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 日本の原典〜古事記物語〜第62号2004年10月18日発行
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 <第62話 カミナガヒメ>

 あるとき応神天皇は日向の国(宮崎県)のモロガタノキミ(諸県君)の娘、カ
 ミナガヒメ(髪長比売)の容貌がみめ麗しいと聞き、側に仕えさせようと呼び
 寄せようとした。

 「どれ、父上が見初めた娘をちょっと見てみよう」

 オホサザキは少女を乗せた船が難波津に着いたと聞いて、少女を見に行った。

 「おぉ! なんと美しい!」

 少女のあまりの美しさに感動したオホサザキは、タケウチノスクネのところに
 行ってその思いをぶつけた。

 「頼む! 父上にカミナガヒメを私にくださるようにお願いしてくれ!」

 「…かしこまりました。頼んでみましょう」

 こうして、タケウチノスクネはオホサザキの願いを聞き入れ、天皇にその旨伝
 えた。

 「よかろう」

 まだ、姫を見ていない天皇は皇子の願いを快く認めた。

 「そうか! 父がお認めになったか!」

 「はい、今度の新嘗(にいなめ)祭の酒宴の際にヒメをくださるそうです」

 「その日が待ち遠しいな」

 新嘗祭の当日、天皇はヒメにお酒を受ける柏を持たせ、皇太子にお与えになっ
 た。
 そのとき天皇は歌を歌った。

 いざ子ども 野蒜(ひる)摘みに 蒜摘みに わが行く道の 香ぐはし
 花橘は 上枝(はつえ)は 鳥居枯らし 下枝(しづえ)は 人取り枯らし
 三つ栗は 中つ枝の ほつもり 赤ら嬢子(をとめ)を いざさらば
 宜らしな

 (さぁ、皆の者よ、野蒜を摘みに行こう。野蒜を摘みに行く道の、
  香りのよい花橘は、上の枝は鳥が止まって枯らし、下の枝は人が折り取って
  枯らし、中ほどの枝に蕾(つぼみ)のまま残っているその蕾のような、赤く
  つややかな少女を、さぁ、お前の妻にしたらよかろう)  

 その後に、天皇はもう一首歌を歌った。

 水溜る 依網(よさみの)池の 堰(ゐ)くい打ちが さしける知らに
 ぬなはくり 延(は)へけく知らに 我が心しぞ いや愚(をこ)にして
 今ぞ悔しき

 (依網(よさみ)の池の堰(い)の杭を打つ人が、杭を打っていたのも知らな
  いで、じゅんさいを取る人が手を伸ばしているのも知らないで、私の心はな
  んと愚かであったことか、今になってみると悔しいことだ)

 こう歌ってカミナガヒメをお与えになった。
 その少女を賜った皇太子はこう歌った。

 道の後(しり) 古波陀(こはだ)嬢子(をとめ)を 雷(かみ)のごと 
 聞こえしかども 相枕まく

 (遠い国の古波陀の少女よ、雷のようにやかましく噂されていたが、今では手
 枕をして一緒に寝ていることよ)

 また、歌っていうのは、

 道の後 古波陀嬢子は 争はず 寝しくをしぞも うるはしみ思ふ

 (遠い国の古波陀の少女は、拒むことなく素直に私と寝てくれたことをすばら
  しいと思う)

 と歌った。

 <参考文献>
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸) 

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