<第60話 ケヒノオオカミ>

 タケウチノスクネは、御子をつれて禊(みそぎ)を近江(滋賀)および若狭国
 (福井)を巡歴した後、越前国(福井)の敦賀に仮宮を造ってそこに住まわせ
 た。

 そのときに、御子は夢を見た。

 「…御子よ。」

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 「…御子よ」

 夢の中で一人の神が現れた。

 「あなたはどなたですか?」

 「私はイザワケノオオカミ(伊奢沙和気大神)である。私の名前と御子の御名
  を変えたいと思うがどうか?」

 「それは光栄です。仰せの通り御名をいただきたいと思います」

 「では、明日の朝、浜に行きなさい。名を変えたしるしの贈り物を差し上げま
  しょう」

 翌朝、御子が浜にでかけると、鼻の傷ついたイルカが浦いっぱいに寄り集まっ
 ていた。

 「これは、神が私に食糧の魚をくださったのだ」

 「ありがたいことです」

 「今後はイザワケノオオカミをミケツオオカミ(御食つ大神)をお呼びしよう」

 この神が今の気比大神である。
 また、傷ついたイルカの鼻の血が臭かったので、その浦を血浦と名づけたが、
 今は角鹿(つぬが)と呼んでいる。

 <参考文献>
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸) 

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