重視することにより、イメージ化させることで、この詩の持つ独特な味わいを感じることができると考える。

 

③ 主発問は、ただ一つである。

「かもつれっしゃは、近づいてきているのか?遠ざかっているのか?」

ここで、詩にある言葉にこだわった討論を促し、最後にはどう音読すればよいか考えさせたい。

 

3.授業の流れ

 

 印刷した詩のプリントを配布後、板書。

 


10/7  かもつれっしゃ       あり   たかし
                       有 馬  敲

 

 


指示1
全員立ちなさい。3回音読します。1回目は、そのままで。2回目は、窓の外のほうを向いて。3回目は後ろを向いて。読み終わったら座って唇読みしていなさい。自分のペースで、はい、始め!
 

 全員着席したのを確認して、テンポ良く次の指示。


指示2
この詩を読んで、感じたこと・気付いたこと・思ったこと、何でもいいから、短く箇条書きで3つ以上書きなさい。時間は3分です。
 

 ほぼ全員が、最低1つ以上書けたのを確認して、発表させる。


指示3
1つだけ書いた人、ノートをもって立ちましょう。書いたことを発表したら座りなさい。全く同じ事を書いた人がいたら「同じです」といって、座りなさい。誰からでもいいですよ。どうぞ。
 

 このような形で、次は2つ書いた人、3つ書いた人、それ以上書いた人と言うように全員に発表させる。

 でてきた意見を以下に記す。


・5連で、できている詩です。
・階段みたいになっている書き方です。
・いろんな音がある。
・点が付いていたり付いていなかったりする。(濁点)
・「、」「。」が一つもない。
・同じ言葉が多かったです。
・早口言葉みたい。
・一連が、おさらを割っているみたいだ。
・音だけでできている。
・最後の2行だけ残して、全部一字空いている。
・1連と2連の終わりの言葉が「ん」で終わっている。
・全部ひらがなだ。
・同じ連の中に同じ言葉が何度も出てくる。

 

 


発問1
この詩は音の言葉だけでできています。いくつの音がありますか。
出てくる音を全部、ノートに書きなさい。3つ書いたら先生にノートを持っておいで。

 

 ノートチェックを素早く行う。行列を作らない。
 1つだけに赤ペンで○をつけて「これ、黒板に書いてね。」と言って書かせる。
 同じことを書いていれば、「よく見つけたね。まだありそうだよ。」と言って、全部に1つの大きな○を付けて席に返す。

 出てきた言葉は、以下の10個である。


がちゃん、がちゃああん、がったん、ごっとん、ごっと、がった、ごと、がた、こと、かた
 

 


説明1
これらの言葉は、何回か繰り返されています。何回か繰り返すことで、詩に気持ち良いリズムを造っているのです。このような繰り返しの表し方を「リフレイン」と言います。(板書)
 

 


発問
さて、今、出された音は、この詩にそれぞれ何回出ているのでしょう。それぞれの音の言葉の下に数を書きなさい。

 

 5分後、それぞれの音の数を発表させる。以下の数が正解である。


(板書)
 がちゃん・・・・・・・・・・6
 がちゃああん・・・・・・・・2
 がったん・・・・・・・・・・5
 ごっとん・・・・・・・・・・4
 ごっと・・・・・・・・・・・5
 がった・・・・・・・・・・・5
 ごと ・・・・・・・・・・・8
 がた ・・・・・・・・・・・9
 こと ・・・・・・・・・・・15
 かた ・・・・・・・・・・・10

 

 ここで、中心発問を投げかける。


発問3
かもつれっしゃは、近づいてきているのですか?(A)それとも遠ざかっているのですか?(B)
AかBをノートに書き、訳も考えなさい。

 

 3分後、AかBを挙手させて人数を数える。


  A・・・・18人   B・・・・15人
 

 それぞれの立場から意見を述べ合い、討論をする。


(A派)・「ことこと」は、駅で止まろうとするところを表している。
    ・「かたことかた」にブレーキをかけて、スピードが遅くなっている音だ。
(B派)・濁点が、だんだん無くなってきている。これは音が消えてきていることで      は
ないか。
    ・5連目の後ろから2行は、空いているところがなくて、言葉がつながってい

る。だから速く走っていると考える。
     れっしゃは、最初から速く走れません。
    ・「っ」(促音)「ん」(發音)がなくなっていくから。
     ・「がちゃん」と「こと」では「がちゃん」が大きい音です。

 

 討論後、再度AかBか挙手を促す。


  A・・・・8人    B・・・・25人
 

 教師の解を示す。


説明2
先生の考えを言います。先生は、「だんだん遠ざかっているB」と考えます。訳はB派のみなさんの考えと全く同じです。
「がちゃん」「がったん」「ごっと」「がた」「かた」「こと」と順に出てくる音の流れは、まさに大から小です。つまり「近く」から「遠く」へです。

 

 


発問4
では、遠ざかっているように、この詩を読むには、どのように読んだらいいのでしょう。
 

 子供からは、次の様な意見が挙がった。


・始めの連は大きな声で読んで、だんだん小さい声で読んでいけばよいと思います。
・それと、初めはゆっくりめで、後になるにつれて少しずつスピードアップするように読めばいいと思います。

 

 


指示4
それでは、みんなで、そのように音読してみましょう。
 

と言って、全員で声を合わせて一斉読みする。大から小へ徐々に音量をしぼりながら、静かな小さな声で読み終え、静かに授業を終える。


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