’00.12.10
NO.150
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知的な教室環境をつくる |
○ はじめに
「教室環境は生き物である」とよく言われる。
子供にとっては、学習の場であり、生活の場であり、子供の生き方をも方向付けられる教育的空間でもある。
「教室環境は生き物である」ならば、生かすも殺すも、それは担任たる教師の考え方や教育観、技量、資質次第にほかならない。
これは、教師にとって恐ろしいことである。
鈍感な教師は、そんなことすら微塵も感じない。
○ 知的環境でこそ子供は育つ
授業とは、知的な環境の中で行われるものである。
教室では、様々なドラマが生まれる。
それは、教室の空間そのものが知的に息づいているからである。
貼り物一つ画鋲がとれてはがれそうになっているのに、気が付かないでいるその異常な感覚の持ち主は、およそ教師に向かない。
即刻辞めた方がいいとさえ思う。
よそのお宅におじゃましたとき、玄関に入った瞬間、その家庭の空気を肌で感じることがよくある。
「温かそうな家庭だな。」「幸せそうだな。」「にぎやかそうだな。」「掃除しないで居間はぐちゃぐちゃだろうな。」「しつけされていないな。」などなど。
そういう家庭の臭いと言おうか空気とか言うものは、玄関に入った瞬間見えることがある。
教室も同じことが言える。
その担任の授業は見たことがないが、教室に一歩足を踏み入れたとたん、「この授業は期待できそうだぞ。」とか、「たいしたことなさそうだ。」と感じることがある。
事実、大方は、授業の始まりの3分も見れば、「ああ、やっぱりな。」と納得することが多い。
物質的環境並びに言語的環境も含めて、知的環境を作り出している教室は、子供も健康的に育つ。
そうした教室のよい空気を吸って、子供はすくすく育つのである。
○ 教室環境作りの一例として
以下、私自身が、自分の教室環境をどのように整備しているか事例を述べることにする。
もちろん以下に紹介することは、どなたでもやっていることであろうし、当たり前のことであるに違いない。
自省を込めて、自己の教室整備を振り返る機会としたい。
<正面掲示〜共同製作「どんぐりと山猫」(酒井式)>
正面掲示物は、いわば学級の顔である。学年部で同一の物を掲示しているところもあるが、私は別々であっても一向にかまわないと思っている。それは学級王国と言われる筋合いの物ではない。むしろ、それを「学級経営」と言うのだ。
私は可能な限り、子供たちの共同製作した作品を常掲示するようにしている。
学級目標の掲示物よりもよほどいいと考えている。
たとえば、酒井式のちぎり絵「どんぐりと山猫」の共同製作である。一個一個のどんぐりには、子供たちの顔写真を貼り付けてある。
作品の上手下手ではなく、自分たちがこの教室にいるという存在感をこの掲示物は個々に持たせてくれるのである。
<側面掲示〜じょうほうコーナー・みんなの会社>
側面(廊下側)は、主に係活動が機能したり、情報に触れたりすることができるものを掲示する事が多い。
マル得じょうほうコーナーには、その季節その時期の新聞記事をトピックにして貼り付けている。時折子供たちが関連記事を家から持ってきて、自由に貼ったりもしている。(左下図)
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右上図は、係活動紹介コーナーである。
我がクラスでは、「○○係」ではなく、「○○会社」とよぶ。
いわゆる会社制をとっている。
会社名も係によって実にユニークである。たとえば、「保健係」は「ヘルスクリニック会社」、「ゲーム係」は「三村興行プロダクション」など楽しんで会社設立と経営に取り組んでいる。
会社であるからして、メンバーは社長・副社長・部長・係長などの役職が与えられるわけだ。
写真では見えにくいが、デジタルカメラで写したメンバーの顔写真をプリントアウトして、貼り付けてある。
<前面掲示〜今月の詩・スピーチの仕方・その他>
前面には、年間通じて身に付けたい基礎的な学習技能を掲示している。
例えば、スピーチの「あ・い・う・え・お」、メモの取り方などである。これらは、有田和正先生の追試である。
また、学習態度の心得として「腰骨教育」の一環としての詩文も掲示している。
今月の詩のコーナーもあり、毎月親しみやすい詩を取り上げ、子供の目に触れさせることで、言語感覚を磨く一助としている。
まきたしんじ作「教室はまちがうところだ」の詩は常掲している。
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<背面掲示〜係活動伝言板・ことばの木・作文など>
背面黒板は、子供の会社活動の自由な伝言板として開放し、活用させている。
呼びかけ文が固定化してしまわぬように声掛けしながら、動的な会社アピールの場として、意欲的継続的に活動できるようにしている。
また毛筆や作文などの作品も、その都度上に重ねて、のりで貼り付けていく形で掲示している。
学年末には作品群をまるごとはがし、パンチで穴を開けてB4ファイルに「心の足跡」として綴じ込ませる。
右背面部には、「自分の花をさかせよう」と題した「ことばの木」がある。
木の幹の部分は、茶色画用紙か印刷紙梱包用の紙をくしゃくしゃにして形作る。
あとは、葉や花に見立てて、毎月お題を変えた手形やカードを貼り重ねていくというわけである。
たとえば5月は「俳句」6月は「タブレット」7月は「アクロスティック」8月は「暑中見舞いハガキ」というようにである。
季節を彩る木の変化が見られ、言語感覚を磨き鍛えることができる。
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<常備物・その他>
授業以外は、各自の国語辞書は後ろのロッカーの上に置くようにさせている。
付箋いっぱいの辞書が並ぶ。
ケースはかえってじゃまになるので、家に持ち帰らせている。
書籍もコーナーを設けて、常設してある。
学級文庫の他、私自身で用意した物も結構ある。
本学級では「あたまにやさしい本」「こころにやさしい本」「人にやさしい本」の3コーナーに区分されている。(係の子供が自主的に分類してくれた。)
その他、碁と将棋1セット、点字カルタ、古切手・使用済みテレカ・書き損じハガキのボランティアボックス、五色百人一首なども常備していつでも自由に使用できるようにしている。
また、子供たちが、いつでも「調べ学習」ができるような資料や機器等も常備している。(「調べ学習に便利!10のアイテム」参照)
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○ あとがき
教室環境は生き物である。機能的かつ安全衛生的かつ動的で知的な空間であるべきものである。少々、机が乱れていたり、ランドセルが一人二人とび出ていても、足を一歩踏み入れた瞬間に「あたたかさ」「やさしさ」「こどもらしさ」「かしこさ」「たくましさ」を人に感じさせる、そんな教室でありたい。