「白鯨」
白鯨 1956・米
白鯨

製作:ハーマン・カッツ
製作:監督:脚本:
    ジョン・ヒューストン
原作:ハーマン・メルビル
脚本:レイ・ブラッドベリ
撮影:オズワルド・モリス
音楽:ルイス・レビ

出演:グレゴリー・ペック
    レオ・ゲン
    リチャード・ベースハート
    オーソン・ウエルズ

   
エイハブ(グレゴリー・ペック)とスター・バック(レオ・ゲン)

モビー・ディックを発見した

モビー・ディックに銛を撃ち込むエイハブ

物語

1841年の暮れ、イシュメル(リチャード・ベースハート)は、海に仕事を求めマサチューセッツ州のニュー・ベッドフォードの港にやって来た。
港の酒場宿“潮吹き亭”では銛撃ちの荒くれ男たちが酒を飲み、ダンスを踊る。壁に掛かった鯨の絵にイシュメルは目を留めた。それは、砕ける波間を跳ぶような大きな鯨の絵だった。
男たちが新顔のイシュメルに近づく。「鯨は何でもできる。海を轟かせて跳び上がり、大きな船も木っ端微塵だ。人も飲み込んじまう。神が魚になるとすれば絶対に鯨だ」

イシュメルの相部屋の男、クイケグは、西南の島の首長の息子で体中はおろか顔にまで刺青を彫った銛撃ちだった。

町には捕鯨者の教会があり、遠洋航海を控えた鯨捕りたちはほぼ例外なく訪れるのだ。教会では捕鯨船を擬した演台の上から神父(オーソン・ウェルズ)が神妙な面持ちで説教を垂れた。

イシュメルとクイケグは捕鯨船ピークォド号で働くことになった。船長はエイハブといい、白い大鯨に全身ズタズタにされ、鯨の顎骨を義足にしている男だ。
世界中のあちこちから集まった男たちを乗せピークォド号が出航した。エイハブ船長は昼間は船長室に閉じこもって出てこない。夜になると甲板を歩くエイハブの義足の足音が聞こえてくる。

ある日、突然、甲板を磨く男たちの前にエイハブ船長(グレゴリー・ペック)が姿を現した。鯨の顎骨の義足を付け、水平線を睨んでいる。
やがてエイハブは全員を集めると叫ぶ。「お前達が探すのは白い大きな鯨だ。良く見張れ。捻じ曲げられ全身に銛が刺さっている。凄まじい勢いで潮を吹き、嵐の三角帆のように尾を振る。モビー・ディックだ。俺の足を奪ったあの白鯨を世界の果てまで追い詰めるのだ」

鯨の発見。銛を打ち込み追跡、格闘の末、あたりの海を血に染め仕留める。男たちは歓喜した。
鯨は解体され、脂肪を煮て純粋な油を採る。それは1000軒の家の火を灯し、暖炉の時計を動かし、王の頭に塗る香油となる。重労働の末、骨は海に捨てる。それは陽気な葬式だった。

エイハブは多くの捕鯨船の航海日誌をもとに、鯨の動きを海図に記録していた。「あいつは、今喜望峰の沖をインド洋に向かっている」
そんなエイハブを一等運転士のスターバック(レオ・ゲン)はたしなめた。「本能で動く生き物を憎むなど、神への冒涜です」
ある日、イシュメルがマストに登り、鯨の大群を発見した。男たちは狂喜して追うがエイハブは意に介さない。
通りかかった別の捕鯨船の船長の話で白い大きな鯨を見かけたとの情報を得て、エイハブは皆を引き上げさせる。普通の鯨はエイハブの獲物ではないのだった。
「エイハブ船長に従っていると、誰一人、二度と故郷の土を踏めなくなる」スターバックは気に病んでいた。

4月の新月の頃、エイハブは甲板に立ち海を見張っていた。
クイケグは占いで自分の死期を悟り、大工に自分の棺桶を作ってくれるよう依頼した。クイケグはイシュメルの勧める食事もとらなくなった。
別の捕鯨船レーチェル号に出合った。レーチェル号の船長がエイハブに叫んだ。「白い大きな鯨に息子がボートごとやられた。まだ12歳なんだ。捜索に協力してくれ!」
白い大きな鯨!モビー・ディックだ。エイハブは捜索は断り、白鯨を追うと伝えた。スター・バックはそれを聞き、エイハブはもはや人間ではない、と嘆く。

大嵐がやって来た。帆が破られた。「新しい帆を張れ!」エイハブが叫ぶ。
「この風では無理です。転覆します」スター・バックが制止したがエイハブには通じない。
スター・バックがマストのロープを切ろうと斧を持って来た時、エイハブが銛を振り上げた。「斧を捨てろ!刺し殺すぞ」
その時だった。嵐の空に不思議な光が現れ、マストを照らした。「聖エルモの火だ」「神よ、ご慈悲を!」男たちが口々に叫ぶ。その火はエイハブの銛に宿った。エイハブはその火を手で掴んだ。「そうなのだ。この光こそ白鯨への道しるべなのだ。新しい帆を張れ、突っ走るのだ」皆はこの神がかったエイハブに従った。
「ピークォド号の乗組員はどこに消えた。皆、別人になってしまった」スター・バックは嘆くのだった。

嵐が去り、青空の静かな海。凄まじい潮を噴く白鯨が巨大な姿を現した。次々とボートを降ろしエイハブみずから追いかける。空に海鳥が集まってきた。銛をモビー・ディックに次々と撃ち込む。ロープが引きずられボートごと海の中に持っていかれた。
エイハブはモビー・ディックに飛び乗った。そして何度も銛で突き刺した。海の中に沈んだモビー・ディックが再び海上に姿を現した時、男たちは見た。白鯨の腹にロープで結わえ付けられたエイハブが手招きしているのを!!
「死んでも手招きしてるぞ」 皆は怖気づいた。「引き上げよう」

その時、スター・バックが叫んだ。「逃がすな、追え!大きいだけでただの鯨だ。鯨捕りが鯨を怖がってどうする!」
モビー・ディックが襲い掛かってきた。ボートは次々と沈められた。モビー・ディックは捕鯨船に体当たりを喰らわせ木っ端微塵にしてしまった。

やがて、一人、イシュメルだけがクイケグの用意した棺桶に掴まって助かり、レーチェル号によって救助された。そして、この物語の語り手となり、後世に伝えたのだ。
映画館主から

ハーマン・メルビルの原作をジョン・ヒューストンが骨太に精魂込めて製作した文芸大作。

執念のエイハブ船長を演ずるグレゴリー・ペックが適役です。鯨の骨を義足に白鯨だけを追う男の執念。さしずめ、近年のスピルバーグ作品「ジョーズ」のロバート・ショー演ずるサメ狩りのハンターに通ずるものがあります。
スピルバーグも「ジョーズ」製作にあたって、「白鯨」を何度も見て参考にしたであろうことは想像に難くありません。
ただし、サメと鯨では大きさがまるで違います。「白鯨」の捕鯨シーンは大迫力です。
オズワルド・モリスの撮影は中世の銅版画を想起させるような画面であり、海の表情も千変万化です。

語りべとなるイシュメル役のリチャード・ベースハートはフェリーニの「道」’54年が代表作。

男のロマンと生き様を追い続けたジョン・ヒューストン監督については、「ジョン・ヒューストンの世界」をご参照ください。

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