第47話 御所改修
「将軍の御所を改修するか」
将軍、義昭が都入りをしたはいいが、御所は荒れ果てていた。
「よし、尾張、美濃、近江、伊勢、三河、五畿内、若狭、丹後、
播磨の十五カ国の在京の者に二条の旧邸の改修を命じよ」
「かしこまりました」
永禄十二年(1569)二月二十七日午前八時、工事始めのくわ入れが行われた。
「まずは、堀を広げよ。それから、両面に石垣を高く築き上げるのだ。大工奉
行は村井民部、島田所之助、そちたちが指揮をとれ」
「はっ!」
こうして、洛中、洛外の鍛冶、大工を呼び集め、隣国、隣郷から材木を取り寄
せ、それぞれの持ち場に奉行をおいて工事の進行をはかったので、ほどなく御
所は完成した。
「うむ、見事だ」
信長は金銀できらめくように装飾されている御殿を見て満足そうだった。
「この後、泉水、遣水、築山をあしらった後、細川殿の屋敷にある藤戸石とい
う古くからある大石を庭に運ぼうと思っております」
「そうか、その仕事はわし自ら行おう」
そういって信長は、この名石、藤戸石を綾錦で包み、さまざまな花で飾り立て、
大綱を何本となく取り付け、笛、太鼓、つづみではやしたて、自ら指揮をとっ
て石を運んだ。
信長の指揮もあり、藤戸石はたちどころに庭に据えられた。
また、東山慈照寺(銀閣寺)の庭に、一年ほどおかれた九山八海と呼ばれる珍
奇な名石があったので、これも取り寄せた。
このほか、洛中、洛外の名石、名木を取り寄せて、将軍の目を楽しませようと
とりはかられた。
「この馬場には桜を植えるがいい」
「桜の馬場でござりまするな」
「あぁ、それと御所の前後左右に諸侯の屋敷を普請させるのだ。さすれば、将
軍の本拠としての威容も出てくるだろう」
「左様でござりまする」
こうして御所は無事竣工した。
「将軍様、織田殿から竣工の祝儀として、太刀と馬が献上されていおります」
「おぉ、そうか。それはすぐに礼をせねばな。こちらにお越しいただくように
お伝えしろ」
「かしこまりました」
御所に参上した信長に対して、義昭は三献の礼をとり、自らの酌で杯を授けた。
「皆のもの、こたびは長期にわたる在京での働き、礼を申すぞ。これより皆に
ひまを与える。めいめいの国に帰るがよい」
さらに、信長は皇居も荒れ果てていたので、その修理を命じた。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)