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日本の原典〜古事記物語〜第80号2005年4月4日発行
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<第80話 ワカクサカベノミコ>
「さて、皇后に会いに行こうか」
あるとき、雄略天皇は日下にいた皇后ワカクサカベノミコ(若日下部王)に会
いに行った。
「ん? あの堅魚木(かつを)を屋根にのせて家を造っているのは誰だ?」
「あれは、志畿のオホアガタヌシ(大県主)の家でございます」
「奴め、自分の家を天皇の宮殿に似せて造っておるのか! おい、すぐにあ奴
の家を燃やしてしまえ!」
天皇が大いに怒っていることを知ったオホアガタはすぐに天皇の前に恐れ慎ん
で深く頭を下げながら現れた。
「私は卑しい奴ですので、不遜に気付かず誤って造ってしまいましたことは、
誠に恐れ多いことでございます。お許しいただくためにも、この犬を献上い
たします」
そういって立派な白い布をかけ、鈴をつけた犬を献上した。
「そうか、ではお前の罪を許そう」
こうして、オホアガタを許した雄略天皇は、献上された犬をつれワカクサカベ
のもとに急いだ。
「これは、今日道中で手に入れた珍しいものだ。だから、これを結納の品とい
たす」
「ありがとうございます。ただ、一つ気になっていることがございます」
「それは?」
「天皇であるあなたが日に背を向けておいでになったでしょう。何だかとても
不吉なことだと思いますの」
「それもそうだな」
「ですので、私のほうから参上してお仕えしたほうがいいと思います。すぐに
私から伺います」
「分かった。そうしよう」
こうして、雄略天皇とワカクサカベノミコは結婚した。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)