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日本の原典〜古事記物語〜第77号2005年3月7日発行
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<第77話 オホハツセノミコ>
「キャーーーーーーーー」
天皇が昼寝の時間を過ぎても神床から戻らないのを心配した皇后が、天皇を起
こしに行こうと神床に向かうと、そこには頭を切り落とされた無残な天皇の死
体が横たわっていた。
「だ、誰か!」
白昼堂々と行われた天皇の暗殺。
その衝撃の出来事に朝廷は大混乱に陥ってしまった。
「一体誰が天皇を殺したのだ!」
この変事を聞いたオホハツセノミコ(大長谷王子)はまだ少年であったが、憤
り大いに怒って兄であるクロヒコノミコ(黒日子王)のところに駆け込んだ。
「兄さん、どうしよう?」
「ん? 何をだ?」
「安康天皇が人に殺されたんだよ」
「あぁ、そのことか」
「あぁ、そのことかって、何だよ、その態度は!」
「そんなどらなくてもいいだろ」
「人が天皇を殺したんだぞ! しかも、我々の兄弟ではないか!」
「そうだけど、だからって私にどうしろというのだ」
「兄さんこそその態度は何だ! どうしてそんなに頼りないのだ! 兄弟が殺
されたというのにそれほど驚きもせず、どうでもいい態度を取るのだ! 情
けない男だ!」
そういうとオホハツセは、兄クロヒコの襟首をつかんで引きずりだし、刀を抜
いて撃ち殺してしまった。
すぐさま、オホハツセはもう一人の兄、シロヒコノミコ(白日子王)のもとに
向かった。
しかし、シロヒコもクロヒコ同様それほど驚きもせず、どうでもいい態度をと
っていた。
「あなたに生きる資格はない! さぁ、こっちに来るのだ!」
「や、やめろ!」
兄弟を殺されたことに無関心なシロヒコに愛想をつかしたオホハツセは、シロ
ヒコの襟首をつかんで、小治田の地まで連れ出した。
「ゆ、許してくれ」
しかし、憤っているオホハツセは許さず、その場に大きな穴を掘り、立ったま
まの状態で埋め始めた。
「許してくれー」
腰まで埋まってしまったときに、シロヒコはあまりの恐ろしさに両方の目玉が
飛び出し死んでしまった。
そうこうするうちに、天皇を殺したのはマヨワノミコだということが判明した。
「マヨワノミコは今どこにいる?」
「ツブラオミのところでかくまっているようでございます」
「よし、すぐに軍勢を集めよ!」
こうして、オホハツセはツブラオミの邸宅を軍勢で囲んだ。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)