「おしゃれ泥棒」
おしゃれ泥棒
    1966・米
おしゃれ泥棒

製作:フレッド・コールマー
監督:ウィリアム・ワイラー
原作:ジョージ・ブラッドショウ
脚本:ハリー・カーニッツ
撮影:チャールズ・ラング
音楽:ジョン・ウィリアムズ


出演:オードリー・ヘップバーン
    ピーター・オトゥール
    ヒュー・グリフィス
    イーライ・ウォーラック
    シャルル・ボワイエ


オードリー・ヘップバーン

イーライ・ウォーラック(右)

ヒュー・グリフィス(右)

ピーター・オトゥールとヘップバーン

ピーター・オトゥールとヘップバーン

おしゃれ泥棒
物語

シャルル・ボネ( ヒュー・グリフィス)は美術品の収集家である。セザンヌ、ゴッホ、ピカソ・・・なんでもござれだ。ところが本物の他に自分の描いた贋作も多く所有している。ボネは贋作の大家なのだ。
シャルル・ボネコレクションのオークションではいつも何十万ドルという高値で取り引きが行われる。それもボネが描いた贋作だ。

ボネの大邸宅。奥の家具の扉を開けると中に又扉があり、そこを抜けると螺旋階段につながっている。上に上がるとボネのアトリエだ。
娘のニコル(オードリー・ヘップバーン)は父親を愛している。もう贋作つくりをやめるよう常に諭しているが効き目は無い。贋作も立派な芸術と信じて疑わないのだ。しかも自分の腕前に惚れ惚れしている。
「ゴッホは生涯で一枚しか絵を売らなかったが、この悲劇の天才に敬意を表し2枚売った」 ボネはオークションの成果を自慢する。
「偽者の絵を売ることは犯罪なのよ」 「客は億万長者だけだ。名画を買って喜んでいる」

美術館の館長の車が警察車数台を伴って訪れた。ボネ・コレクションの中でも逸品の「チェリーニのビーナス」を美術館に展示することになっていて借りに来たのだ。
イタリア・ルネッサンス期の彫刻家の作品という触れ込みだが、実はこれもボネの贋作だ。
「カリウム・アルゴンをひとふき掛ければ、石の年代や産地、彫られた時期が分かるのよ」 ニコルの心配は尽きない。
「だから売らんのだ。この前だって100万ドルの値がついたが・・・」

深夜、ニコルは変な物音で目を覚ます。階下にそっと降りて行くと、暗がりに怪しい男がいる。ニコルはピストルを構えて降りると男はゴッホの絵を壁から外したところだった。
男はニコルに気づく。ニコルはピストルを構えながら警察に電話しようとしたがやめた。男が盗もうとしたゴッホの絵も偽者。警察が来てはやばい。
「見逃してあげる」 ニコルは言った。ニコルがテーブルにピストルを置いた途端、 「バーン!」 ピストルが暴発した。ニコルは階段を途中まで駆け上がる。男が倒れている。そっと近づくと男は右手を押さえている。弾がかすめたらしい。ハンサムな泥棒はシモン(ピーター・オトゥール)と名乗る。ニコルはシモンの傷を手当してやり彼のホテルまで送ってやる。シモンの車は超高級車だ。「儲かる商売なのね」 ニコルの帰りはタクシーだ。シモンは別れ際、ニコルにキスする。「見逃してくれた礼だ。普通はしないが君は特別」

美術館の中央に展示された「ビーナス」は連日盛況だった。
そんな折、ボネ邸に保険業者が来た。証書のサインをしてもらうためだ。「ビーナスに100万ドルの保険を掛けるのです。火災、地震、もちろん盗難も大丈夫です」 ボネは気をよくしてサインした。
続いて美術館副館長がやって来て金曜日にチューリヒからバウアー教授が鑑定に来るのだと告げた。美術品鑑定の権威である。
そうなるとボネの「ビーナス」が鑑定される。保険の成立に教授の鑑定が条件なのだ。
ボネはニコルに言う。「少しでも疑いが掛かればボネ・コレクションは崩壊する。私の描いた全ての作品がX線や顕微鏡、化学薬品、あらゆる検査をされる」 つまり贋作がばれてしまうのだ。

ニコルはホテルでシモンと落ち合った。
「美術館の「ビーナス」を盗んで欲しいの」 「??だって君のだろ?」 「訳は聞かないで、とにかくお願い・・・」 「・・・?」
美術館に下見に行く二人。「ビーナス」の展示台の周りを上下から赤外線が走っておりその中に手を入れようものなら即、警報ブザーが鳴り響くだろう。警備員たちの警備も厳重だ。
シモンは思案する。これは無理だ。でも一目ぼれしたニコルのたっての願いは聞き入れたい。
帰りに公園を通った二人は途中でブーメランを売っている人に出会う。子供達にブーメランの実演をしていた。!!!シモンは閃いた。
美術館の前で夕方5時半に会う約束で二人は別れた。

ニコルとシモンは閉館前の美術館に入る。来場者はまだ多く残っていた。6時の閉館のベルがなった。二人は隙を見て階段下の物置に忍び込む。通りかかった警備員が鍵をかける。物置の中は暗く狭い。鍵のぶら下がっている位置はシモンが昼間さりげなく計測してあった。おもむろにポケットから磁石を取り出す。
鍵にぶら下っている位置に磁石をあてがう。壁を通して磁石の威力が発揮される。壁伝いにずれてきた鍵は扉の下から手に入った。
「でも中からでは開かないわ」 「ところが偶然、こんなもの持ってる」 シモンがおどけて言う。ポケットから出てきたのは細い紐だ。
鍵穴から通した紐の先端に鍵を通し、内側に引く。鍵は鍵穴から入った。内側の金具をペンチで廻す。「カチリ」鍵が開いた。「!!すてき」 ニコルはシモンの腕前に惚れ惚れした。「拍手はビーナスを盗んでからにしてくれ」

ニコルは掃除婦の格好に変装した。「こんな服で盗めるの?」「毎晩、こんなガラクタを見張らされていたら君ならどう思う?」 「厭になるわ」 「心理作戦さ」 シモンは懐からブーメランを取り出した。「あ〜もう」 ニコルはあきれた。何をするつもりなのだろう。
シモンは物置を出ると中央の「ビーナス」に向けて投げる。1回はかすりもしなかった。2回目のブーメランは「ビーナス」のあたりに飛び、赤外線センサーに感知された。その途端、けたたましい警報器の音が美術館の内外に響き渡った。
シモンはニコルと共に物置で潜んでいる。警備員たちが一斉に警備室から飛び出した。やがてパトカーも駆けつける。だが「ビーナス」はあるし何も異常はない。
「まったく、発明家の奴め、迷惑な警報器を作りやがって」 警備主任が八つ当たりする。

物置の中では狭いところに男女が二人。
「バウアー教授が来たらどうなった?」 「・・・」 「ビーナスは偽者なんだろ?」 「・・・」 ニコルは首を縦に振る。「作者は?」 「祖父よ」 「モデルは?」 「祖母」 「どうりで君に似ていると思った」 「偽者と知ってて手助けを?」 これが答えさとシモンはニコルにキスをする。

シモンは再びブーメランを投げた。今度は1回で成功。けたたましく警報が鳴り響く。警備員が一斉に飛び出して美術館中を点検する。だが、何の異常もない。
美術館の目の前にある大使館からも電話が来る。「確かに大きな音ですが、私が設置したわけでは・・・はい」 警備主任はしどろもどろだ。
警備主任は切れた。「もう、警報設備の電源を切るぞ、永久にだ!」

「やったぞ!本当に電源を切った」 シモンは信じられない思いだった。掃除婦の姿のニコルと物置から出る。物置の壁に掛かったバケツを見ると中にウィスキーのボトルが入っている。警備員の一人が時々隠れて飲んでいるものだ。シモンは「ビーナス」とボトルを入れ替えた。
「ビーナス」はまんまとバケツに収まった。バケツを持ったニコルは暖炉に隠れる。
やがて夜は開け、美術館に掃除婦がぞろぞろ入ってきて床掃除を始めた。ニコルもいつの間にか彼女達に混じっている。

ふと「ビーナス」を見た一人の警備員は我が目を疑った。「ビーナス」がウィスキーのボトルに化けていた。
たちまち美術館中が大騒ぎだ。警備主任が慌てて警報器の電源を入れた。ウィスキーのボトルをそこから取ったからセンサーが感知し警報が鳴りだした。ニコルは騒動にまぎれて警備室へ逃げ込む。そこにいたシモンと別の通路から美術館の外に出た。

ホテルでニコルはシモンと落ち合った。ニコルは興奮している。
「泥棒は初めてよ」 「僕もだ」 「・・・うちにいたのも?」 「僕は実は探偵なんだ。専門は盗難美術品、犯人の追跡や偽者の鑑定もやる。警備に詳しいのは世界各地の美術館の特別顧問をしているからだ」 「・・・」 シモンは美術商のド・ソルネ(シャルル・ボワイエ)からボネの贋作を調査するために派遣された探偵だったのだ。

シモンは「ビーナス」欲しさにニコルに結婚を迫っていた美術収集家リーランド(イーライ・ウォーラック)に「ビーナス」をニコルへの婚約指輪つきでくれてやり、米国へ旅出させた。
ボネに贋作を中止するよう警告した。ボネは素直にもう二度と贋作商売はしないと誓った。ボネは「ビーナス」の贋作がばれるのを救ってくれたシモンに感謝せざるを得ないのだ。
ニコルはシモンとのハネムーンに出発する。ボネ邸から車で出るときすれ違いに入ってきた車がある。
「へーい、ゴッホはあるかな」 その男はボネと抱き合っている。贋作とも知らずボネから絵画を買っているマニアだ。
「ありゃ誰だ?」 シモンが言うと、「・・・パパのいとこよ」 シモンがニコルを見て言った。「・・・君は嘘は初心者のはずなのに、素質があるよ」
映画館主から

巨匠ウィリアム・ワイラーがスペクタクル大作「ベン・ハー」(’59年)の7年後に手がけたロマンチック・コメディの傑作。

その間にシリアスドラマ「噂の二人」(’62年)、スリラー「コレクター」(’65年)と晩年のワイラー監督は衰えを知りませんでした。
それにジャンルも多彩です。ウィリアム・ワイラーをご参照ください。

オードリー・ヘップバーンと ピーター・オトゥールの初顔合わせ。それにヘップバーンの父役に「ベン・ハー」でアカデミー助演男優賞に輝いたヒュー・グリフィス。他にイーライ・ウォーラックにシャルル・ボワイエといった芸達者が揃いました。

スマートな泥棒に贋作作りの父のビーナスを美術館から盗んでくれるように依頼する娘。ビーナス欲しさに娘に政略結婚を挑む美術収集家。泥棒は実は贋作作りの実態を掴もうとパリの美術商から送られた私立探偵だったという、ドタバタ調のコメディです。

見所は美術館に展示された「ビーナス」を厳重な警備と設置されたセンサーをかいくぐってどうやって盗むかというところです。その過程で二人の間にロマンスが生まれてハッピーエンドとなります。

オードリー・ヘップバーンは当時37歳ですがおしゃれでチャーミング。ピーター・オトゥールは34歳でした。

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