第66話 松永久秀の謀反
「今、信長は近江征伐で手一杯のはずだ。今をのぞいて領地を取り戻す機会は
ないだろう」
「うーむ、そんな簡単にいくとは思えんが」
「今、高屋にいる畠山の軍勢はわずかだ。ここで一気に戦いをしかければ、相
手は簡単に落ちるだろう。その後、そこを足場にすれば、信長もすぐには手
を出せまい」
(ふーむ、どうするか? 義継の口車に乗るのはあまりにも危険だが…)
一度は信長の軍門に下った三好党の党首、三好義継はいつも信長から独立する
日を願っていた。
そこで、かつての家臣、松永久秀に信長からの謀反を持ちかけた。
(確かに、信長は今近江で手が一杯だ。それに本願寺ともうまく手を結べれば
…)
「よかろう。この久秀ご助力いたしまする」
「おぉ、助かるぞ。すぐに兵をそろえよう」
こうして、三好義継と松永久秀はすぐさま、高屋にいる畠山昭高を攻めた。
「山口と奥田は畠山の大将、安見の居城交野城そばにとりでを築くのだ」
「ははっ」
しかし、城はなかなか落ちなかった。
「申し上げます! 三好義継、松永久秀、謀反!」
「そうか」
三好、松永謀反の報にも一向にあわてない信長。
「ふん、やつらに何ができる。すぐに兵を集めよ!」
「ははっ!」
「佐久間、柴田、森はいるかっ!」
「ここに」
「お前たちは坂井、蜂屋、斎藤、稲葉、氏家、伊賀、不破、丸毛、多賀を従え、
高屋城を救助するのだ」
「畏まって候!」
「五畿内にいる将軍たちにも後方から支援するようにとすぐに伝令を出せ!」
「はっ!」
こうして、一気に軍勢を高屋に派遣した信長に対して、まさかこれほどの勢力
が一挙に集まるとは思っていなかった三好、松永は恐怖した。
「ひ、久秀、どうする? まさか、これほどの軍勢が来るとは…」
(…うむ、あまりにも早い。これでは何もできないではないか)
「仕方ありません。一度それぞれの城に戻りましょう」
「しかし、すでに回りを囲まれているが…」
「なぁに、この激しい風雨にまぎれて逃げ出せば大丈夫でしょう。今宵すぐに
高屋から離れます」
「わ、わかった」
「久通はおるか?」
「ここに」
「わしは信貴山に向かう。お前は多門の城を守ってくれ」
「かしこまりました。では、ご無事で」
「うむ、頼んだぞ」
こうして、三好義継は若江にたてこもり、松永久秀は信貴山城に、息子の久通
は多門城にたてもこった。
その状況を聞いた信長は、5月19日に岐阜に戻った。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)