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日本の原典〜古事記物語〜第84号2005年5月23日発行
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<第84話 ヲケノミコトとシビノオミ>
(おっ、かわいい子だ」
ヲケノミコト(顕宗天皇)が即位する前の出来事。
天皇が后にしようと思った少女に、シビという家臣が横恋慕した。
「俺の妻になれ」
シビはその少女の手を取り、少女を自分の妻にしようとした。
その光景を見たヲケノミコトは翌朝、オケノミコトと相談した。
「全く情けない話だ。朝廷に仕える人々は朝は朝廷に参内し、昼は家臣である
シビの家に集まっているという。これでは、どちらが王といえるのか?」
「…本当だな。どうする?」
「まだシビは寝ているだろう。これだけ朝早ければ門前にも人もいないだろう。
今しかシビを亡きものにするチャンスはない」
「よし、今すぐ軍勢を集めよう」
こうして、二人は軍勢を集め、シビの家を取り囲み、たちどころに殺してしま
った。
「これでようやく家臣におびえなくてすむ」
「そうだね。さぁ、兄さん、王位についてください」
「何をいうか、お前が王位につくのだ」
「弟の私が兄さんを差し置いて王になるなんて考えられません。ここは兄さん
が王になるべきだと思う」
「まぁ、よく聞け。播磨のシジムの家に住んでいるとき、お前が名前を明らか
にしなかったら今の我々はないと思う。これは全てお前の手柄だ。だから、
私は兄ではあるが、お前が先に天下を治めるべきだ」
「…分かりました。兄さんがそこまで考えてくれているならば、私もこれ以上
辞退は致しません。謹んでお受けいたします」
こうして、弟のヲケノミコトが先に天下を治めることになった。
これが顕宗天皇である。
<参考文献>
講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)