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日本の原典〜古事記物語〜第76号2005年2月28日発行
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<第76話 天皇暗殺>
「ん〜、ふぁ〜」
あるとき安康天皇は神託を受けるために神床で昼寝をしていた。
「后はいるか?」
「はい、ここにおります」
「お前には何か心配事はあるのか?」
「いえ、あなたの厚いご寵愛を受けながら、何の心配事がございましょう」
「…そうか」
「あなた、どうされたのですか?」
「私はいつも心配していることがある」
皇后と先夫である殺されたオホクサカとの子であるマヨワノミコ(目弱王)は
7歳になっており、ちょうどそのとき天皇のいる御殿の下で遊んでいた。
「マヨワノミコのことだ」
(僕のこと? なぜ父さんは僕のことが心配なの?)
「お前の子のマヨワノミコが成人したとき」
(お前の子? 僕は父さんの子ではないの?)
「私がその父オホクサカを殺したことを知ったら、心変わりをし、復讐しよう
とするのではないかとそればかり恐れている」
(僕の父はオホクサカノミコだったの! しかも、父さんに殺された? 父さ
んは父さんじゃない? 今まで父さんと思っていたのは本当の父さんを殺し
た奴だったのかっ!)
驚愕の真実を御殿の下で聞いてしまったマヨワノミコは、幼い心ながらも殺さ
れた父の復讐を誓った。
zzzzz…
(よし、寝ているな)
スラリ
「えいっ!」
ブシュッ
「ぎゃっ!」
(父さん、かたきは取ったよ!)
マヨワノミコは衝撃の事実を聞いたそのすぐ後に、天皇が昼寝をしている隙に
近くにあった太刀を抜き、天皇の首を打ち斬ってしまった。
(僕はこれからどうしたらいいの?)
天皇を殺してしまったマヨワノミコは今後のことを考えると身震いした。
(そうだ、ツブラオホミ(都夫良意富美)にかくまってもらおう)
こうして、オホクサカを殺した安康天皇はその子マヨワノミコに殺害されてし
まった。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)