’97.12.16

                                                                         NO.29


 
言葉にこだわる国語授業 Ⅳ

1.はじめに

 

 授業前、教室の窓から見える外の景色は、降り始めた雪で白一色である。いよいよ、本格的な北国の冬の到来といったところである。

 次に紹介する教材文は、まさにこの場にぴったり、情景も子供の心にすんなりイメージされることであろう。


 ゆうべのうちに、まっ白な雪が、野も山もうずめていました。
 

 たったの一文である。授業で扱うのは、この一文である。

 この教材は、向山氏を始め大森修氏、その他多くの実践家に追試されている代表的なものの1つである。

 自らも、この一文の授業に挑戦してみる。

 授業記録は3年生で行ったものである。

 以下、多少のアレンジを加えながら実践した授業の展開を記す。

 

2.授業の流れ

 

 日付と、教材文を板書する。

指示1

 ていねいに視写しなさい。

 全員書き終えた後、

指示2

 音読します。全員起立。3回読みます。1回目は其の場で。2回目は外の景色を見て。3回目は座って唇読みです。始めなさい。

 全員着席後、

指示3

一人ずつ読んでもらいます。(  )さんの横列立ちなさい。
(  )さんから順に読みなさい。読んだら座りなさい。

 一人ずつ読んだら瞬時に点数を付けていく。

 ここでは、短文と言えど、安易に読んではいけないということを意識させる。

 「、」「。」をきちんと意識した丁寧な読み方をするように促すのである。

指示4

「、」「。」に気を付けて、全員で声を揃えて1回読みます。

 全員きちんとした読み方ができた後、第1の問いかけをする。

発問1

この文の主語は何ですか?ノートにずばり書いて持ってきなさい。

 この時期、「主語・述語」は既習事項であり、習熟を図るためここでもしっかり押さえておく。

 「雪」以外は全て×とする。

発問2

では、述語は何ですか?同じ様にノートに書いて持ってきなさい。

 「うずめていました」が○である。

発問3

さて、「まっ白な雪」とありますが、「つめたい雪」とどう違うのでしょう?
同じと考える人は○、ちがうと考える人は×とノートに書きなさい。そのわけも簡単に書きなさい。

 書かせた後、発表させる。以下の意見が出された。


(○派・・・2人)
・ 雪は冷たいから同じと考えてもよい。
(×派・・・28人)
・ 冷たい雪は、まっ白と限らない。
・ 「つめたい」というのは触ってわかるけれど、「まっ白」は、
  目で見て分かること。
 

 

発問4

 「うずめていました」とあります。「ふっていました」とは違うのですか?(×)同じなのですか?(○)○か×か?ノートに書く。

 とりあえず、ここも自由に発言させてみる。


(○派・・・3人)
・ 分からないけれど何となく・・・・と思います。
(×派・・・27人)
・「うずめる」は辞書では、「すきまなくいっぱいにする」と書いています。
・「ふっている」は「空から地上へ降りてくる」ことだから違う。
 

 (×派)の意見で(○派)は「まいりました!」の声。納得である。

発問5

野も山も(  )も(  )も・・・と言葉をつなげて入れるとしたら、みなさんだったら、どんな言葉を入れますか?
うずめたものをふやしてごらん。

 子供が描くイメージを「野と山」だけの風景から一層広げさせる発問である。

 ノート作業後、列指名→挙手指名→自由発言の順で口々に言わせた。


・「家」・「線路」・「川」・「谷」・「草」・「木」・「森」・「田んぼ」・「畑」・「ビルの屋上」などが出る。
 

 「おかしいものありますか?」と尋ねると「ビルの屋上」は、「自然の雰囲気に合っていない。」と言う声が挙がった。

 「自然に囲まれたところなのかもしれないね。田舎かなあ。いい情景浮かんできましたね。いろいろうずめているんですね。」と言って次に進む。

発問6

雪は今ふっていますか?(○)それともやんでいますか?(×)

 自由に発言させてみる。


(○)やんでいるなら、雪が解けてきているはずです。
(×)「隙間なくいっぱい」なら、なかなか解けるものではない。
(×)「うずめていました」だから前にあったことだと考えます。
(○)「やんでいます」とは一言も書いていません。
(×)「ゆうべのうちに」と書いているからもう今はやんでいる。「うちに」だから。
(×)「ました」の「た」だから×です。「ます」だったら、うずめている最中になります。
 

 決定的とも言える意見も出されている。しかし、ここではあえて解を告げないで、中心発問の布石になる発問を投げかけることにした。

発問7

話し手は、この様子をいつ見たの? いつなんだ?

 「次の日だと思います。」という声が多い。たたみかける。

発問8

 次の日のいつなの? 何時ころなの?

 座ったままテンポ良く全員に指名し、順に言わせる。 

 ・「午前5時半頃」・「朝の6時」・「夜の7時」・「夜の9時」等

発問9

朝と夜に分かれたね。どっちなの?

 「朝!」という声が圧倒的に多い。

発問10

どうして夜だとだめなの?

 C「見えないから。」

 T「何が!?」

 C「雪。」

 T「ちがう!」

 C「野も山も。」

 T「ちがう!雪の何が見えないんだ?」

 C「うずめているところ。」

 T「惜しいが、ちがう!」

 C「・・・まっ白?」

 T「そうだ!その通り!」

説明1

朝でないと、お日様に照らされた眩しい「白」が見えないんだよ。
だから「白」とは言わず「まっ白」と言っているんです。
だから、話し手は朝になって、この様子を見たのです。

 「白」と「まっ白」は違うのである。似て非なるものなのである。

 こういうところを、きちんと押さえるか否かが、言葉の力を付けていく上で大事なポイントとなるのである。

 

 時間も残り3分と迫り、最後の発問に急ぐことにした。

発問11

「ゆうべのうちに」とありますね。
「ゆうべのうちに」とは、図のどのあたりを言うのですか?
このあたりだと思うところに、ネームカードを貼りなさい。

 「きのうの夕方①」から「今朝⑤」までの時間の流れを図を板書して、全員にネームカードを貼らせた。

きのうの夕方  ① 1人
↓        ② 1人 8人
↓        ③ 5人 10人 1人
↓        ④ 2人 1人
今朝       ⑤ 2人

 微妙に個々の範囲は違っていたが、概ね以上のような分布になった。全員が貼った後、正解を告げる。

説明2

正解はねえ。・・・・・・全員×です!(「えーっ。」という声)
「ゆうべ」という言葉を辞書で調べてみなさい。

 子供たちは、懸命に「ゆうべ」をひもとく。

 発見した子がいた!

 「きのうの夜」「日がくれる」のほかに、「夕方」という意味があることに気付いたのである。

説明3

そうです。「ゆうべ」には「夕方」という意味もあるのです。

したがって、正解は①〜④(⑤の前まで)です。

授業を終わります。

 「やられたぁ〜。そうだったのかぁ〜・・・。」というつぶやきが、聞こえてきた。

 にこっと笑って、授業を終えた。

 

3.おわりに

 

 ある言葉を辞書で調べてみるということは、「分かっていたつもりが分かってはいないものだ」という事実に、ある意味、正対するということである。
 意外と私達は経験から「この言葉はこういう意味だ。」などと自分なりに捕らえてしまっているところがないだろうか。
 一つの言葉には使われ方によって幾通りもの意味があるということを、今一度知るべきである。

 そこに日本語の奥深さがあり、魅力が混在しているのである。
 そしてそれは、少なからず、一語の捕らえ方次第で、作品の趣さえも高めもするし萎ませることにもなるのである。

 子供に「言葉の力を付けさせる」と言った教師面をする前に、自らもまた「言葉の真の意味を捕らえ、教材に向かい合う」といった姿勢を忘れてはならないことを肝に命じておきたい。

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