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「ドライビングMissデイジー」 |
| ドライビング Missデイジー 1989・米 |
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![]() 製作:リチャード・D・ザナック 監督:ブルース・ベレスフォード 脚色:アルフレッド・ウーリー 撮影:ピーター・ジェームスA,C,S 音楽:ハンス・ジンマー 出演:モーガン・フリーマン ジェシカ・タンディ ダン・エイクロイド パティ・ルポン エスター・ロール ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 1948年、アメリカ南部、ジョージア州アトランタ。
ミス・デイジー(ジェシカ・タンディ)はユダヤ人の元教師で、大きな屋敷に使用人の黒人アデラ(エスター・ロール)と二人で住む70歳を越えた老人だが、まだかくしゃくとしており、意気軒昂で車も自分で運転する。
ある日、デージーは出かけようとして車のギア入れ違え隣家の庭に突っ込んでしまった。
幸い怪我はなかったが、息子のプーリー(ダン・エイクロイド)はデイジーを心配し運転手を雇うことにした。
やって来たのは黒人のホーク(モーガン・フリーマン)だ。デイジーには気に入らない。黒人を差別するつもりは無いが、運転手付きの車など金持ちぶっていると思われるのではないか。
第一自分が運転できない程の老人と認めたくないのだった。
新車のハドソンが買われ、ホークがデイジーの屋敷に通い始めた。
デイジーが乗ろうとしないのでホークはシャンデリアを掃除したり庭の手入れに精を出した。
デイジーはそんなホークに難癖をつける。ホークはデイジーの小言を飄々と受け流した。
しばらく経ったある日、デイジーが歩いて買い物に出た。ホークは車でデイジーの歩くのに合わせ、横をゆっくりと付いていく。デイジーは近所の手前もあり、やむなく車に乗り込んだ。
それでも道が違う、スピードが速いとデイジーは口うるさく文句を言う。
日曜日、ユダヤ教会の正面玄関にホークが車を着けると、上流階級の人間じゃないんだからとデイジーはホークを叱った。
ある朝、プーリーのもとにデイジーから電話が入った。ホークが鮭缶を盗んだと言うのだった。プーリーが駆けつけるとデイジーが騒ぎ立てた。
プーリーがうんざりしている所へホークがやってきた。
「古いものは食べていいと言われていたので鮭缶を一つ頂きました。新しいのを買ってきました」 ホークが鮭缶を取り出した。
思わず恥ずかしくなるデイジーだった。だが、この事件があってデイジーはホークを受け入れるようになっていく。
デイジーは夫の墓参りを欠かさない。ホークを伴い墓参りに出かけたデイジーは、思い立って知人の墓にも花を添えてやろうと思った。ホークにその墓の名を言うと、ホークは困ったようにたたずんだ。
「私は字が読めないんです」 元教師のデイジーには見過ごせない。 アルファベットは知っているというホークにその名の読み方を教える。その墓が見付かり、ホークは喜んだ。
プーリーの家では妻のフロラインがクリスマスを祝っていた。熱心なユダヤ教徒のデイジーには決して面白いことではない。
だが、この年、招かれてプーリーの家に着いたデイジーはホークにささやかなプレゼントをした。教師時代に使っていた読み方の本だった。デイジーが初めてホークに見せた優しさだった。
ハドソンが古くなったので、プーリーはキャデラックの新車に替えることにした。古くなったハドソンはホークが買い取った。
デイジーが新車を嫌がった時のためのホークの心遣いだった。
90歳になる伯父の誕生祝のため、デイジーはホークの運転でアラバマ州に向かった。途中、車を止めて昼食をとっているとパトロールの警官が尋問に来た。
黒人が高級車に乗っているのを不審に思ったのだろう。だが、疑われるようなことはある筈が無い。警官は 「黒人とユダヤ人か」 棄て台詞を残して去った。
デイジーの心が痛む。ドライブはデイジーが道を間違えたため大幅に遅れた。既に日は落ちあたりは暗くなっている。ホークは車を止めた。
「小用を足しに・・・」 「ドライブインがあったでしょう?」 「黒人は使えないんです」
デイジーは車に一人残され、恐怖を感じ身をすくめる。ホークをどんなに頼りにしているかを思い知ったデイジーであった。
プーリーの事業は年とともに発展していた。建物は改装され、新しい機械が工場でうなりを上げる。
ホークはプーリーに給料を上げてくれるよう交渉に来た。他からも口があるというのだ。プーリーはOKした。
もちろんホークにデイジーから離れる気はなかった。
デイジーの家にも時代の波は押し寄せていた。台所のテレビに見入っているホークとアデラ。
だが、アデラは突然、心臓発作で急死してしまった。こんな大きな家に一人残されたデイジーは寂しくなった。
ある朝、大雪が降った。こんな日はホークも来れない筈だ。デイジーは孤独をひしひしと感じていた。しかし、ホークはなんのことなくやって来た。
心配したプーリーの電話にデイジーはホークが来ていることを伝え、「役に立つ男だ」と付け加えた。デイジーの最大限の褒め言葉だった。
プーリーの事業は更に発展し、プーリーは商工会議所の名誉賞を受ける名士になっていた。
街も変わり、ある日、デイジーの通うユダヤ教会が何者かに爆破された。激動の時代が始まっていた。
黒人解放運動の指導者、キング牧師を招いての夕食会が開かれたが、仕事上の付き合いを考えたプーリー夫妻は欠席することを選んだ。
プーリーはホークを誘うようデイジーに言った。
街の上流階級の人々の集まる席でキング牧師の演説が始まった。差別からの開放を訴えるその声をホークは外の車の中で聞いていた。
ついにデイジーがボケに襲われる日が来た。記憶が混乱し、取り乱すデイジーをホークは必死になだめる。
いまやすがるようにデイジーはホークに言うのだった。「ただ一人の親友・・・」
更に時は流れ、73年、ホークはプーリーと共にホームにデイジーを訪ねる。
デイジーにアップルパイをスプーンで食べさせてやるホーク。デイジーは赤子のようにおいしそうに食べる。
「元気でやってる?」 「なんとかやってます」 ホークは答えた。「なんとかやっていくのが人生ですな」
人生の最後に二人の絆はしっかりと深く結ばれていた。
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| 映画館主から オーストラリア出身のブルース・ベレスフォード監督によるほのぼのとした人間ドラマ。
72歳のユダヤ人元教師のミス・デイジーと、60歳の黒人雇われ運転手ホークとの25年にわたる交流を描いています。
主役は老人で、スペクタクルもドラマチックな事件が起きるわけでもなく、ロマンスでも悲劇でもありません。しかも主役の二人は演技的には超一流でも人気スターでもありません。
しかし、25年という歳月はかかるけれど、偏見と階級を乗り越えてお互いをベストフレンドと認め合うところまで信頼を寄せ合う、素晴らしいドラマに我々の心が癒されるのです。
映画の中には『差別』というものがいくつか出てきます。特にアメリカ南部が舞台ですから尚のことです。黒人運転手のホークが文網盲だというのも黒人が学校からも排除されていた時代背景を窺がわせます。
黒人はドライブインのトイレも使えず、高級な車を運転しているだけで疑われ、さらにユダヤ人と一緒だと笑われる時代。ユダヤ人差別と黒人差別が二重に響きあうドラマになっています。それもさりげなく。
ユダヤ教会が爆破される事件は実際にアトランタで起きた事件だそうです。(1958年の「ザ・テンプル爆破事件」)
そして、マイティン・ルーサー・キング牧師の偉大な言葉、「我々の世代が後世に恥ずべきは、悪しき人々の過激な言葉や暴力ではなく、善良な人々の沈黙と無関心な態度なのです・・・・・」
この言葉をデイジーとホークの溝を埋める架け橋に使った構成と演出。
主演のミス・デイジーにジェシカ・タンディ。知的で上品な容姿からは想像もつかない切れ味鋭い演技力。
彼女は舞台出身ですがヒチッコックの名作「鳥」(’1963年)での母親役で脚光を浴びました。そして本作で史上最高齢でのアカデミー主演女優賞を獲得したのです。彼女はこのとき80歳。
黒人運転手ホークにモーガン・フリーマン。あるがままの現実を受け止め、あるがままに生きる。急がず騒がず、しかし言うべきことはきちっと言う。そんな態度はまるでモーガン・フリーマンそのままではないかと思えるほどの自然体の演技でした。彼はこのとき52歳。 アカデミー主演男優賞にノミネートされました。 本作はアカデミー作品・主演女優・脚色・メークアップと、その年最多の4部門に輝きました。 参考文献:公開時パンフレット |
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