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 「第1話 伍子胥伝1 〜讒言〜」
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 (おぉ、噂にたがわぬすごい美女だ。待てよ、太子ではなく、王にこのことを
  話せばもしかしたら王にお仕えできるかもしれんな。太子よりも王の仕えた
  ほうがいろいろ好都合だしな)

 急ぎ馬に飛び乗り、このことを楚の国に帰って王に伝えようとする無忌(むき)。
 彼は平王の太子、建に使える身ではあったのだが…

 「平王様、秦の王女は太子にはもったいないほどの絶世の美女でございます」

 「それは本当か?」

 「誠でございます。どうでしょうか? この絶世の姫は王がめとられたら…。
  太子には別の姫を与えればいいのでは…」

 「…そうだな。では、頼んだぞ」

 「かしこまりました。お任せください」

 こうして、太子の嫁になるはずだった姫を奪った平王。
 その姫を寵愛すること一方でなく、子の軫(しん)が生まれた。

 (さて、わしも平王に仕えることができたが、万が一王の身に何かあり太子が
  即位したら、我が身が危ない。…どうすればいいか?)

 そこで、己の保身のために、無忌は太子建の讒言を日夜王に繰り返した。
 そして、その讒言を信じた平王は、太子建の母親への寵愛をすでに失っていた
 こともあり、建をうとんじ、辺境へ赴任させた。

 それでも、不安が消えない無忌は、平王に太子の悪口を繰り返した。

 「太子は、妻をとられたことで、恨みをいだいているはずです。今、辺境の地
  に送られたのを利用し、軍を率い、外の諸侯と交わり、やがて都に戻って乱
  を起こそうと画策しているとのこと。王様におきましては、ご用心なさるほ
  うがいいと思います。」

 「ふーむ、さすがにそこまではしないだろう。しかし、伍奢(ごしゃ)の意見
  も聞いてみるか」
 
 (まずい、これは王をたきつけねば…)

 「伍奢よ、太子についてこんなうわさがあるようだが…」

 伍奢は即座に無忌が王に讒言したのだということを察した。

 「王よ、あなたはどうして、讒言小臣の言葉を信じ、骨肉の子をうとんじられ
  るのですか?」

 (しめた、伍奢よ、この場でも直言するとはバカな奴め)

 「平王様、今彼らを抑えなければ、陰謀は成功し、平王様が虜にされるでしょ
  う」

 「そうだ、伍奢よ、わしが虜になってもいいと思っているのか! すぐに伍奢 
  を捕らえよ! そして、奮陽(ふんよう)を呼べ」

 怒った平王は伍奢を捕らえ、奮陽に太子を殺すように命じた。
 
 (王は一体どうしたというのだ? これは早く太子に知らせねば)

  王から太子の殺害を命じられ、驚いた奮陽は、すぐに太子に使者を送った。

 「太子、奮陽より使者が参っております」

 「そうか、すぐに通すように」

 「平王様が太子を殺害しようとわが主君、奮陽を使者に遣わしました。太子に
  おきましては、急ぎ逃がれるようご忠告申し上げます」

 「何? それは本当か? そんなバカな」
 
 「本当でございます。どうか早くお逃げください。奮陽様の好意を無駄にしな
  いためにも」

 「…わかった。奮陽にはよろしく伝えてくれ」

 こうして、太子は宋の国に亡命した。

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