<第58話 神攻皇后の新羅征討>
「船はそろいましたか」
「はっ! 皇后様、いつでも出陣可能です」
「そうですか。では、これより西の国を目指します!」
「おぉ!」
軍勢を船に乗せ、海を渡ろうとしたときに…
「皇后様! あれをご覧ください」
「ものすごい数の魚たちが近づいてくる!?」
「あっ!」
ゴン
ものすごい数の魚たちはなんと皇后を乗せた船を背負って海を渡った!
ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「すごい風」
さらに、強い追い風が盛んに吹き、一気に国の半分まで船を運んでしまった。
「皇后様、我々に恐れをなしたのか新羅(しらぎ)国の王がやってまいりまし
た」
「そうですか。こちらにお連れしなさい」
見ると確かに新羅の王はおびえた様子で皇后を見ていた。
「ここまで船でやって来られるとは驚きです。今後は天皇のご命令通りに従い、
貢物を奉りお仕えしたいと思います」
「よろしいでしょう」
そういって皇后は、持っていた杖を新羅の国王の家の前に突きたてた。
「これも全て住吉三神のお陰です。すぐに荒御魂を、国をお守りになる守護神
としてお祭りするように」
こうして、住吉の神を祭って海を渡って日本へ帰ろうとした。
「あっ! う、生まれる」
「皇后様! 大丈夫であらせられますか」
「まだ、日本には着いていないのに、御子を産むわけにはいきません。そこに
ある石をとってください」
「ははっ!」
皇后は産気づいたお腹を鎮めようと、石を取って着物の腰につけ、出産を抑え
た。
そうして、筑紫国に帰ってから御子は生まれた。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)
+++++++++++++(編集後記)++++++++++++++++
皆さん、こんにちは。
キリです。
四世紀から五世紀初頭にかけてのころ、大和朝廷が朝鮮半島に進出し、新羅を
制圧したというのは、歴史的事実だそうですが、それがこの神攻皇后の新羅征
討を説話化したものではないというのが一般的だそうです。
海原に大小の魚が船を背負ったり、追い風が吹いて新羅の国の中心までいくと
いうのは、伝説といった方がふさわしいのかもしれませんね。
破天荒な物語ということになります。
ちなみに、日本書紀も大体同じようなストーリーですが、皇后が産気付くのは、
出発前だというのが違います。
戻る