| アラバマ物語 1962・米 | |
![]() 製作:アラン・J・パクラ 監督:ロバート・マリガン 原作:ハーパー・リー 脚本:ホートン・フート 撮影:ラッセル・ハーラン 音楽:エルマー・バーンスタイン 出演:グレゴリーペック メリー・バダム フィリップ・アルフォード ロバート・デュバル ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 1930年代、アラバマ州の古びたメイコームの町は、貧しいが平和な町だった。 男やもめの弁護士、アティクス・フィンチ(グレゴリー・ペック)には男の子ジェム(フィリップ・アルフォード)とその妹スカウト(メリー・バダム)がおり、カルという黒人女のメイドが家の世話をしていた。 ジェムとスカウトは、夏休みに近所の家に来ているディルと友達になった。 フィンチ家の隣家は不気味な家だった。 ブーという子供を鎖で繋いであるという。ブーは身長2メートルもあり、猫やリスを捕らえて食べるし、顔に大きな傷があって、歯は黄色く、目玉が飛び出ているという。 ブーは父親の足にいきなりハサミを突き刺したことがあるらしい。 ジェムはディムにそんなブーの話を聞かせて怖がらせた。だが、自分だって怖いのだ。 そんな8月の夜、事件があった。黒人青年トムの強姦事件だ。 判事の依頼でトムの弁護をアティクス・フィンチが引き受けることになった。 ジェムとスカウト、それにディムの3人は、裁判所を覗きに行った。フィンチに詰め寄る男がいた。 「奴は俺の娘を強姦したんだぞ。奴の無罪を信じているだと?」 娘を強姦されたという、ロバート・ユーエルだった。 「弁護を頼まれたからやるだけだ」 フィンチは答えた。 そんな夜、ジェムたち3人は、隣家の庭に忍び込んだ。鎖で繋がれているというブーを見るためだ。恐る恐るジェムが窓を覗き込んでいると、どこからか大きな黒い影がジェムに近づいて来た。それに気付いた3人、必死で逃げた。金網にジェムがズボンを引っ掛け、仕方なく脱いで逃げた。 ジェムが後でズボンを取りに行くと、ズボンはきちんとたたんでそこに置いてあった。 木登りをする木に大きな穴があり、その中に時々、色んなものが入っている。壊れた懐中時計だったり、ナイフだったり、人形だったりした。ジェムとスカウトは何となくブーの仕業ではないかと思っているのだった。 スカウトが学校で男の子と喧嘩になった。父親が黒人の弁護をするといってなじられたからだ。男勝りのスカウトは男の子に馬乗りになっている。 南部では黒人蔑視が子供の世界にまで及んでいるのだった。 黒人トムが刑務所から裁判所に返された。明日、裁判だからだ。 その夜、フィンチが外で見張っていると、何台かの車で駆けつけた男たちが降りてきた。中には猟銃を持つ者もいる。 「そこをどいてくれ、トムに話がある」 男たちがフィンチに詰め寄る。 その中にジェムたち3人が割って入る。スカウトは男たちの中にカニンガムを見つけた。カニンガムは以前、フィンチに弁護で世話になったことがあるのだが、金が無いため、時々野菜などを持ってくるのだった。 「カニンガムさん、お礼なんか持ってこなくていいのよ、そのうち景気も良くなるわ。ウォルターとは学校で一緒よ、彼はいい子だわ」 カニンガム「・・・息子に伝えるよ、・・・皆、引き上げよう」 男たちは戦意を失い引き上げていった。 黒人トムの裁判の日。傍聴席は一杯で、ジェム、スカウト、ディムの3人は黒人たちでひしめく2階席へ上がった。 父親フィンチの姿がある。隣にトム。離れてロバート・ユーエルとその娘がトムを睨んでいた。 トムの裁判 保安官 「連絡を受けて駆けつけた時、メイエラの右目が殴られ、右手にも傷があった。首にも締められた後が・・・」 ロバート・ユーエル 「家の門へ入った時、娘の叫び声がした。トムが逃げるのが見えた。娘は家の中に倒れていた」 フィンチ 「ユーエルさん、娘さんの傷は保安官の言うとおりですか」 ロバート・ユーエル 「ああ、間違いない」 フィンチ 「貴方は読み書きができますか」 うなずくユーエルに紙とペンを渡す。ユーエル、左手で書き始めた。 メイエラ・ユーエル 「家の中にトムが入ってきて襲った。殴られ、首を締められた」 フィンチ 「君のお父さんは優しいかい、親子の仲は?酒を飲んで殴ったことは?」 メイエラ 「・・・殴られたことは一度もないわ」 フィンチ 「これを受けてくれ」と、トムにグラスを投げた。トム、右手で受けた。 「次は左手で・・・」 トム 「できない。12の時、綿繰り機にはさまれ、左手の筋が全部切れた」 フィンチ 「この男がどうやって貴方を強姦したんだね」とメイエラに問う。 メイエラ 「わからない。・・・とにかく、その男がやったのよ」 トム 「メイエラにいつも用事を頼まれるので、その夜も家の中に入ると、抱きついてきてキスしようとした。その時、お父さんが帰ってきた。逃げたので後は知らない」 トムは、涙を流しながら無実を訴えた。 フィンチは、陪審員たちに向かって言った。メイエラは、白人が黒人を誘惑した罪を消し去ろうと嘘の証言をし、トムを遠ざけようとしている。トムは、白人の娘に同情して仕事を手伝っただけだ、と。トムは無実で、真犯人は別にいる、と。 休廷後の陪審の評決は、「罪状どうり有罪です」 という残酷なものだった。 トムはうな垂れ、フィンチはやるせない思いだった。2階席の黒人たちは失望し、沈黙した。3人の子供たちも言葉がない。 手錠を嵌められ退廷するトムにフィンチが声を掛けた。「上訴するから気を落とすな」 その後、家へ帰ったフィンチのもとへ保安官がやって来た。 保安官の話を聞いているフィンチの肩が落ちた。保安官が立ち去った後、フィンチが言った。 「・・・トムが死んだ。刑務所へ護送される途中、トムが逃亡した。半狂乱だったそうだ。保安官の威嚇した弾が当たって死んだ」 トムの家へ悲しい知らせに行かねばならない。ジェムも車に同乗した。 トムの母親は訃報を聞き、卒倒した。 そこへ、ロバート・ユーエルが酒にふらつきやって来た。表情が憎しみに満ちている。フィンチの顔に唾を吐きかけた。フィンチ、黙って唾を拭くとジェムと車で去るのだった。 ハロウィンの夜のことだった。ハムの姿に化けたスカウトと紳士のジェムが暗い林の中を歩いていた。「音がする」 誰かが付けてくる。突然、ジェムが何者かに襲われた。スカウトがハムの中から見ていると、別の何者かが現れて争っている。 大男がジェムを抱きかかえ歩いて行く。スカウトは追いかけた。 フィンチの家のベッドにジェムが寝ていた。フィンチの他に保安官もいた。 「ユーエルの胸に包丁が刺さり死んでいた」 保安官が言った。 その時、スカウトはドアの陰に見たのだ。スカウトの顔が輝く。 「・・・ブーなの?」 男は陰から顔を出した。ブー(ロバート・デュバル)はやがてスカウトに微笑みかけた。 保安官は言う。「ユーエルは、包丁の上に倒れて死んだ。無実の黒人を殺した男が死んだのだ。・・・そっとしておこう」 スカウトはフィンチに言った。「保安官が正しいわ」 「どうして?」と、フィンチ。 「だって、マネシツグミを撃つのはいけないんでしょ?」 フィンチがブーに手を差し出した。「有難う、子供が助かった」 スカウト、ブーと寄り添って歩く。“隣人”を送っていくのだ。 “ブーがくれたのは、人形や、壊れた懐中時計やナイフ、そして命だった。相手の身になって考えろとパパが言った、その意味がやっとわかった。 いつまでも思い出に残るジェム、ディル、ブー、そしてアティクス。一晩中、見守っているだろう、ジェムが目覚めるまで・・・” |
| 映画館主から ハーパー・リーのピューリッアー賞受賞小説「ものまね鳥を殺すには」の映画化で、監督は、社会派のロバート・マリガン。彼の最高傑作です。 彼は’69年にも「レッド・ムーン」という異色西部劇でグレゴリー・ペックと組んでいます。 アラバマ州の片田舎で起こった出来事を少女スカウトの回想形式で綴ったノスタルジックな作品です。 物語は黒人トムの裁判と、隣家の引きこもり青年ブーの話が平行して進みます。3人の子供の冒険は、「トム・ソーヤの冒険」を彷彿させます。 幽霊屋敷のようなブーの家に忍び込むシーンは、ハラハラしますし、何故か懐かしい気がします。 トムの事件を通して描く黒人差別という深刻な問題を、マリガンは子供の視点で淡々と語り、手を振りかざしてはいません。 正義感のある子供に尊敬される父親像、弁護士アティクス・フィンチを演じたグレゴリー・ペックは、感情を押さえた最高の演技で、アカデミー主演男優賞を獲得しています。 ただ立っているだけの役者と酷評されたこともある“偉大なる大根役者”の、清潔で生真面目な彼そのままの姿が、モノクロの引き締まった画面にありました。(グレゴリー・ペック参照) 精神異常者ブーを演じたのは、これがデビュー作のロバート・デュバル。31歳です。本作では台詞が一言もありません。後に「ゴッドファーザー」(’72年)や、「地獄の黙示録」(’79年)で活躍する、彼の少女スカウトを見つめる不思議な眼差しはただものではありません。 ちなみに、男勝りの少女スカウトを演じたメリー・バダムは、「サタディ・ナイト・フィーバー」(’77年)や「ドラキュラ」(’79年)のジョン・バダム監督の妹だそうです。 本作は、アカデミー主演男優賞のほか、脚本賞、黒白美術賞も受賞しています。 |
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