「バッファロー大隊」裁判シーン


バッファロー大隊 
1960・米
バッファロー大隊

製作:ウィリス・ゴールドベック
    パトリック・フォード
監督:ジョン・フォード
脚本:ジェームズ・ワーナー・ベラ
    ウィリス・ゴールドベック
撮影:バート・グレノン
音楽:ハワード・ジャクソン

出演:ジェフリー・ハンター
    コンスタンス・タワーズ
    ビリー・バーク
    ウッディ・ストロード
    ファノ・ヘルナンデス
    ウィリス・バウチィ
    カールトン・ヤング
    ジャドソン・プラット
    ビル・ヘンリー
    ウォルター・リード


裁判法廷

殺されたルーシー

ウッディ・ストロード

ジェフリー・ハンター(左)とコンスタンス・タワーズ

ジェフリー・ハンターは銃を構えた

駅舎でのメアリーとラトレッジ

雑貨屋チャンドラー・ハブル(上)とエックナー医師

「バッファロー大隊」の主役3人

ジェフリー・ハンター

バッファロー大隊
物語

アメリカ合衆国陸軍南西地区本部では、これから被告のラトレッジ曹長の裁判が行われようとしていた。黒人ラトレッジ(ウッディ・ストロード)の罪状は、白人少女への強姦殺人罪である。
裁判官である議長は南北戦争で勇名を馳せたフォスゲート大佐(ウィリス・バウチィ)であった。検察官はシャッタ大尉(カールトン・ヤング)、弁護人は同じ騎兵隊のカントレル中尉(ジェフリー・ハンター)である。

「高等軍法会議を開廷する」 議長の一声で被告のラトレッジが兵に伴われて出廷した。
「縛り首にしろ!」 法廷の後方で男たちがざわめく。傍聴席を興味本位の姦しい夫人連中が埋めていた。カントレルの提案で、騒がしい男たちと事件に関係のない女たちは退廷させられた。

「無罪を申し立てます」 被告ラトレッジは聖書宣誓のあと声だかに言った。長身で精悍な顔つきの兵隊である。
最初の検察側の証人はメアリー・ビーチャー(コンスタンス・タワーズ)である。彼女は本来は弁護側の証人として法廷に来ていたのだが、議長は承諾した。

「東部から12年ぶりにアリゾナに戻るところでした・・・」 メアリーの証言が始まる。
列車でスピンドル駅に着いた。電報でこの駅で父親と待ち合わせる手筈だったが駅には誰もいない。列車の中で知り合ったカントレル中尉も一旦列車を降りたが、列車が走り始めたので、「君は最高に美しい人だ」と言って列車に飛び乗った。
メアリーは暗くなった駅を一人探索しているうちに、駅長室で駅長の死体を発見した。駅長の胸に矢が刺さっていた。
悲鳴を上げ外へ逃げ出したところ、突然メアリーの口を押さえつけたのがラトレッジ曹長だった。「大声を出すな」 
ラトレッジはアパッチ族3人に跡をつけられていると言った。1人は殺したがあと2人はこの辺りにいるという。ピストルを渡されたメアリーがラトレッジと草むらの陰に潜んでいると、駅舎のほうからアパッチの姿が現れ銃を放った。次の瞬間、もう1人がラトレッジに襲い掛かった。駅のほうから走ってきたアパッチをメアリーの銃が倒した。ラトレッジもアパッチを倒し、二人は駅舎へ向かった。
駅舎の中でラトレッジは言った。「誰か来たら君は消えてくれ」 「?・・・どういうこと?」 「白人と黒人が一緒にいたら厄介なことになる」 
メアリーが気づくとラトレッジは腹に怪我を負っていた。

「ラトレッジの行為は貴方を守る為だったのですね?」 カントレル中尉の質問にメアリーはきっぱりと答える。「彼は命の恩人です」

検察側の次の証人はフォスゲート大佐夫人だった。議長の夫人を指名されたフォスゲート大佐はいらついた。「水を・・・」 副議長がグラスに水をさすと、「別の水だ」 副議長は机の下に用意した別の水(ウイスキー)を差し出す。ごくごくと飲むフォスゲート大佐。その余りを飲み干す副議長をフォスゲートが睨み付けた。

フォスゲート夫人(ビリー・バーク)の証言。
「リントン砦の雑貨屋でルーシーを見たのが最後でした」 
ルーシーははち切れんばかりの若さを発散していた。ラトレッジ曹長もいた。彼はルーシーの乗馬の先生なのだ。ルーシーは恋人である雑貨屋の息子のクリスに乗馬が上達した自慢をしていた。その夜、2発の銃声がしたのでダブニー少佐の宿舎を見ると、ドアからラトレッジ曹長が腹を押さえながら出てきて馬で立ち去っていった。

エックナー医師の証言。
「カントレル中尉を駅まで迎えに行き、ダブニー少佐の宿舎に戻りました」 そこにダブニー少佐が心臓を撃たれて死んでおり、近くに娘
のルーシーが倒れていた。強姦されたうえに首を絞められて死んでいたのである。
「犯人は少佐を撃ち殺しあの窓から逃げたのです」 エックナー医師はカントレル中尉に言った。ルーシーの遺体に布がかけられていた。ルーシーが日頃していた首の金の十字架がむしり取られた跡があった。

次にカントレル中尉自身が検察側の証言に立った。
「集合ラッパの後、野営中のフォスゲート大佐に伝令を走らせた」 カントレルは続ける。「夜明けすぎにスピンドル駅に着いた」 そこでラトレッジ曹長を逮捕したのである。
「何故撃たん、死んだほうがましだ」 とラトレッジが訴えた。「そうはいかん」 奥の部屋からメアリーが出てきた。「何故こんな仕打ちを?」 「上官殺害の容疑だ」カントレルが答える。 「まさか!」 メアリーは耳を疑った。「君一人を残すとはうかつだった」 「一人ではないわ、曹長がそばに、あんな頼れる人はいないわ」
ラトレッジは昨夜のことを話した。駅の裏手に40人ほどのアパッチの足跡があった。列車到着前に来たらしいと言う。
カントレル中尉の部下には黒人兵もいる。彼らはラトレッジに全幅の信頼を置いている。ラトレッジの無実を信じているのだ。
「俺に構うな」 ラトレッジは黒人兵たちに毅然と言い放つ。「俺は囚人なのだ」
「何故脱走した?」 カントレルが問うと、ラトレッジは諦めの表情で言うのだった。「白人が殺された・・・俺たちに勝ち目はない」
「君の犯行とは思えん、君ほど立派な兵士はほかにいない!」 「考えが変わったろう」 「友達じゃないのか、助けたいんだ!無実を信ずる!」

検察官シャタック大尉が口を挟む。「自分で逮捕しておいて無実を信じるだと?」 
「ラトレッジは言ったのだ。"信じてくれても軍法会議で有罪になると”・・・」 カントレルは主張した。

アパッチはミス・ビーチャーの牧場へ向かっていた。メアリーの家だ。カントレル一行はメアリーの牧場へ急いだ。ラトレッジには手錠をはめたままだ。メアリーも一緒だった。
空にハゲタカが舞う。岩陰に死体があった。雑貨屋の息子クリスがアパッチの槍で串刺しにされていた。
居留地の方角に煙が上がっている。

黒人スキッドモア老軍曹(ファノ・ヘルナンデス)の証言。
「斥候がラッパを鳴らしながら戻ってきた・・・」 斥候を追ってアパッチの群れがやって来る。騎兵隊は下馬し、応戦した。
そのうちに同じ斥候の黒人兵モファルトの馬が傷を負ったモファルトを乗せたまま暴走していった。とっさにラトレッジが馬に乗り追いかけた。ラトレッジの手錠は戦闘時のため一時はずされていた。ラトレッジは馬の暴走を鎮めた。しかし、モファルトはそのまま死んだ。
その後、ラトレッジはモファルトの小銃を抜くと再び馬に乗りそのままモニュメントの奇岩の彼方に去っていった。
カントレルがラトレッジに向け銃を放つ。しかし当たらず、ライフルで狙った。それは傍にいたメアリーの妨害で地面を撃つのみだった。

「アパッチの後を追いながらクレージー・ウーマン川へ行ったのです・・・」 ラトレッジが証言を始めた。
川の向こうにはビーチャー氏の牧場がある筈だ。双眼鏡で覗くとサム・ビーチャー氏がアパッチに撃たれて倒れるところだった。
さらに近づくと、夥しいアパッチが川の周辺に潜んでいるのが見えた。騎兵隊はこちらに向かってくる。
「連隊のことなど忘れるつもりだった・・・自由が欲しいだろ、帰れば縛り首だ・・・そんな声が聞こえた」 だが、ラトレッジは危険を知らせるため騎兵隊の方へ引き返したのだ。
騎兵隊が川を渡って来るところだった。アパッチが追ってくる。連隊は引き返し川の手前で円陣を組みアパッチに対戦した。銃撃戦のすえ砂煙を上げアパッチは退散していく。

「君の取った行為は立派だがそれで殺人罪は消えんぞ、それは情状酌量を狙った行為ではなかったのか?」 シャタック大尉が詰問した。
「違う!第9騎兵隊が大事だからです!」 ラトレッジは目に涙を滲ませながら立ち上がった。「だが私は脱走した、私は奴隷じゃない!人間なんだ!」
「私が付け加えましょう、あの勇敢な行為に、彼が被告でなければ
褒め称えていたでありましょう」 カントレルが言った。

休廷の後、再びメアリーが証言台に立つ。
「カントレル中尉は再びラトレッジ曹長に手錠をはめました」 
カントレルたちがアパッチの埋葬をしている時、死んだアパッチの死体から金色の十字架をもぎ取った。ルーシーが身に着けていたものに似ている。上着には"C・H”のイニシャルが入っていた。

カントレルはその金の十字架と"C・H”のイニシャル入りの上着を議長の前に提出した。
「アパッチがクリス・ハブルを殺したときに奪ったものです」 カントレルは続けて自分の考えを述べた。
「ラトレッジ被告はダブニー少佐の宿舎に入りました。それはアパッチの襲撃を報告するためです。だが、宿舎で彼が見たものはルーシーの裸の死体だ。彼は見かねて死体に布をかけようとした、その時、少佐が来た。・・・怒り狂った少佐は被告人に発砲し重症を負わせた。被告人は命を守るためやむを得ず銃を抜き少佐を殺害した。これは正当防衛であり、弁護側はあくまで無実だと主張する!」
カントレルは続けた。
「この物証により、ルーシー殺害の犯人は"C・H”すなわち雑貨屋の息子クリス・ハブルだ!」

検察官シャタック大尉は立ち上がった。
「弁護人が導いた結論は残忍かつ卑劣極まりない・・・息子の不慮の死を嘆くハブル氏の面前で被告の罪をそのご子息になすりつけた!たかが黒人一人の命を救うために!」
「意義あり!」 カントレルはすかさず言い返す、「人間の皮膚の色が裁判の判断材料になるのなら裁かれるべきは被告人ではなく、この法廷そのものだ!」
議長 「君の被告人に対する気持ちは理解できるが、法廷を侮辱することだけは許せん・・・この十字架だが、本当にルーシーのものなのか?」

「ルーシーのものなら分かります」 声はそれまで沈黙して傍聴していた雑貨屋のハブルだった。「彼女の12歳の誕生日に私がダブニー少佐に売りました。小さな傷があるはずです、実はルーシーが見つけたのですが・・・」
議長が見ると十字架に確かに傷が付いている。
「この上着は小柄なクリスには大きすぎる」 カントレルがハブルに詰め寄った。「本当はあなたのものでは?」 ハブルがわなわなと震えだした。「洗礼名を言いなさい!」 「・・・チャンドラー・ハブル」 ハブルが答えた。"C・H"だ。
「あの時はクリスが着ていった」 「急いでいたからな!ポケットに十字架が入っているのも知らずにだ!」 カントレルがハブルを突き飛ばした。
「我慢できなかったんだ!あの若い肉体が・・・」 ハブルは完全に錯乱していた。急転直下の幕切れだった。真犯人は雑貨屋のハブルであった。

閉廷後、裏手で抱き合いキスを交わすカントレルとメアリーの脇を黒人兵たちがすがすがしい表情で通り過ぎていくのだった。
『カントレル中尉が我らのラトレッジ曹長を冤罪から救ってくれた』 彼らは第9騎兵隊員であることを誇りに思った。
映画館主から

西部劇の巨匠ジョン・フォードが放った異色編。
ドラマは法廷劇ですが、証人に立った数々の人間から語られる回想場面が物語りを繋げていくのです。広大な砂漠に奇岩が聳え立つモニュメント・バレー。インディアンと騎兵隊の戦い。西部劇特有の背景に繰り広げられる人間ドラマ。
堅苦しい法廷劇のさ中にも隙を見て議長がウィスキーを隠し飲むなど、ユーモラスな場面もさりげなく盛り込まれています。

そこに描かれるのは黒人に対する人種差別の問題です。
アラバマ物語」(’62年、監督:ロバート・マリガン、主演:グレゴリー・ペック)にも舞台は現代ですが同様の裁判が描かれています。共に冤罪なのです。アメリカという国は昔から黒人に対して差別が根強く残っている国です。国を立ち上げた当初、アフリカ当たりから大量の奴隷として黒人を移入したことを歴史から忘れ去っているのです。

騎兵隊員として功績を上げているにもかかわらず被告として裁判にかけられる黒人兵をウッディ・ストロードが演じます。
彼はカナダのプロフットボール選手からプロレスラーを経て俳優に転向した経歴が示すように、194cmの長身と抜群の運動神経の持ち主です。「バッファロー大隊」での準主役に抜擢されたのを足がかりに「スパルタカス」(’60年、監督:スタンリー・キューブリック、主演:カーク・ダグラス)や「プロフェッショナル」(’66年、監督:リチャード・ブルックス、主演:バート・ランカスター)などで強烈な印象を我々に焼き付けました。

透き通るような目が印象的な主演のジェフリー・ハンターは「捜索者」(’56年、主演:ジョン・ウェイン)でも起用したジョン・フォード監督をして“若き日のヘンリー・フォンダの再来”と言わしめた二枚目スターですが、「キング・オブ・キングス」(’61年、監督:ニコラス・レイ)でイエス・キリストを演じてからは急激にトーンダウンし’69年に癌のため43歳の短い生涯を閉じたのでした。


淀川長治氏の大好きだったジョン・フォード監督。
「駅馬車」も良かったけれど「バッファロー大隊」も良かったですね、
ウッディ・ストロードいいですね、それと、ジェフリー・ハンター、目がいいのね、若くして亡くなりました、惜しいですね、ハイもう時間来ました、またお会いしましょうね、サイナラ、サイナラ・・・サイナラ。

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