<第38話 イスケヨリヒメ>

 「どこかに美しい女性はいないものか」

 「イハレビコ様、あなたにはアヒラヒメ(阿比良比賣)という奥方がいらっし
  ゃるではありませんか?」

 「オホクメノミコト(大久米命)よ、確かにそうではあるが…」

 「しかも、あなたには、タギシミミノミコト(多芸志美美命)とキスミミノミ
  コト(岐須美美命)という日向で生まれたお子様もいらっしゃいます」

 「まぁ、そうではあるが…」

 「…分かりました。実は、素敵な乙女がおられます」

 「何! 本当か!」

 「はい、うわさによると、この乙女は神の子だと」

 「ほぉ、それはどういうことだ」

 神の子と聞いて、さらに興味が増したイハレビコに対して、オホクメがその訳
 を話し始めた。

 「三島にセヤダタラヒメ(勢夜陀多良比賣)という美しい少女がおりました」

 「ふむ」

 「その美しさを見て、三輪のオオモノヌシノカミ(大物主神)が気に入り、そ
  の少女がクソ(大便)をするときに丹塗りの矢に変身し…」

 「なんと、それはすごいな」

 「ええ、そして、その大便をする厠(かわや)の溝を流れて、その少女の陰部
  (ほと)を突きました」

 「それはビックリしただろうな」

 「はい、少女は驚きあわてたといいます」

 「それで?」

 「その矢を持ってきて、床のそばに置くと、矢はたちまち立派な男性に変わっ
  て、少女と結婚して生まれた子が…」

 「これから会う少女というのだな」

 「はい、名はヒメタタライスケヨリヒメ(比賣多多良伊須気余理比賣)と申し
  ます」

 「その話が本当ならば、確かにこの少女は神の子ということになるな」

 ………………………………………………

 「イハレビコ様、例の娘が高佐野に野遊びにでかけたようでございます」

 「そうか、それではわしも出かけよう」

 ………………………………………………

 「あの7人のうち、どの娘かお分かりになりますか?」

 「一番最初に歩いている娘だな」

 「その通りでございます。それでは、さっそく私が声をかけてきます」

 そういってオホクメがイスケヨリヒメに近づいていった。
 しかし、入墨をしたオホクメの鋭い目を見た、イスケヨリヒメは驚いた。

 「あなたはどなたですか?」

 「私はオホクメ、イハレビコ様に仕える身。あなたをお迎えに参りました」

 「私を? なぜ?」

 「イハレビコ様のお后様になってもらうためです」

 「…分かりました。喜んで」

 こうして、イハレビコとイスケヨリヒメは結婚し、大神神社の北を流れる狭井
 川のほとりにあった、イスケヨリヒメの家で一夜をすごした。

 そして、生まれた子が、ヒコヤヰノミコト(日子八井命)、カムヤヰミミノミコ
 ト(神八井耳命)、カムヌナカハミミノミコト(神沼河耳命)である。
 
 <参考文献>
 岩波書店:古事記(倉野憲司校注)
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)

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 【キリのコメント38】

 *このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。 

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