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【中国英雄伝】 第10号
「第10話 伍子胥伝10 〜伍子胥の死〜」
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「子胥様、呉王より使者が参っておりますが…」
「そうか、すぐにここへ通すように」
そこへ使者が剣を持って入ってきた。
「子胥に呉王様からの伝言を伝える。謹んで聞くように」
「かしこまりました」
「では、これを。王から授かったものです」
そういって呉王から渡された属鏤(しょくる)の剣を渡す使者。
「それでは、呉王の言葉を伝える。『きみは、この剣で自殺せよ』」
その言葉を聞いた子胥は、天を仰いで嘆いた。
「あぁ、讒臣ヒが乱を起こそうとしているのに、王はかえって私を誅しようと
している」
その言葉を使者は黙って聞いていた。
「王よ、私はあなたの父を助けて覇者とした。さらに、あなたがまだ太子では
なかったころ、諸公子が太子の位を争い、あなたが太子になる可能性はほと
んどなかった」
「……」
「そのため私はあなたのため死を賭して先王と争った。無事、太子に立つこと
ができると、あなたは私に呉の国を分けてくれようとした」
「……」
「しかし、私はそれを望みもしなかった。しかるに、いまあなたはへつらう者
の言葉を聞き、この私を殺そうとするのは何事だ!」
「……」
「おい、わしの遺言だ。よく聞くがいい」
そういって子胥は家臣に語りかけた。
「わしの墓のそばに梓(あずさ:棺材になる木)を植えよ。それで呉王の棺お
けがつくれるように!」
さらに続ける呉子胥。
「いいか、わが目をえぐって呉の東門にかけよ。越が侵入して、呉を滅ぼすの
が見られるように!」
こういい残した子胥は、自ら首をはねて死んだ。
この言葉を使者は王にそのまま報告した。
「伍子胥め、わしへのあてつけか。ええい、奴の屍(しかばね)を鴟夷(しい:
馬革制の酒袋)に入れて長江に投げ捨てよ!」
こうして、呉の国の忠臣、伍子胥が長江に投げ捨てられたのを見た呉人は、彼
をあわれみ、祠を長江のそばに建て、名づけて胥山と言った。
その後、子胥を誅した呉王は斉を討ったが、かえって敗れ、兵を引いた。
その後も北の地をうかがい続けた呉王は、その留守を越に襲われ、太子を殺さ
れ、兵は虐殺された。
この知らせを聞いた呉王は急ぎ国に帰り、越王句践に貢物を献上し、なんとか
和睦した。
しかし、その9年後、越王句践はついに呉を滅ぼし、王夫差を殺し、太宰ヒを
誅した。
その罪は、彼が主君に不忠で、国外から莫大な賄賂を受け、自分(越王句践)
に内通していたからである、というものだった。
●参考文献:「史記」筑摩世界文学大系7 小竹文夫 小竹武夫訳