漢字を取巻く環境
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2001/04/22 追加・修正
(2000/04/09 公表)
此処では、漢字の字体を始めとする漢字を取巻く環境について言及して行かうかと思ひます。漢字には長い歴史がある為、色々な区分があると云ふ事を理解して頂ければ、有難いです。
- 漢字の字体
- 漢字の書体
- 漢字の音訓
- 電脳における漢字
- 漢字から派生した文字
漢字の字体違ひとは、同じ意味で同じ音を持つ違つた形をした漢字の事を云ひます。夫々群を持つてゐますので、文字によつては群が重なる場合も有ります。
- 正字
- 正しい漢字の事を云ふ。時の政府が制定した用ゐるべき漢字の字体。例 > 寶/宝
- 本字
- ある漢字の元となつた漢字。
- 俗字
- 世間一般で用ゐられてゐる字体。伝統的楷書である場合が多い。例 > 寳
- 略字
- 正字を省略した字体。劃数が少い字体。例 > 宝
- 古字
- 現在では用ゐられない昔の字体。則天文字等。
- 異体字
- 正字に相対する、本字・俗字・略字・古字等を総称してかう呼ぶ。例 > 寳・宝
- 誤字
- 正字とも異体字とも呼べない誤つた字体。
- 康煕字典体
- 清朝の頃の支那で作成された康煕字典で表示された代表的な字体。例 > 寶
- 伝統的楷書
- 康煕字典以前に使用されてゐた一般的な楷書体。例 > 寳
- 当用漢字
- 日本で始めて定められた用ゐなければならない漢字の群。例 > 宝
- 常用漢字
- 当用漢字の流れを汲むが、飽く迄目安とされる漢字の群。例 > 宝
- 教育漢字
- 日本の小学校で覚えなければならないとされる漢字の群。例 > 宝
- 人名漢字
- 日本で人名に使用しても構はないとされてゐる漢字の群。旧字体を含む。例 > 宝・寶
- 旧字体
- 当用漢字・常用漢字で除外された、其れ迄正字とされてゐた字体。例 > 寶
- 新字体
- 当用漢字・常用漢字で新たに加へられた正字に代はる字体。例 > 宝
- 表外字
- 当用漢字・常用漢字の範囲から漏れた使用頻度が少いと思しき漢字。例 > 寶・寳
- 朝日略字
- 当用漢字や常用漢字の新字体での省略方法を表外字に迄押し広げた字体。
- 繁体字
- 現台湾で使用されてゐる漢字。韓国も漢字は此方を使用。例 > 寶
- 簡体字
- 現中華人民共和国で使用されてゐる省略された漢字。例 > 宝
- 国字
- 支那では用ゐられてゐない日本独自の漢字。支那に逆輸入された漢字。
参考:古銭用語で、[寶]は缶寶、[寳]は尓寳、[宝]は玉宝と、夫々呼んでゐます。
漢字の書体は、此れ迄、歴史的又は用途的に色々と変化して来ました。字体と書体を合せて字形と呼ぶ事が有ります。
- 甲骨文
- 支那の殷の時代に使用されてゐたと云ふ亀の甲羅に書かれた書体。
- 金文
- 支那において甲骨文の後の時代に使用されてゐたとされる書体。
- 大篆
- 極古い時期の篆書の書体。籀文とも云ふ。
- 小篆
- 比較的後の時期の篆書の書体。
- 印篆
- 特に印章で用ゐられた篆書の書体。現在でも篆刻等で多用されてゐる。
- 篆書
- 大篆・小篆・印篆等を総称してかう云ふ。
- 隷書
- 篆書から派生した、初期の毛書体。
- 楷書
- 毛書に最も適した書体。毛書の基本型。
- 行書
- 楷書を多少崩した書体。
- 草書
- 楷書又は隷書をかなり崩した書体。
- 明朝体
- 印刷に適してゐるとされる横線より縦線のはうが太い書体。基本は康煕字典体。
- ゴシック体
- 太線と横線が均一な太さの印刷用の書体。基本は康煕字典体。
- 教科書体
- 日本の教科書に用ゐられてゐる楷書と同等の印刷書体。
- 毛書体
- 毛筆等で書かれる書体。隷・楷・行・草の各書体。
- 硬筆体
- ペン・鉛筆等で書かれる書体。楷書を基本とする。
日本の仮名遣ひがさうであるやうに、漢字の音訓も時代や地域によつて遷り変つて来ました。
- 呉音
- 漢字が始めて渡つて来た頃の漢字の音。仏教経典を読む時の漢字の音。
- 漢音
- 遣唐使等が輸入した漢字の音。
- 唐音
- 行燈・提灯・行脚、等比較的新しい時期に輸入された漢字の音。
- 慣用音
- 正規の音ではないが、国内では用ゐる事が慣習とされてゐる音。
- 音
- 呉音・漢音・唐音を総称してかう呼ぶ。
- 中古音
- 韻鏡等の資料により確定出来た唐の時代の漢字音。
- 北京語
- 北京を中心とする北支で使用されてゐる支那語。
- 広東語
- 広東を中心とする中支で使用されてゐる支那語。
- 朝鮮漢字音
- 韓国等朝鮮半島地域で用ゐられてゐる漢字音。
- 訓
- 漢字の意味を端的に示した読み。日本や韓国に存在する。
- 国訓
- 支那の字典にはあるが、日本では独自の意味が附されてゐる漢字の訓。
- 地方訓
- 国訓の一部で一地方で行はれる訓。地名の使用例が多い。
- 義
- 漢字其のものの意味。
歴史こそ浅いのですが、地域や何等かの意図によつて色々と変化してゐる様子が判ります。
- JIS基本漢字
- JIS規格で制定された日本の漢字コード。
- シフトJIS
- マイクロソフト社が独自に制定した電脳内部処理用漢字コード。
- EUC
- 主にUNIXワークステーションで利用されてゐる漢字コード。
- 区点
- 94x94の範囲内で何行目・何列で表す事の出来る漢字コード。
- 第1水準
- 日本で使用頻度が高いとされた2965字の漢字。
- 第2水準
- 日本で使用頻度が低いとされた3383字の漢字。
- 外字
- 漢字コードに搭載されてゐない漢字等を特殊な方法で登録出来る。
- 幽霊漢字
- 椦妛彁
- 拡張新字体
- 常用漢字の表外字について、常用漢字の書体に則つた形に省略した字体。
- 83JIS
- 字体変更・書体変更が行はれたと云ふ現在も語継がれる珍事件。
- 拡張文字
- IBMやNECで選定した、特定のOSに依存した漢字コード。
- 半角カナ
- インターネット上で忌み嫌はれてゐる特定のOSに依存した文字コード。
- GB基本漢字
- 中華人民共和国で制定された漢字コード。
- CNS台湾漢字
- 台湾で制定された漢字コード。
- KS基本漢字ハングル
- 韓国で制定された漢字・諺文コード。
- ユニコード
- 世界の文字を全て搭載しようと云ふ理念の基に、
日本・支那・韓国等の漢字を統一の漢字コードで示さうとする試み。
漢字の精神は其の周辺の諸国でも受継がれ、自己のものとして発展させて行きました。
- 平がな
- 現在和語を書き写す為に使用されてゐる表音文字の一種。
- 片カナ
- 現在外来語を書き写す為に使用されてゐる表音文字の一種。
- 変体仮名
- 標準的な仮名とは違ふ形をした仮名文字。明治頃迄使用されてゐた。
- 万葉仮名
- 万葉集・古事記・日本書紀に使用された仮名文字。
- 仮名
- 平がな・片カナ・変体仮名等を総称して云ふ。
- 真名
- 仮名に対して漢字を其の義を含めた形で使用する場合、かう云ふ。
- 吏読
- 漢字を朝鮮語の宛字として使用した文章。
- 諺文
- 朝鮮半島地域で使用されてゐる線と円を組合せた表音文字。ハングル。
- 字喃
- 安南(現越南)で使用されてゐた漢字を合成した文字。
- 女真文字
- 女真族(満洲地方の民族)が使用してゐた漢字を模倣した文字。
- 西夏文字
- 支那西北部にあつた西夏で使用されてゐた表音文字に義を含めた文字。
- 蕃字
- 支那が、周辺諸国で使用してゐる漢字以外の文字を表現する時かう云ふ。
- 宛字
- 諸外国で使用してゐる漢字以外の文字を使用した言語を漢字で表現する事。
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