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日本の原典〜古事記物語〜第83号2005年5月16日発行
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<第83話 二皇子発見>
「お亡くなりになりました」
ザワザワザワ…
雄略天皇の子、清寧天皇が崩御した。
「困ったことになったぞ」
「あぁ、誰が次の天皇になるのだ?」
「こんなことは皇室始まって依頼の一大事だ」
「どうしたものか…」
清寧天皇は皇后はおろか、子供もいなかった。
「このままでは皇室の系統が絶えてしまう…」
「すぐに天皇になるべき人を探さねば」
「しかし、皇位継承者は先代の雄略天皇自ら刃にかけてしまっておるし…」
「そうだ! イチノベノオシハワケノミコに妹がおったではないか! 彼女に
仮の天皇になっていただこう」
「それしかこの現状を打開する方法はないな…」
「よし、すぐにオシヌミノイツラメ様のご邸宅に向かおう!」
こうして、オシヌミノイツラメは葛城の角刺宮に住むようになった。
その間も正当な皇位継承者を探し続けた。
あるとき、ヲダテという者が播磨国の長官に任ぜられ、その国の住人で名をシ
ジムという者の新室完成の祝いに招かれた。
「今宵はめでたい日だ。皆の者も大いに食べて飲んでくれよ」
新室が完成したことを喜んでいるシジムは、訪れた客に対して豪勢な食事をふ
るまっていた。
「ここで舞でも舞ってもらおうか」
宴もたけなわになったときに、貴賎長幼の順に従って舞を舞った。
「これでおしまいか?」
「おや、あの者たちは?」
「あぁ、彼らは両親を亡くし、身寄りがなかったところをわしが引き取って火
焚きの役を命じているものです」
見ると、みすぼらしい格好をした二人の少年がかまどのそばで火をくべていた。
「では、あの者たちにも舞を舞ってもらおうではないか?」
「ヲダテ様がそうおっしゃるならば…、おい、お前たち舞など舞えないとは思
うが、舞ってみせなさい」
その話を聞いた少年たちはすぐには舞わず、お互いにゆずりあった。
「兄さんが先に舞ってください」
「弟よ、お前が先に舞え」
この様子を見ていた一同は笑いはやした。
「どっちでもいいから早く舞いなさい」
「…分かりました」
こうして兄から先に舞い、続いて弟が舞い始めた。
その舞はとても舞を知らない者の舞ではなく、気品漂う優雅な舞だった。
みすぼらしい二人の少年があまりにも美しい舞を踊ることに驚いたヲダテはそ
の兄弟に問いかけた。
「そなたたちは一体何者だ」
「私たちは天下をお治めになったイザホワケノ天皇の御子、イチノベノオシハ
ノミコの子孫です」
ガタンッ
この話を聞いたヲダテはあまりの驚きに床から転げ落ちてしまった。
「み、皆の者、この場からすぐに立ち去れ!」
そうして、周りにいた者どもをみな下がらせて、二人の皇子を左右の膝の上に
すえて泣き悲しんだ。
「おいたわしや。皇族にお生まれになったのにこのようなみすぼらしいお姿で
…。さぞかしご苦労なさったことでしょう。お会いできて本当によかった」
こうして正統皇位継承者を見出すことができたヲダテはすぐさま二人のために
仮宮殿を作り、そこに二人を住まわせ、大和に早馬の使者を飛ばした。
「イチノベノオシハノミコのご子孫が生きておいでになりました!」
「本当ですか? 兄さんのご子孫が…」
この知らせを心から喜んだオシヌミノイツラメは、すぐさま二人を葛城の角刺
宮に招いた。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)