| 麗しのサブリナ 1954・米 |
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![]() 製作:監督: ビリー・ワイルダー 原作:サミュエル・テイラー 脚本:ビリー・ワイルダー サミュエル・テイラー アーネスト・レーマン 音楽:フリードリッヒ・ホレンダー 出演:オードリー・ヘップバーン ハンフリー・ボガート ウィリアム・ホールデン ジョン・ウィリアムズ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 『昔、ロングアイランド北岸の大邸宅に女の子が住んでいました。屋敷には大勢の使用人がいました』 庭師、船を管理する係り、屋外と屋内にあるテニスコート係り、プール係り、ジョージという名の金魚の世話係りなど。 お抱え運転手フェアチャイルド(ジョン・ウィリアムズ)と、その娘サブリナ(オードリー・ヘップバーン)もララビー家の大邸宅の一室に住んでいた。 その夜、サブリナは庭の木の枝に登りテラスで開かれているララビー家のダンスパーティを眺める。憧れのララビー家の次男デイビット(ウィリアム・ホールデン)が銀行家の令嬢と踊っているのをため息と嫉妬で覗き見る。 父フェアチャイルドはそんなサブリナの気持ちを察しているが、「高望みはいかん」と、フランスの料理学校への入学を勧めた。明日はサブリナがフランスへ発つ日だ。 その夜、サブリナは遺書を書いた。 『お父様、パリに行くより私は今、死にたいのです。私がこれからすることを許してください。さようなら。 追伸、私の葬儀にデイビッドを来させないで・・・彼はきっと、涙も流さないでしょうから・・・』 サブリナは広いガレージの扉を締め切り、ずらりと並ぶ高級車のエンジンを次々とかけていった。マフラーから排気ガスが吹き出る。 サブリナは咳き込む。そこへ入ってきたのは、ララビー家の長男ライナス(ハンフリー・ボガード)だった。 「何をしてる?」 サブリナに気づき言った。「・・・プラグの点検です。1台が不調と聞いたので、どの車かと・・・」 「一酸化炭素で死ぬところだ、エンジンを吹かすときは扉を開けておくこと、無知すぎるぞ」 サブリナの自殺は未遂に終わった。 サブリナはパリの料理学校で2年を送る。生徒の中にフォントネル男爵がいた。 サブリナが何かにつけ失敗続きなのを見て、「幸せな恋に酔うとスフレを焦がし、不幸な恋に泣く女はオーブンの点火を忘れる・・・」などと講釈をのたまう。 そして、「馬の尻尾をやめては?」と言った。サブリナのポニーテールの髪の毛のことだ。 『この2年間で私は学びました。複雑なソースやスープの作り方以上に大事な人生についても。人生とは何か。どう生きるべきかを知りました。傍観者ではだめだと。・・・もう、人生から逃げはしません。恋からもです。金曜日の飛行機で帰ります。私が分からなかったら、一番洗練された女性を探してください』 フェアチャイルドはサブリナからの手紙を邸宅の使用人たちに読んで聞かせる。 グレン・フープ駅に子犬を連れたエレガントな女性が降り立った。ポニーテールをばっさりと切り落とし白い帽子をかぶり、黒のスーツに身を固めたサブリナだった。 そこへ車を飛ばして通りかかったのはデイビットだ。プレイボーイのデイビッドは綺麗な女性を見てユーターンした。 「タクシーですか?」 「まあ、お元気?」 サブリナは空っとぼけて聞く。「元気だとも、ところで君はだれ?」 デイビッドは女がサブリナと気づかない。 サブリナは連れている犬を“デイビッド”と呼ぶ。「僕と同じ名だ」 「あらそう」 サブリナはあくまで空とぼけた。 デイビッドがサブリナを乗せて着いた邸宅は自分の家だ。「ここが君の家?」 使用人が次々と出てきてサブリナと抱き合う。ポカンとするデイビッドはやっとサブリナと気づいた。 父フェアチャイルドは、「デイビッド様は金持ちだ。運転手の娘には手の届かぬ月だ。しかも彼は婚約してる」 とサブリナに釘を刺すのだが、「月が手を伸ばしてきたのよ」 サブリナはパリ生活で別人に生まれ変わっていた。 夜のパーティでサブリナはデイビッドと踊る。「今までのパーティで最高よ」 サブリナはうっとりしている。今までは木の枝の間から眺めていただけなのだ。 デイビッドは婚約者はそっちのけでサブリナに夢中になっている。 サブリナとデイビッドの噂は使用人たちの間でたちまち伝わる。父のフェアチャイルドは気に入らない。 ララビー家の父も気に入らない。「召使を相手にするなど!」 長男のライナスを呼びつけ一計を案じた。 そんな父親の命を受けたライナスがデイビッドの説得に当たった。サブリナとの仲を裂くようにとの命令である。 デイビッドがサブリナをテニスコートへ先に行かせ、シャンパンのグラスを尻のポケットへ忍ばせるのをライナスは見ていた。 「話がある」 ライナスがデイビッドを無理やり椅子に座らせた。「ア〜!!」 デイビッドの尻に割れたグラスが突き刺さる。 テニスコートで待っていたサブリナの前に現れたのはライナスだった。「弟が災難にあった」 「・・・」 「デイビッドは君にポーっとしてる」 「素敵!」 「記憶を失い婚約を忘れてる、思うのは君だけだ」 ライナスは弟の代理だといいながらサブリナとシャンパンを飲み交わす。そしてダンスを踊り始める。サブリナは目をつぶりデイビッドとのダンスを夢見ている。 「デイビッドだったらキスしたい?」 ライナスはそっとキスする。「なにせ兄弟だからな」 一方、デイビッドは医師から尻に刺さったグラスの破片を取り除いてもらっていた。テニスコートの方から聞こえる音楽が気になって仕方がない。結局、23針も縫う怪我となった。 ライナスはサブリナとデイビッドのボートでデイトをする。蓄音機でレコードをかける。ライナスは以前、女性問題で悩みオフィスの窓から飛び降りようと何時間も考えたことなどを話した。 帰ったサブリナは父フェアチャイルドに聞く。「ライナスを車に乗せているとき、彼をよく見てる?」 「道路しか見とらん」 「けっこう人間的なのよ」 翌日、フェアチャイルドは車の後部座席のライナスを見て、真意を聞いた。「パリに帰すつもりだ。費用の点は心配ない」 「心配なのは娘の気持ちです。傷つけたくないのです」 「木曜に出航する、リベルテ号だ」 ライナスのオフィスで港を見ながらサブリナに言った。「あれに乗る。仕事も秘書もうんざりだ、オフィスから逃げ出すんだ」 「いいことよ、きっと変われるわ」 サブリナはパリの薀蓄を垂れる。「葬儀担当みたいな格好はパリでは禁物。ブリーフケースも傘もだめ」 ライナスとの逢瀬から車で帰ったサブリナをデイビッドが出迎えた。サブリナの気持ちが揺れている。 「しっかり抱いて」 デイビッドがサブリナを抱く。「人を引き付ける男だろ」 「二人だけのデイトはいや」 「兄の誘いは受けろ、唯一の味方なんだ」 「・・・」 「親父は僕の手当てを切り、銅山へ追放だという。銅山はいやだろ」 「しっかり抱いて」 「いつも一緒だ、太平洋をいかだで横断したり、アンナプルナへ登ろう、二人きりで」 ライナスは父親ララビーに報告した。「サブリナを追放する手筈は整っています」 「フムフム」 「リベルテ号に予約しました、私とサブリナの名で」 「あの子と船旅だと?馬鹿息子が二人とは!」 「私は行く振りだけ。彼女を行かせるためのね」 「・・・フムフム」 ライナスは一人になって失望したサブリナに後から詫び状と花束を届けるつもりなのだ。 ライナスのオフィスへ行ったサブリナは、机の上にリベルテ号の切符が2枚あるのに気づき、さっと顔色が輝く。「私も連れて行くつもりだったのね」 「それには訳が・・・実は君だけ行かせるつもりだった・・・」 ライナスは告げる。デイビッドの結婚は合同事業が絡んでいる政略結婚だということ。サブリナがその妨げになること。 「船室にお別れの手紙があるのね。それに花束と・・・」 「それ以上だ。信用状とアパートと車。君のお父さんには社の優先株・・・」 サブリナは気落ちして帰った。ライナスはサブリナを複雑な思いで見送る。 翌朝。ライナスのオフィスへデイビッドがやって来た。 「昨夜、サブリナと会ったよ」 「それで?」 「割れたグラス、合同事業、サブリナ・・・この図式を一晩かかってやっと解いたよ」 「それで?」 デイビッドがいきいなりライナスにパンチを食らわせた。 「頭にきてるんだ」 デイビッドが言う。ライナスは頬を擦りながら、「これで貸し借りなしだ。荷造りしろ、婚約は解消、事業は中止する。 パリでサブリナと幸せに暮らせ」 デイビッドはその場を立ち去る。 ライナスのオフィスではその朝、重要な会議が待ち受けていた。合同事業の調印式のための会議だった。デイビッドの婚約者エリザベスと父親も揃っている。 父親ララビーは葉巻をくわえ、グラスに酒を注ぎながら言った。 「そろそろ会議を始めちゃどうかね」 ライナスは窓の外を見ている。港からリベルテ号が出航していく。サブリナとデイビッドが乗っている筈だ。 「エリザベスには気の毒だが・・・」 ライナスが話し始めた。「君の婚約者は・・・」 その時、「今日も遅刻」 という声はドアの入り口のデイビッドだった。 「何故ここに?・・・」 ライナスは驚いた。「調印式だろ?僕の署名はどこに?」 とデイビッド。 「サブリナは?」 「船だろ」 「ひどいな、彼女は一人だ」 デイビッドは新聞をかざした。「新聞によると、ライナス・ララビー氏とサブリナ嬢はリベルテ号で落ち合う模様・・・」 ライナスはデイビッドを殴りつけた。デイビッドは会議のテーブル上を転がった。そして、「決心しろよ、君はあの子に惚れてる!」 傘と帽子をライナスに投げる。「車とタグボートの手配はつけてある」 傘と帽子を受け取ったライナスは一瞬はにかみ、「皆さん、失礼を・・・先約があるので」 そそくさとドアから出て行った。父親ララビーをはじめその場の全員があっけに取られた。 リベルテ号ではサブリナが物思いに耽っていたが、サービスマンがやって来て言うには、「紳士が帽子のつばを直して欲しいと・・・」 サブリナは帽子のつばを下向きに直して渡し、もしやと思った。 サービスマンが入っていったドアの中を覗いていると、ライナスが反対のデッキから歩いてきた。持っていた傘をすれ違う紳士のレインコートのベルトにそっと引っ掛けた。 気づいたサブリナとライナスは近づき抱き合った。 |
| 映画館主から 洒落たタッチのロマンチックコメディを撮らせたら天下一品のビリー・ワイルダー監督の傑作。 ヘップバーンはこの原作を読み、「麗しのサブリナ」への出演をパラマウントの首脳部へ懇願したといいます。その時はまだ、前作の「ローマの休日」は封切っておらず、試写室でそれを観た重役たちはこぞってOKサインを出し、監督に名匠ビリー・ワイルダーを起用したのです。 ワイルダーもヘップバーンを大いに気に入り、「グレタ・ガルボ以来、イングリッド・バーグマンにも匹敵する女優」と太鼓判を押したのです。 パリから帰ったサブリナの目も覚めるような洗練された気品を鮮烈に引き出しました。ヘップバーンは「ローマの休日」と同様、長い髪をばっさりと切り、日本女性の間にも“ヘップバーン・カット”を流行させたのです。 堅物でビジネス一本やりのララビー家の長男ライナスにハンフりー・ボガート。プレイボーイの次男デイビッドにウィリアム・ホールデンと、当時のドル箱スターを配しました。 “ミイラ取りがミイラになる”とはこのことで、弟からサブリナを遠ざけるためにデイトを重ねるうちにサブリナとライナスはお互いに愛し合ってしまったのでした。 兄弟の争いはあるものの結局、洒落たハッピーエンドになりました。 ビリー・ワイルダーをはじめとするシナリオは良く計算されており、ドラマは二転三転、意外な方向へ進み、『やられた!』と心地よいエンドマークで終わります。 22歳という設定のサブリナ役のヘップバーンはこの時、25歳。ハンフりー・ボガートは55歳。ウィリアム・ホールデンは36歳です。 参考文献:「週刊20世紀シネマ館 NO.21」 講談社 |
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