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【授業実践例 その2−①〜「道徳の時間」と関連させて】
(主題名)
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生き物を守り大事にしようとする人間(自然愛・動植物愛護)
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(ねらい)
人間とともに生きている生き物を大事にしようと努力している人間がいることや,身近な生き物の命に目を向け,守ろうとする行いのすばらしさに気付く。
○授業の流れ
新聞記事(朝日新聞より)のカラー写真①を提示する。
口々に言わせてみる。
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・珍しい草・コンピューターグラフィック・虫・分からない
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説明 これは,国の天然記念物に指定されているゲンジボタルが,光を出して飛び回っているのをカメラのシャッターを開きっぱなしにして撮った写真なんです。
場所は滋賀県山東町というところの天野川という川だそうです。
あまりに貴重な生き物なので,ホタルの成長期には河沿いの草刈りや草焼,除草剤をまいたりすることを禁止していて,もしルールを破ったら罰則まで与えると言うんだそうですよ。
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子供たちは,うなずきながら静かに聞いている。
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質問 ところでみなさんは,ホタルって知っていますか。
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「知っているけれど,見たことがない。」という子供が半数近くいた。
自然や社会環境の状況も変わり,また,生活体験の少ない子供たちを改めて垣間見る気がした。
続いてすぐに,写真②を見せる。これも同新聞記事のカラー写真のコピーである。
これも口々に子供たちは言う。
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・植物かな。・海の中だ。・水中カメラマンらしき人がいる。・サンゴじゃない?
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説明 よく分かったね。そうです。サンゴです。沖縄県の海のサンゴの様子です。沖縄の海の美しさは世界一と言われているんだよ。
そして,このサンゴもまた美しい海にしか生きられない生き物なのです。
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発問3 ところで,このピンク色をしたサンゴやカメラマンの他には,何が写っていますか。
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子供たち「あわ?」「ピンクのつぶつぶ。」
「空気の泡。」「酸素。」・・・・
これ以上出なかったので,教師の方で説明した。
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説明 これは実は,サンゴの卵なのです。(子供たち「えっー。サンゴって卵生むの?」の声。)
そうです。昨年は海の水の温度が異常に高すぎて,サンゴが死んでしまったことがあったそうですが,何とか順調に回復して1mmほどのピンク色の卵が一斉に海中に放出され,周りの関係者たちをほっとさせたそうです。
それはそれは美しい産卵ショーだそうです。
この地球上には,私たち人間とともに生きているけれど,ふだん目もくれないような,美しいかけがえのない生き物も住んでいるんですね。
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この後,資料NO.1(別の新聞記事)を配る。
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指示1 自分でこの新聞記事を読んでごらん。
この資料にある記事「あぜ道の中にカルガモの巣」と「青鉛筆〜子ガモ大
救出作戦」も静かに目で読みなさい。
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全員読み終わったところで,
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指示2 ノートに(NO.1)と書きなさい。
この資料の記事を読んで,思ったこと・気付いたこと・感じたことをノートに書きなさい。
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5分の作業後,自由起立発言で感想を発表させた。
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・これ以上,環境を汚したくない。
・ホタルはきれいだけれど,その分弱いから絶滅しないで欲しい。
・ホタルは水がきれいでないと生きられないので,その管理も大変だなと思った。
・ゲンジボタルは天然記念物と言うだけあって,すごくきれい。
・サンゴが産卵するなんて初めて知った。実際にその様子を見てみたい。
・トキと同じで,天然記念物にされているものは意外とたくさんあることを知った。
・カルガモの巣が守られていることに感心し,卵が敵に見つからなければいいと思った。
・カモを見つけた沼崎さんも優しい心をもっていて,わたしも見習いたい。
・無事に卵からかえったのか興味がある。
・カルガモは危険がいっぱい。カラスや野犬に見つからないで欲しい。
・子ガモを助ける作戦の思いつきがすごい。
・カモを救出するのに9時間半もかかったのがすごいと思った。
・たかが子ガモを救うのに,消防隊員やポンプ車も出たということに驚いたし,すごいなあと思った。
・やさしい気持ちを持っている人もいるんだなあ。
・助けられたカモは,その後どうなったのか知りたい。
・助けた後のことも心配していて,そこがすごいと思う。
・ホタルのために,草刈りや草焼きを禁止してあげるなんてすごいと思った。
・カルガモは,天然記念物じゃなくても世話をしているのが立派だと思う。
・最近は,ホタルを見られるところが少なくなってきているので,これ以上少なくならないで欲しいです。
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以上,それぞれの感想を全て温かく認めた。
新聞記事を通してではあるが,このような事実に出会い,子供たちが今までの日常生活において目を向けることがなかったことに向き合うことができるということは,非常に大切なことであると思われる。
たとえ,そこでの発見や気付き,心に留まったことが価値的に低いものであったとしても,「見えないものが見えた」ということを自覚することは,現実の社会に対して関心を持つという点で,大変,教育的意義のあることである。
新聞を1つの教材として見た場合,これらの記事はまさしく事実の記録,事実の情報であるがゆえに,より身近に子供に受け入れられ,それぞれの思いを抱くことができるのであろう。
まさに,NIEの目指す教材としての活用学習の入門と言えよう。
さて,多くの感想を出し合ったところで,本時の授業のテーマを考えさせることにした。
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発問5 今日の学習のテーマを自分なりに考えてノートに書きなさい。
どんなテーマになると思いますか。タイトルの終わりの言葉を,「〜人間」で終わる書き方で書いてごらん。
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文末を「人間」と限定し,体言止めでまとめさせることによって,子供はどの子も考えやすく書き易くなる。また,人間との関わりが実はキーになっていることを押さえておきたいという意図もあったからだ。
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・ 生物の生活を守る人間
・ 動物の命を守る人間
・ 生き物を大切にする人間
・ 小さな命を大事にする人間
・ 地球の生物たちと人間
・ 大事な生き物と人間
・ 生き物と人間
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発表させると,大方以上のものが出された。
本時の授業のテーマをよく捉えていると思われた。大いに誉め,全てを良しと認めながら次の様に話した。
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説明 環境破壊でトキのように絶滅が心配されている生き物がいる中でこのように小さな命を守ろうとする人間もいるのですね。
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最後は決して価値の押しつけをせず,何より多様な感想を持ち発言できたことを誉めて授業を終えた。この時間では,子供たちそれぞれが心に止める思いを抱いたならば,敢えてそれで良しとしたわけである。
無味乾燥なあっさりした授業ではあったが,この道徳の授業が次の道徳の授業の布石となればと考えたのである。