候文の実例

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2001/04/22 修正 (2000/03/18 公表)

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手紙文の文例輯

サトウ ハチロー、「年賀状」

出すのは大いに面倒だが、もらうと結構うれしいのが、年賀状だ。この習慣は江戸後期にはすでに行われていたらしく、随筆集『玉勝間(たまかつま)』で知られる国学者本居宣長は、「新歳之御慶御同前萬福目出度申納候」で始まる年賀状を書いているし、史書『日本外史』を著した頼山陽は、「新歳之慶千里同風、目出度申納め候。先以て益々御機嫌能く御超歳遊ばせられし御儀と遥想恭祝仕候」から始まる長文の年賀状を出している。

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

尾崎紅葉、「出産祝い」

女子御出産の趣、大賀の儀に存じ候。固より天の賜う所、何ぞ雌雄に因りて喜びの大小を為すべき。母子共に健全ならば、即ち大慶たるべきに御座候。

男子を望まれしにの女子を得られ候なれば、雄子とも御名け可被成候。の上は半打迄女子にてその余は皆男子とように御祈念被成候はいかに……

熱気有りて外出難相成候故、其内に参上御賀び可申候。炎暑の際、御産婦の身体並に、令嬢御大事に懸けられ度候。草々拝具

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

幸田露伴、「贈答にそえる手紙」

拝啓 昨日は御清閑を御妨げ申し、恐縮に存じ申候。

……つまらぬものに候へども、伊豆の仁科海苔御笑草までに差上候。

敢て御膳に上すやうの品には無之候へども、少しは焦げ過ぎるほどに御焙りなされ候て、之を御もみに相成り、さつと熱湯を滴らし、醤油を御加なされ、これを練りて後召上るとも、又は御焙りなされ候てお揉みになつたる後、三杯酢などにてあがるもよろしき由、伊豆人の伝に候まま申し上げ候……

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

正岡子規

啓 一真一偽、一驚一喜、とうとう本ものときまりて御入院まで相済めば、とにかく安心致し候。たゞの上は気長くご養生さるべく候。不自由なことがあれば、御申し越し下さるべく候。

一月二十五日夜

子規

碧梧桐詞伯床下

寒かろう人に逢いたかろう

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

松尾芭蕉、「見舞いの手紙」

池魚の災承り、我も甲斐の山ざとにひきうつり、さまゝゝ苦労いたし候へば、御難儀の程察申。されども「やけにけり」の御秀作、かゝるときに望、大丈夫感心。去来・丈草も御作驚申斗に御ざ候。名哥を命にかへたる古人も候へば、かゝる名句に御替被成候へばさのみおしかるまじくと存候……

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

北原白秋、「結婚通知」

真間の消息   第一信。四月十八日。

白秋およめさまをもらい嬉しくてたまらず候。然るところ、この度の新居は真間の手児奈の跡どころに風致極めてよろしく、きのうきょうは雨の中に雀のこえ幽かに明るくきこえ居り候。毎朝手児奈の汲みし井の水にて顔を洗い、飯をかしぎ、庭に出でては古池の「片葉の葦」をながめ居り候。玉の如き女性の浮びたる池なれば、使いすての水ながしがたく、遠くに行きて棄て居り候。これより私もいよいよ落ちつき、歌もよくなる事と存じ候。白秋は飽迄も貴族の品位を失いがたく候。

草々敬白

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

夏目漱石、「推薦の手紙」

拝啓 其後は失礼申上候。偖、小生小説「帰つてから」と申す分済次第、あとのを掲載せねばならず候。然るに、先般小生方へ二つの作を見てくれと頼み来候。いずれも面白く無名の文士を紹介する積にて、朝日に掲載しても毫も恥かしき事無之、しかも其のうちの一篇は、文学士中勘助と申す男の作りしものにて、彼の八九歳頃の追立記と申すようなものにて、珍らしさと品格の具わりたる文章と、夫から純粋な書き振とにて、優に朝日で紹介してやる価値ありと信じ候……

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

福沢諭吉、「招待状」

さて明日は拙宅の娘共素人音楽会を催すとて友達を集め、午後二時半頃より琴、三味線を弄び候よし、面白くも何とも有之まじく候へども、編集局の諸彦申合御出相願度、尤も休日の義、外にも御約束もあらば強いて不申上、ご都合に任せ候事に御座候。……不一

十月二十二日

諭吉

編集局皆様

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

石川啄木、「依頼の手紙」

本月太陽へ送りたる稿、締切おくれて新年号へは間にあはぬとの事、天渓より通知あり、この稿料来る一月の晦日でなくては取れず又あてにしたる時代思潮社より申訳状来り、これも違算又違算、自分丈は呑気で居ても下宿屋が困り、故家が困つては、矢張呑気で居られず、全く絶体絶命の場合と相成申候。

一月には詩集出版と、今書きつゝある小説とにて小百円は取れるつもり故、それにて御返済可致候に付、若し若し御都合よろしく候はゞ、誠に申しかね候へども、金十五円許御拝借願はれまじくや。

……御都合わるければ、その御返事丈にて満足可致候。乱筆にて御申訳なけれど、先ずは御願事迄、取急ぎ早々。

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

大石内蔵助、「断りの手紙」

の間御不音に罷過ぎ候処御手紙拝見いたし候、愈御無難の御事珍重に存じ奉り候。然れば明十一日、御茶のこと、仰せ下され候。まづまづ忝けなく存じ候。参上を以て御礼申し述ぶべく候ところ不本意に御座候へども、下拙儀も京住居成りがたく候故近々在辺に引き越し申し候。右に付、何かと用事多く、持参申すまじく候間御免下さるべく候。右御報ながら御礼かたがたの如く御座候。

……牡丹二三種其の元へ御引きとり下さるべく候、明後日からにても御勝手に御人、遣はされるべく候。

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

●特別編● 野口シカ、「懇願の手紙」

おまイの しせには みなたまけました わたくしもよろこんでをりまする なかたのかんのんさまに さまに ねんよこもりをいたしました

……はるになるト みんなほかいドに いてしまいます わたしも こころぼそくありまする ドかはやく きてくだされ かねを もろた こトたれにもきかせません それをきかせるト みなのれて しまいますはやくきてくたされ はやくきてくたされ はやくきてくたされ いしよのたのみて ありまする にしさむいてわ おかみ ひかしさむいてわおかみ しております きたさむいてわおかみおります みなみたむいてはおかんておりまする

……はやくきてくたされ いつくるとおせてくたされ このへんちちまちてをりまする ねてもねむられません

『文豪・名文家に習う手紙の書き方(こころに響く50の書簡)』より抜粋

「柳田國男より折口信夫宛ての葉書」

先日は御新作の書御贈被下御芳志御礼申上候 細々と拝読感動仕候 何かの折に意見も申出度存居候 後世より回顧すべき新様式の初顕と存居候 羽黒祭文黒百合姫 本にいたし候に付一冊御目にかけ候 是に付何か御心にうかび候こと有之候 はゞ是非御書き付け御見せ被下度候 記念事業につき御骨折の事有がたく候 (『定本柳田國男集』より)

手紙の書き方を説明する書籍より抜粋

公文書の文例輯

改印届

(用紙は半紙)

通帳記號番號    何々何番

○印 (鮮明に押すへし)

拙者所持ノ印章右印鑑ノ通改印致候此段及御届候也

明治何年何月何日

何府県何市郡何町村何番地

何 某 ○印

郵便爲替貯金管理所長殿

『郵便貯金通帳、預け人心得』明治四十年一月印刷局製より抜粋

轉居届

(用紙は半紙)

通帳記號番號    何々何番

拙者今般肩書ノ地ニ轉居致候此段及御届候也

明治何年何月何日

何府県何市郡何町村何番地

何 某 ○印

郵便爲替貯金管理所長殿

『郵便貯金通帳、預け人心得』明治四十年一月印刷局製より抜粋

辞書に掲載された文例輯

辞書辞典記載の用例より抜粋

【間】
御送り候間御受納被下度候岩波国語辞典
【所・処】
拝見仕り候処、お見事なる御作品にて岩波国語辞典
【候文】
云云にて候間、如此にて候」御機嫌よく候哉」申上げまゐらせ候大言海
【候文】
大慶至極に奉存候日本語大辞典

関聯頁