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 日本の原典〜古事記物語〜第71号2005年1月17日発行
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 <第71話 スミノエノナカツミコの死>

 「弟君、ミヅハワケノミコト(水歯別命)が参り、お会いしたいと申しており
  ますが…」

 「ならん、あ奴もスミノエノナカツミコと同じ心かもしれん。会わんと伝えろ」

 「かしこまりました」

 天皇の言葉を伝える家臣。

 「そうか、兄上はそのようなことを申していたか。無理はない。しかし、私に
  はそのような謀反の気持ちはありません。スミノエノナカツミコとは違うと
  もう一度お伝え願えないか」

 「かしこまりました」

 再び、ミヅハワケの言葉を伝える家臣。

 「それならば、今から難波に向かいスミノエナカツミコを殺すのだ。そうした
  ら会おうと伝えよ」

 こうして、天皇の命に従いスミノエナカツミコを征伐に行くミヅハワケ。
 
 「さて、どうしたらいいものか?」

 難波にいるスミノエナカツミコには軍勢が多い。
 どうすればうまく征伐できるのか?

 「そうだ! この手ならうまくいくだろう。すぐにスミノエナカツミコの近習、
  ソバカリ(曾婆加里)と連絡を取れ」

 「かしこまりました」

 難波に密かに使者を送り、ソバカリを呼び寄せることに無事成功したミヅハワ
 ケは、さっそくソバカリにある企てを相談した。

 「もし、お前が私の言葉に従えば私は天皇になれ、お前は大臣になることがで
  き、ともに天下を支配することができるのだが…」

 「そ、それは本当でございますか?」

 (ふん、食いついてきたな)

 「あぁ、本当だ」

 「お、仰せの通りにいたします」

 「ならば、まずはこれらの品を受け取るがよい。ほんの気持ちだ」

 「おぉ、このような見事な品々をいただけるとは!」

 (よし、大丈夫だな)

 「ならば、申し付ける。お前の主君、スミノエナカツミコを殺すのだ」

 「…分かり申した」

 こうして、ミヅハワケの命を受けたソバカリは、大臣にという破格の待遇に心
 踊り密かに難波に戻り、何食わぬ顔でスミノエナカツミコの前に姿を現した。

 「ソバカリ、お前どこに行っていたのだ?」

 「申し訳ございません。両親が病気になったと聞いたので、急ぎ家に戻ってお
  りました」

 「そうか、で、大丈夫だったのか?」

 「お陰さまで大事にはいたりませんでした」

 「それはよかったな」

 (ふふふ、いい気なものだな)

 そうこうするうちにスミノエナカツミコは厠に行こうとしているのが目に入っ
 た。

 (今がチャンスだ!)

 ミコが厠に入る前に先回りしたソバカリは、矛を持ってミコを待ち構えていた。

 ズシャッ

 「な、なぜだ…」

 突然刺されたミコは何が起こったのかすぐには理解できなかった。

 「悪く思うなよ。お前の下では大臣なんて絶対なれっこないからな」

 「き、貴様…」

 「これで俺も大臣だ!」

 こうして、スミノエナカツミコは部下に殺されてしまった。

 <参考文献>
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸) 

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