歴史的仮名遣ひの文例

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2000/01/12 修正 (1999/07/19 作成)

「現代假名遣い」との比較による歴史的假名遣ひの使用例。

歴史的假名遣ひは、日本の傳統的文學資産で用ゐられてゐる假名遣ひの末裔であると考へます。歴史的假名遣ひを理解する事で、日本の傳統を色々な角度から知る事ができると思ひます。

例文

この例文は、ペトロニウス作『サテュリコン』、「トリマルキオンの饗宴」より拔粹します。

「現代假名遣い」の例

ところが壊れないガラスの大盃を作った職人がいた。そこで皇帝から謁見を許されると、その贈物をもって……

それから皇帝からそれを返してもらうと、床の上に落とした。おそらくこのときほど皇帝がたまげたことはなかったろうよ。彼はその大盃を床から拾いあげた。まるで青銅器のようにへこんでいた。それから彼は懐から小さな金槌を取り出し、おちつきはらってその大盃の形をうまくなおした。

これが終わると、彼はまるでユピテル大神の玉座へ坐ったかのように得意になっていた。とくに皇帝がこう尋ねたあとだったからな。『そのようなガラス製品の作り方を知っている者が他にいるのか』と。

ところがその結果たるやどうだ。彼はいないと答えたばっかりに、皇帝はそいつの首を刎ねよと命じた。なぜか。もし製法が知れたら黄金もがらくた同然となるからさ。

歴史的假名遣ひの例

處が壞れない硝子の大盃を作つた職人がゐた。そこで皇帝から謁見を許されると、その贈物を持つて……

それから皇帝からそれを返して貰ふと、牀の上に落とした。恐らくこの時ほど皇帝が魂消た事は無かつたらうよ。彼はその大盃を牀から拾ひ上げた。まるで青銅器のやうに凹んでゐた。それから彼は懷から小さな金槌を取り出し、落ち着き拂つてその大盃の形を上手く直した。

これが終はると、彼はまるでユピテル大神の玉座に坐つたかのやうに得意に成つてゐた。特に皇帝がかう尋ねた後だつたからな。『そのやうな硝子製品の作り方を知つてゐる者が他にゐるのか』と。

處がその結果たるやどうだ。彼はゐないと答へたばつかりに、皇帝はそいつの首を刎ねよと命じた。何故か。若し製法が知れたら黄金もがらくた同然と成るからさ。


漢字コードの都合により、必ずしも正漢字(所謂康煕字典體)に變換できない事はお許し下さい。

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