候文について

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2001/04/22 修正 (2000/02/29 公表)

候文は、文章の随所に「」の文字を使用した、或る種改つた形態の文語体の文章を云ひます。

候文は、鎌倉時代にはほぼ成立し、江戸時代には公用文にも使用されてゐました。明治以後学校教育でも教へられましたが、現在では殆ど用ゐられる事がなくなつて仕舞つたほぼ死語に近い文体の一つです。

室町時代の初期に手紙文の作法書『庭訓往来(ていきんわうらい)』が書かれ、以後この種の書物の模範となりました。尤も、庭訓往来は、単に過去実際に交された候文書簡を集めて一冊の本にした程度のものにしか過ぎません。

候文には、過去形と終止形の区別がありません。読手が文章の全体を把握した上で、個々の「候」の部分が過去か終止なのかを判断するしかなささうです。

下記に其の概要を示しておきます。

候文の概要

歴史的仮名遣ひ
<ハ行四段>さうらふ (さぶらふ→さむらふ→さうらふ、と変化した模様)
候文としての意味
<補助動詞>「です・ます」と同等の叮嚀語。
古文としての意味
  1. <四段自>目上の人のそばに控へる。伺候する。仕へる。侍る。
  2. <四段自>「あり・をり・行く・来る」の謙譲語。あります。をります。参ります。
  3. <四段自>「あり・をり」の叮嚀語。ございます。
  4. <補助動詞>補助動詞「ある」の聞き手に対する叮嚀語。…(で)あります。
使用する場面
手紙・書簡・公文書・願書・届書など
活用
「候はば・候へば・候共(さうらへども)」など有るが、基本的には活用無し。

資料

●下記資料にて種別強調の項目有之、然らば通常より強調されたる敬語と相成候。

候文単語輯
種別 歴史的仮名遣ひ 文語候文 似非漢語候文
叮嚀語 ます
叮嚀語 あります これあり候 有之候
叮嚀語 ありません これなく候 無之候
謙譲語 ございます 御座候 御座候
謙譲語 ございません 御座なく候 無御座候
謙譲語 いたします 致し候
謙譲語 いたします 仕り候 仕候
謙譲語 いたしません 致さず候 不致候
謙譲語 いたしません 仕らず候 不仕候
謙譲語 してをります 致し居り候 致居候
謙譲語 したいと思ひます 致したく存じ候 致度存候
謙譲語 しないつもりです 致すまじく候 致間敷候
尊敬語 なさつてください 成し下さるべく候 可被成下候
叮嚀語 なります 相成り候
謙譲語 なります 相成り申し候 相成申候
叮嚀語 なるでせう 相成るべく候 可相成候
叮嚀語 願ひます 願ひ候 相願候
謙譲語 まうします 申し候 申候
謙譲語 まうしあげます 申し上げ候 申上候
叮嚀語 …ますが 候へども 候共(候得共)
叮嚀語 …ますが 候ところ 候処(候所)
叮嚀語 …ますならば 候はば
叮嚀語 …ますので 候へば
叮嚀語 …ますので 候に付き
叮嚀語 …ますので 候あひだ 候間
叮嚀語 …ますさうで 候よし 候由
叮嚀語 …とのことで 候よし 候由
叮嚀語 …ませうか 候や 候哉

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