<第36話 エウカシとオトウカシ>

 「この先のウダ(宇陀)という地に、エウカシ(兄宇迦斯)とオトウカシ(弟
  宇迦斯)という兄弟がいるそうです」

 「そうか、では、まずヤタガラスを遣わして臣従するかどうか尋ねてみよう」

 カムヤマトイハレビコはそういって、ヤタガラスを兄弟のもとに遣わした。

 「今、天つ神の御子がおいでになったが、あなたがたはお仕え申し上げるか?」

 「私の答えは、これだ!」

 ヒョウッ

 そういってエウカシはナリカブラ(鳴鏑)の矢で遣いのヤタガラスを射て、追
 い返してしまった。

 「ふん、天つ神の御子が何だっていうんだ。よし、兵を集めて待ち伏せてやっ
  つけてやる。おい、すぐに兵を集めろ!」

 「はっ!」

 …………………………………

 「申し上げます!」

 「どうした」

 「申し訳ございませんが、兵が思うように集まりませぬ」

 「…そうか。仕方ない。では、今からこのような御殿を作るのだ」

 「かしこまりました」

 「それと、今から天つ神の御子に使者を送れ。お仕えいたしましょうと」

 兵を集めることができなかったエウカシは、御殿を作り、その中に押罠を仕掛
 けた。

 「よし、これでよし。あとは、仕えるふりをして、天の神の御子をこの御殿に
  招き入れ、このワナにはめて、殺してしまえば…」

 (兄さん、何ておそろしいことを…)

 ……………………………………

 「宇陀のオトウカシという人物が御子にお会いしたいと申しておりますが…」

 「そうか、すぐに会おう」

 そこで、オトウカシは兄のたくらみをすべて暴露してしまった。
 その話を聞いた後、ミチノオミノミコト(道臣命)とオホクメノミコト(大久
 米命)はエウカシをののしった。

 「お前が仕えるためにつくった御殿に、まずお前が入り、確かに仕えるという
  証しを見せろ!」

 「う、うむむ」

 「逃げようとしても無駄だ」
 
 「くっ、くそぉ!」
 
 そういって、ミチノオミとオオクメは矛をしごき、矢をつがえてエウカシを御
 殿に追い込んだ。

 「ぎゃっ!!」

 こうしてエウカシは自分が作ったワナに打たれて死んでしまった。

 「不埒なヤツよ。こうしてくれる!」

 そういって、エウカシの死体を引き出して斬り散らした。

 兄のたくらみを告白したオトウカシは、カムヤマトイハレビコにご馳走を献上
 した。

 <参考文献>
 岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)

 【次号予告クイズ】
 Q36.神武天皇に抵抗する土雲と呼ばれる一族をどのように討伐した?
    1.食事を持っていくふりをして、部下の兵士を料理人の服装をさせ、
      油断したところを殺害した
    2.贈り物があるといって、部下の兵を送り、油断したところを殺害し
      た
    3.降伏すると偽って、油断したところを殺害した

 答えは、次号を読めば分かります。
 次号「カシハラノミヤ」をお楽しみ〜

 戻る


 |  医食同源<体にいい食べもの>  |  週刊「孫子の兵法」  |  週刊「国宝」  |  週刊「論語」  | 
 |  織田信長一代記  |  一日一考  |  古事記物語  |  お城旅行記  |