<第47話 マトノヒメノミコト>
「ヒメたちがお着きになりました」
「すぐにこちらにお通しするのだ」
サホビメが死の間際に天皇に推薦した姫がやってきた。
「ミチノウシノミコ(美知能宇斯王)の娘、ヒバスヒメノミコト(比婆須比売
命)でございます」
「その妹のオトヒメノミコト(弟比売命)です」
(おぉ、二人ともなんと美しい!)
「その妹、ウタゴリヒメノミコト(歌凝比売命)です」
「末妹のマトノヒメノミコト(円野比売命)です」
(うっ、この二人はなんともまぁ醜い…)
4人の娘の容貌を見て、天皇は最初の2人を留めおき、後の2人を元の国に送
り返した。
「…同じ姉妹なのに、姿が醜いから帰されたということが、隣近所に知れ渡っ
たら、この上なく恥ずかしい…」
「あっ! マトノヒメ様、何をなさいますか!」
山城の国(京都府)の相楽の地で、マトノヒメは木の枝にひもをつけ、自殺し
ようとしたのを、不審に思った侍女がすんでのところで止めた。
「生きていればいいことがございます」
「…」
それから無言になったマトノヒメ。
心配する侍女たちはヒメが自殺しないように気をつけるようになった。
しかし…
「あっ!」
「ヒメ様!」
マトノヒメは、乙訓という地で、深い淵に身を投げ死んでしまった。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
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【コメント】
サホビメの推薦した、エヒメ、オトヒメですが、なんと4人いました。
これが日本書紀になると5人に増えています。
さて、このように姉妹連帯婚は、すでにニニギノミコトが経験していますね。
それにしても醜いからって送り返すのはひどいですね。
その仕打ちに対して、下の妹、マトノヒメは恥じ、深い淵に身を投げ死んでし
まいます。
物悲しい物語ですね。