「家」
家 1976・米
家

製作:監督:脚本:
    ダン・カーティス
原作:ロバート・マラスコ
脚本:ウィリアム・F・ノーラン
撮影:ジャック・マーケット
音楽:ロバート・コバート

出演:カレン・ブラック
    オリバー・リード
    ベティ・デイビス
    バージェス・メレディス
    アイリーン・ヘッカート
    リー・ハーコート・モンゴメリー


「家」 中央の顔はベティ・デイビス

ベンは車で逃げようと・・・

オリバー・リード
    オリバー・リード

「吸血狼男」のオリバー・リード
 「吸血狼男」のオリバー・リード

家
物語

森の中を車が走る。高校教師のベン・ロルフ(オリバー・リード)と妻マリアン(カレン・ブラック)それに12歳の一人息子のデービッド(リー・ハーコート・モンゴメリー)が乗っている。
夏のバカンスを過ごす為、新聞広告に載っていた貸し別荘を見にいくところだ。やがて森の中からビクトリア朝様式の大邸宅が姿を現した。

家主は車椅子のアーノルド・アラダイス(バージェス・メレディス)とその妹ロズ(アイリーン・ヘッカード)だった。
「家を貸すのは私たちがとても疲れている時だけだ」 アーノルドは言った。
「家を愛してください、手入れもよ」 とロズ。
家賃は一夏で900ドルだという。「この家全部で900ドル?」ベンとマリアンは驚いた。安すぎる。
「条件が一つある。私たちの母だ」 アーノルドとロズの母は85歳でこの家の3階の部屋から出たことがない。大抵は眠っていて、起きている時は音楽を聞くか収集品の整理をしているという。
「要するに三度の食事を部屋の外に置くだけでいいの」 ロズは言った。

帰りの車の中でベンは言う。「まるでお化け屋敷だ。それに安すぎる、何かいわくがあるに違いない。老人を他人にまかせるのもおかしい」
「私が責任を持つわ」 すっかり乗り気のマリアンは請合った。

一家は車で貸し別荘へ向かった。ベンの伯母エリザベス(ベティ・デイビス)も一緒だ。到着するとすでに家主は出かけていなかった。『よろしく頼みます』と書置きがある。
マリアンが3階のミセス・アラダイスに挨拶しようと階段を上がる。3階の奥まった部屋がミセス・アラダイスの部屋だがノックしても応答がない。きっと眠っているのだろう。
部屋の前の壁には様々な角度から撮った『家』の写真が飾ってあった。その前のテーブルに夥しい写真が並んでいる。古いもの、比較的新しいもの、それらは人物の顔写真だ。この『家』に何かゆかりの人物であろうか。
マリアンは置いてあったオルゴールの蓋を開けた。静かなメロディが流れてきた。

一家の生活が始まった。伯母エリザベスは庭で絵を描く。ベンとデービッドはプールに水を入れ始める。
マリアンは食事をミセス・アラダイスの部屋の前に置くのだが、手を付けた様子がない。それでも1週間めにやっと食べた形跡があった。しかし、ミセス・アラダイスは部屋に鍵をかけ相変わらず閉じこもっている。

マリアン、オルゴールを聞く。窓の外にはプールで遊ぶベンとデービッドが見える。その時、プールで異変が起きていた。ベンが戯れにデービッドを水に投げ入れた。水面に出たデービッドを更に狂ったように水に沈めるベン。何回も何回も・・・。マリアンは外に飛び出した。

ベンは気が動転していた。何故、デービッドをあんな目に会わせたのか。自分でも解からない。
夢を見た。幼い頃の母の葬式の場面だ。葬儀車の運転手が幼いベンを見つめている。黒い洋服に黒い帽子の運転手は笑っている。その口は耳まで裂けている。はっとして目を覚ます。ベンは汗だくだった。

夜中、家中の時計が一斉に12時を指した。それぞれに鳴り出す。ベンは眠れず起き上がった。デービッドの部屋の様子がおかしい。部屋に鍵がかかっており、ベンが蹴破るとガスが音を立てて噴出していた。
ベンはデービッドを担ぎ出し、ガラスを叩き割った。

エリザベスはマリアンと諍いを起こした。デービッドの部屋にエリザベスが入ったことが解かり、マリアンはガスの事故はエリザベスのせいだと疑っているのだ。
エリザベスはそのショックで臥せってしまい、ベンは慰める。「あんなひどい言い方ってないわ」 「マリアンも気が立っていたんだ」
夫婦仲もぎくしゃくしてきた。
「この家を出た方がいい」 「お年よりを残して行けないわ」 マリアンはあくまでもミセス・アラダイスを気遣う。しかし、マリアンはまだ一度もその姿を見てはいない。

ベンは庭の手入れをして休んでいる時、見た。森の中からやって来る車を・・・。心臓が高鳴る。その車、見覚えのあるその車。葬儀車だ。そして、止まった車の中から黒い帽子の運転手がこっちを見て笑っている。
ベンは震え顔を手で覆う。次の瞬間、車は跡形もなく消えていた。

夜、エリザベスの容態が急変した。眼球を剥きだして苦しむ。医者にマリアンが電話した。ベンはやがて窓の下に来た車を見た。葬儀車!!
ベンは恐怖に震え、エリザベスが狂ったように引きつった。ドアが勢い良く開けられた。黒い帽子の運転手が笑って立っていた。そして、エリザベスに向かって棺を押し付けたのだ。

エリザベスが死んだ。マリアンが温室に行くとなんと様々な花が奇麗に咲き誇っていた。
エリザベスの葬儀が行われた後、憔悴してソファに寝ていたベンは物音に目を覚ます。窓の外がおかしい。外壁が剥落している。古い壁が剥がれ落ち中から新しい壁が出現しているのだった。そして見上げると屋根の表面がばらばらと崩れ落ち、その下から新しい屋根が顔を覗かせていた。
何か邪悪なものが動き始めている。

ベンはデービッドを起こすと、「ここを出るぞ」と、外へ走った。訳が解からないデービッドが激しく抵抗する。車を出し、急発進した。
前方の木が倒れ道を塞いだ。ベンが木をどけようと奮闘するが伸びてきたツルが足にからみつく。木はびくともしない。車を戻し木に突っ込む。ベンは頭を打ち意識朦朧となった。マリアンが追ってきて車を邸宅に戻した。

ベンがぼんやりとプール脇の椅子に座っていた。デービッドはプールで遊ぶ。「泳ぎが上手くなったんだよ、見て」 ベンは黙っている。デービッドが深い方まで泳いで行く。その内に何故か波が立ち始め、デービッドが慌てた。ベンは動けない。顔が引きつる。声が出ない。デービッドが沈んでいく。
駆けつけたマリアンがプールに飛び込みデービッドを救い出した。
「・・・助けようとしたんだ・・・」 ベンは声を絞り出した。
「もういやだ」 デービッドが悲痛な声で訴えた。「帰りましょう、今日のうちに」 マリアンはデービッドを抱き締めた。

一家は出発の車に乗る。マリアンは気になった。「ミセス・アラダイスにお別れを言わなくては」
「頼む、戻るな」ベンはマリアンを止めたがマリアンは邸宅の中へ入って行った。しかしマリアンはなかなか戻ってこない。ベンは3階に上がった。
「ミセス・アラダイス・・・」 ベンがドアを開けると窓際に向う向きで椅子に座っているミセス・アラダイスが見えた。近づいたベンがこちらを向いた老婆を見た。
「待っていましたよ」 何ということあろう。低い声でベンを見上げた老婆は白髪と化したマリアンだった。ベンはのけぞって声が出ない。老婆が立ち上がった。

3階の窓を突き破ってベンが落ちてきた。それはデービッドが乗っている車のフロントガラスに突き刺さった。
悲鳴を上げ外に飛び出したデービッドの上に邸宅の塔が崩れ落ちてきた。

ミセス・アラダイスの部屋の前の『家』の写真が新築のように白亜に輝いている。そしてテーブルに飾られた顔写真の中にデービッド、ベン、エリザベスが加わっているのだった。
映画館主から

「たたり」(’63年・監督ロバート・ワイズ)、「ヘルハウス」(’73年・監督ジョン・ハフ)、「シャイニング」(’80年・監督スタンリー・キューブリック)、「ポルターガイスト」(’82年・監督トビー・フーパー)など、『家』をテーマにした恐怖映画は数多くありますが、本作もその一つで、なかなかの傑作です。

『家』が人間の生命を食べて成長していくという怖いお話です。
映画の出だし、物語の設定からして「シャイニング」と良く似ており、ラストの写真の場面もそっくりです。まさかキューブリックがパクッタ訳ではないでしょうが・・・。
大掛かりな場面が少ない分、じわじわと恐怖感がつのり、ラストであっと驚かせます。意味不明な結末ですが相当怖い場面です。
大邸宅の最上階に老婆が住んでいる筈なのに映画ではいっこうに姿を現さず、ラストで・・・。

怖いのはキャストの顔ぶれで一目瞭然です。ヒッチコックの「ファミリー・プロット」(’76年)で悪女を演じたカレン・ブラック、「吸血狼男」(’61年・監督テレンス・フィッシャー)や最近「グラディエーター」を最後に世を去ったオリバー・リード、「ロッキー」のトレーナー役のバージェス・メレディス、そこに「何がジェーンに起ったか?」(’62年・監督ロバート・アルドリッチ)のベティ・デイビスが加わったら怖くないほうが不思議です。まさに怪優ぞろい。

ちなみに「吸血狼男」はビデオ化されていないようで、見たいと思っても見ることができません。オリバー・リード極め付きの怖さでしたが。残念。

・・・と、思いきやありましたありました、渋谷駅前のTSUTAYAにありました。「吸血狼男」をご参照ください。さすがは、TSUTAYA。

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