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日本の原典〜古事記物語〜第64号2004年11月1日発行
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<第64話 聖帝の世>
「国中に煙が見えないな」
あるとき、仁徳天皇は高山に登り、四方の国土を見ていた。
「食事を用意する炊煙が全く見えないということは、国民がみな貧しいという
ことだろう」
「左様でございます」
「よし、今より三年間、国民の税と夫役を免除するように」
「そ、そのようなことをされたら、皇居の修繕などはいかがいかすおつもりで
すか?」
「構わぬ。そのままにせよ」
こうして、三年の間、民の夫役や税を免除した結果、宮殿は破損し、ことごと
く雨漏りするようになった。
しかし、天皇は一切修理をせず、器で雨漏りを受け、雨漏りのしない場所に移
るなどして雨漏りを避けた。
そして、三年立ったある日、国内を見渡すと…
「おぉ、炊煙がいたるところに立っておるぞ」
「今や国中が豊かになった模様でございます」
「そうか、もう税と夫役を課してもよかろう」
こうして、民は豊かになり、賦役を苦しむことはなかった。
そこで、その御世を讃えて、聖(ひじり)の帝(みかど)の御世と呼んだ。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)