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                                          NO.77


  
詩の授業〜6年国語授業開き
 

1.はじめに

 6年生、国語の授業開きである。

 教科書(光村6年上)の始めの扉に以下の詩が載っている。

 「創造」というタイトルである。


  一まいの紙から、
  船が生まれる。飛行機が生まれる。

  一かたまりのねん土から、
  象が生まれる。つぼが生まれる。

  生まれる、生まれる。

  わたしたちの手から次々と。
 

 クラスの持ち上がりの担任であってもなくても、クラス替えのあったクラスであってもなくても、新年度が始まる心の高揚と心地よい緊張感は、どの子供も感じているものである。

 この始まりの時期にこそ、国語の学習とは如何なるものか、その基礎基本をしっかり教師としては打ち出さなければならない。

 全ての教科の基礎となる国語科の学習を、この集中力が高まっている時期にこそきちんと「かくあるべきだ」という姿勢で授業することはとても大事なのである。 なお、この度の実践は、安住順一氏の修正追試である。

 

2.授業の展開

 さて、授業である。まず、この詩をていねいに板書し、 視写の力をみることにする。

指示1 先生と同じように同じスピードで、一字一句ていねいに、この詩を視写しなさい。
先生がチョークを置くまでに書き終えるんですよ。

 子供には、同時に視写させる。このクラスの子供がどの程度のスピードで視写できるのか測るのである。

指示2 書いた人は、先生にノートを見せにきなさい。

今度は 一人一人のノートをチェックする。チェックポイントは以下の4点である。

   ① 誤字・脱字がないか。
   ② 句読点がしっかり書かれているか。
   ③ 連間があけられているか。
   ④ 書かれてあるとおりに、写されているか。

 減点法でノートに点数をつけていく。どの子もきちんと視写できるクラスは、しっかり鍛えられて基礎的な言語力を身につけてきたと考えていい。ノートの取り方、文字の書き方などをこの時期だからこそ、きちんと指導しておきたい。早ければ早いほどいい。後から徐々にと考えていれば、ついには学年末において無残なノートを見ることになるであろう。

 次に、 音読の力をみる。

指示3 全員起立。3回音読したら座ります。
    6年生として、最高の読み方をしなさい。

 机間巡視しながら、とりあえず次の3点をみる。

   ① 声の大きさや口の開き具合。
   ② 発音。
   ③ 姿勢。

 全員着席後、列指名で一人ずつ音読させてみる。

 上にあげたポイントのほかに、間の取り方(句読点に気を付けた読み方、連と連の間の取り方)にも注目して、瞬時に点数を付けていく。

 言わば、これは評定である。同時に評価もすることが肝要である。

 「口に指2本縦に入るくらい開けなさい。70点。」 

 「読点で一息、句点で二息とりなさい。65点。」

 「張りのあるいい声していますね。75点。」というように。

指示4 全員起立。何度か音読して、自分なりにこう読めばいいと分かった人から座りなさい。

 全員着席後二回目の列指名音読。

 先程よりは、さすがに少しよくなっている。ここでは、そういうちょっとした向上的変容をほめてやることに徹するようにする。よくなったということを自覚させていくのである。読みの矯正だけの評価では、子供の意欲も高まっていかない。伸び伸びと声を出すことを、スタートの日から厭うことなく意識付けていくことは、今後の学習にとってとても大切なことである。

 また、ここで大事にしたいことは、もう一つある。

 それは、教師の範読である。子供に読ませっきりで、自分では音読しない教師がまれにいる。これは戴けない。

 範読こそ、子供たちにとって、最も「こう読めばいいのだ。」と理解させる直接的で分かりやすい方法なのである。私たち教師は朗読のプロではない。しかし、基礎読みをしっかりと子供たちに知らしめ、指導できるプロであらねばならない。

 そのためにも、事前に何度か読んでおくことが必須である。

 対象学年にもよるが、その学級の実態(能力)に応じて、読みの指導に変化を持たせることも必要であろう。

 例えば、句読点ごと(一行ごと、一文ごと、連ごと)に切っての「連れ読み」(「追い読み」とも言う)や隣同士(列同士)の「交互読み」など、音読練習には「変化のある繰り返し」が効果的である。

 さて、一通り音読のポイントを指導した後、詩の内容に入る。

発問1 何が生まれたと書いていましたか。ノートに書きなさい。

 この問いにおいて、 読み取る力をみる。

 書いたものをどんどん自由に発言させる。

 「船」、「飛行機」、「象」、「つぼ」という発言が必ず出て来る。

説明1 文をよく読みましたか。「生まれた」とは書いていません。
     「生まれる」だから、まだ何も生まれてはいないのです。
     「生まれる」と「生まれた」は大きな違いです。国語とはこのように一字   

一句の言葉にこだわる学習なのです。

 このように言ってから、次の発問をする。

発問2 何が生まれるのですか。ノートに書きなさい。

 子供たちは、ここで自信を持って「船」「飛行機」「象」「つぼ」と答えるわけである。

 しかし、詩の学習としては、ここで終わらせてはいけない。さらに突っ込む。

発問3 生まれるのは、それだけですか。

 この問いに、子供たちは一瞬「えっ。」とするが、詩を読み直してそれだけではないことに気づいてくる。

発問4 わたしたちの手から、ほかにどんなものが生まれるのでしょう。

先生は、あてませんから自由に立って発表して下さい。

 ここで、 発表の力をみることができる。

 自由起立発言ができたことを大いに誉める場とする。こうして徐々に全員が発言でき、討論のできるクラスを目指して行くのである。

「家」「電気」「コンピュータ」など、たくさん出された。

 最後に、次のように話して授業を終えた。

説明2 「創造」とは、新しいものが初めて生まれることです。
     この世の中には、いろいろな物が今も新しく生まれています。
     人間は、手を使い、頭を使い、次々と新しいものを生み出してきました。
     新しく便利な物を生み出してきたのはいいのですが、そのためにスイッ
チを押せば何でもできる生活になれ、手や頭を使わなくなってきました。
これでは、新しい物は「創造」できなくなるでしょう。
みなさんは、これからの一年間、自分の頭と手を惜しみ無く使って、新しい自分や新しい何かを次々と生み出していって下さい。
 「生まれる、生まれる。わたしたちの手から次々と。」
 こういう生活をしていきましょう。
 先ほど発表した物のほかに考えついたものがあれば、黒板に自由に書いておいて下さいね。終わります。
 

 休み時間の後、教室に行ったらたくさんの「生まれる」ものが黒板に書かれていた。

 「努力」「勇気」「感動」「素直さ」「親友」「思いやり」など自分の内的成長を期待する言葉が次々と書かれていた。とたん、このクラスの子供がいとおしく、私自身もまた、この一年間子供たちのためにがんばるぞという意欲で胸が一杯になった。

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