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                                               NO.91


   
詩の授業 「うとてとこ」

                            

1.はじめに

 野口氏と言ったら「うとてとこ」,「うとてとこ」と言ったら「野口氏」と言われるほど,あまりにも有名な野口芳宏先生の授業実践である。

 谷川俊太郎の「ことばあそびうた」を実に明快にかつその内容美・形式美を心地よく子供たちに感じさせながら,向上的に変容させていく手法は見事

と言うほかない。さすがに授業の名人と言われる所以である。

 この授業のすばらしさは,主に以下の5点にあると考える。

①不明瞭なもの(分からないもの)から明瞭なもの(分かるもの)へ向上的変容の  自覚を保障する。
②能力差があろうとどの子もスタートが同じでゴールも同じなので,ど の子も「楽
  し
かった。」という満足感を得られる。
③終末に自力で創作させることで個々のイメージをより鮮明にし,この詩の持つ独

特の形式美に気づかせていく。
④一行ずつ小出しにすることで,興味・関心を徐々に増幅させて行き,学習意欲や 
 集中力は途切れることが無い。
⑤全文ひらがなで句読点無しの詩なので,さりげなく読みの指導を効果的に入れ

ることで内容理解を深めている。
 

 音読指導・創作指導・鑑賞指導 の全てが意図的にちりばめられ,どの子供も充実感を持って「楽しかった。」と感じる授業なのである。

 このような詩の授業は「分析批評の授業」とは別に,他にはないすばらしいものであると考えている。

 本教材詩を使っての授業実践は四度目になるが,ここでは,野口氏の修正追試という形で6年生を対象にした記録を紹介する。

 なお,この実践は3年生で行ったこともあるが,どの学年でも不思議に同じような子供の反応が見られ,どの学年でも追試可能である。

 それだけ,原実践は質の高い授業であると言えよう。

 

2.授業の流れ

 日付,詩の題名を板書する。


(板書)うとてとこ
 

 


指示1 視写した人から1回読みなさい。
 

 


指示2 (列指名で)一人ずつ読んでみてください。
 

 「はい,けっこうです。」と言って数名に読ませた。


発問1 これ,何でしょう。
 

列指名する。突然のこの問いに一瞬しーんとし,次いで「分かりません。」の声。

「よろしい。いいですよ。今に分かるようになるからね。」と告げて、詩の1行目を板書して,同様に視写させる。


(板書)うとうとうとう
 

 


指示3 (別の列指名で)1行目を読んでみてください。
 

 一字一句読み間違いがないか,しっかりチェックしてやる。


指示4 全員で読みましょう。さん,はい。
 

 


発問2 これは,何でしょう。
 

やはり「分かりません。」がほとんど。その中で「何かねむたそう。」と答えた子がいた。当然大いに誉める。

「いいね。いいなぁ。とてもいい感じ方しているなぁ。」というように。


指示5 また,同じように視写しなさい。
 

 


(板書) うがよんわ
 

「 これで分かったかな。」と尋ねると,まだほとんどの子が首をかしげて いる。それでもそこはさすがに6年生。数名は気づいた子がいるようだ。

「うの数かな。」「うが4羽いるんだ。」の声。

 すかさず「すごい!たまげた。その通り!」と言い,漢字に書き換えた。


(板書) 鵜が四羽
 

 すぐに子供たちは辞書で「鵜」という鳥を調べる。分かった子供は「なるほど。」といった表情に変わっ た。

 その後確認のため,全員で声をそろえて1行目と2行目を続けて読ませた。

 続いてテンポよく3行目を板書し,同じように視写させる。


(板書) うとうとうとうと
 

これもまた,小刻みなノート作業である。集中を途切れさせない手立てだ。


指示6 はい,みんなで読んでみましょう。
 

 


発問3 1行目と3行目は同じですか。違いますか。・・・(「違う。と子供たち。」

では,どこがどう違うのですか。
 

できるだけ下位の子に指名する。「3行目の方が『と』がひとつ多く付いている。」と答えた。

「たった一字なのによく見つけた!すごいぞ。」と大 袈裟に誉める。


発問4 では,この文は何のこと?
 

 列指名。「分かりません。」の声。こういうときは,あまり時間をかけないほうがいい。さっと教師の方で4行目を板書し解を示した。


(板書)「いねむりだ」
 

 


説明1 これは,「いねむり」を表しているんですね。
 

 子供たちは「やっぱり!?」「なるほど。」というように頷いている。

 ここで正しい読み方を確認する。1行目と3行目を比べ読みさせる。

 何人かに読ませてみる。

 ほとんどの子は3行目がただ単に『と』一字増えた感覚での拾い読み状態 である。そこで次のように問いかけた。


発問5 これは,読み方を変えなくちゃいけないのです。
     読み方の違いが分かった人,分かる人いませんか。
 

 挙手した子を指名し発表させた。


・「1行目は『う』を分けて読む。3行目は続けて読めばいい。」
 

 


発問6 なるほど。では,1行目ですが,「う」と「と」のどちらを強めに読んだ方がい  
いのでしょう。「う」だったら「う」,「と」だったら「と」とノートに書きなさい。
 

「声に出しながら確かめて考えていいですよ。」と告げると,教室は「う」と「と」の声でいっぱいになった。

 2分後,人数分布を確認した。


    「う」・・・・・22人,  「と」・・・・・11人
 

 


発問7 どうして,そこを強く読むのですか。
 

 自由起立発言で答えさせた。主に以下の意見があった。


・何となく・・・。
・「と」のつなぎ言葉を強調するより,鳥のことが大事だから。
・「う」を強く読みしかも4つあるので,きちんと強く読んだ方が数が分かる。
 

 私自身は,22人の子供らと同様,「う」を強調するべきだと考える。

 しかし野口氏は,これは誤りで,むしろ「と」を強く読んだ方がいいと言われる。このあたりは,再度考えてみたいところである。

 とりあえず教師の考えを告げ,次に急いだ。


指示7 二連に入ります。視写しなさい。(板書)「てとてとてとて」
 

と言って,板書し問う。


発問8 次にどんな文が続くと思いますか。
 

 このあたりになると,子供たちも乗ってきて,ぱっとひらめく子供も出て来る。ズバリ正解が出た。板書する。


(板書)てがよんほん
 

 テンポよく次の文(「てとてとてとてと」)も板書し,同様に問う。


発問9 これは何でしょうね。
 

 「歩いているみたい。」「散歩かな。」などが出る。子供との問答を楽しむようにやりとりしながら,次の文を板書する。


(板書)らっぱふく
 

 


指示8 さあ,ここまでを全員で声を揃えて読んでみましょう。
 

 まるで一人で読んでいるように滑らかに,そしてリズミカルに読ませることが大切である。


発問10 この詩は,これで終わりでしょうか。(○)それともまだ続くのでしょうか。  

(×)○か×をノートに書いて訳も考えなさい。
 

 数分後,人数を調べ少ない方から自由にその理由を発言させていった。


       ○・・・・・4人,×・・・・・・29人

(○派)何となく。
(×派)題が「うとてとこ」だから,まだ「こ」が残っている。
 

 


説明2 その通りなんです。まだ続くんですね。ここで終わらないんです。

 三連があるんです。
 

 


指示9  ここまできたら,第三連は自分でできますね。第三連を作ってごらんなさ
      い。
 

 机間巡視して,イメージ豊かな言葉を書いている子は大いに褒め,難儀している子には二行目まではこっそり教え,後の二行は自力で作るよう励まし

て回った。

 4分後,作業を打ち切り,意図的指名(頭をなでておいた数名)で発表させた。1,2行は全員同じだった。4行目だけを記すことにする。


・なべのおと・ことをひく・でんしゃのなか・なべでにる・じしんくる・さらがなる・こっぷなる・おゆそそぐ
 

充分に褒めた後,ちょっとたずねてみた。


発問11 作るとき自分で何か気を付けたことはありますか。
 

 期待していた答えは出なかったが,全員自分の感じ方でイメージしてみたと言う。そこで,この詩の持つ形式美について教師側で簡単に補足した。


説明3 実は,こういう秘密があるのです。気づいている人も多いと思うのですが, 
    これはズバリ五文字(五音)で終わらないといけないのです。一連から三     連まで, 終わりは五文字なんですね。
     ほかの部分も比べて見ると分かりますが,同じ音数で成り立っている詩な     んです。だからリズムがあるのですよ。
     さて,作者の谷川俊太郎さんですが,最後は「とをたたく」と書いていました     よ。
 

 ここでチャイムが鳴って1分間の延長となってしまったが,最後に1回全員で通し読み,もう1回暗唱をして授業を終えた。

 

3.おわりに

 本教材詩を載せておく。


     うとてとこ                 谷川俊太郎

   うとうとうとう
   うがよんわ
   うとうとうとうと
   いねむりだ

     てとてとてとて
     てがよんほん
     てとてとてとてと
     らっぱふく

       ことことことこ
       こがよにん
       ことことことこと
       とをたたく
 

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