第69話 虎御前山
「虎御前山の築城滞りなく終わりましてございます」
「うむ、ご苦労。虎御前山と横山までの3里の間のつなぎとして、すぐに八相
山、宮部郷の2箇所に要害を築くのだ」
「かしこまりました」
「特に宮部郷は悪路であるから、道の幅を三間半(約6メートル)の広さに、
道の縁に敵のほうに向けて高さ一丈(約3メートル)、長さ五十町(約5
キロ)にわたる塀を築き、外側に水をせき入れ、武者が楽に出入りできる
ようにいたせ」
「ははっ! 仰せの通りに!」
その間に信長は横山に移動し、朝倉方に使者を送った。
「そなたが使者か」
「はっ! 堀九太郎と申します」
「ふむ、それで何用だ」
「主君、信長からの要望はこうです。『せっかくここまで出陣されたのだから、
日を決めて決戦いたそうではないか』というものです」
「ふむ、分かった。検討いたすので、下がって待っておれ」
「ははっ!」
しかし、朝倉からは一向に返事はなかった。
「朝倉からは何の返事もないか…」
「申し訳ございません」
「うむ、久太郎、お前が悪いわけではない。仕方ない、藤吉郎、お前は虎御前
山に留まるように」
「ははっ! して、お館様は?」
「わしは奇妙丸と横山に行く」
「どうぞご無事で」
「うむ」
こうして9月16日、信長は嫡男奇妙丸と横山に移動した。
11月3日。
「申し上げます! 浅井、朝倉両軍、虎御前山から宮部に渡り築きあげた塀を
壊そうと押し寄せました!」
「そうか、すぐに兵を出せ!」
「この藤吉郎にお任せを!」
そういうと藤吉郎は敵を追い崩してしまった。
「うむ、ご苦労」
信長が恩賞を出しているときに、その使いはやってきた…
「お館様に申し上げます! 三河の家康様から早馬が参っております!」
「うむ、何といって来た?」
「甲斐の武田信玄、兵2万を従え三河に攻めてまいった模様!」
「なんだと! して、家康は何と?」
「お館様に援軍を! とのことでございます」
こうして、徳川家の存亡を賭けた三方が原の合戦が始まった。
<参考文献>
ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)
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