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「第2話 伍子胥伝2 〜伍子胥逃亡〜」
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「平王様に申し上げます」
「何だ」
「伍奢には、2人の子がありまして、2人とも賢いとのもっぱらの噂。彼らも
殺さなければ、やがて楚の国のわざわいのもとになるでしょう」
「では、どうすればいいのだ」
「父親を人質にし、2人を呼びつけるのです。そうしなければ、楚のうれいに
なるでしょう」
「うむ、分かった。伍奢よ、無忌のいったように、今すぐ2人の息子を呼び寄
せるのだ。そうすれば、お前の命は助けよう。呼ばなければ、お前の命はな
いぞ」
「兄の尚(しょう)は、生まれつき情愛にもろいので、呼べば必ず来るでしょ
う。しかし、弟の員(うん)は、生まれつき強情で、恥を忍び、大事をなす
男です。来ればともども虜にされると思い、きっと来ないでしょう」
「ふん、そんなことはあるまい。すぐに2人にこう伝えるのだ。来れば助ける
が、来なければ、お前たちの父親を殺すと」
こうして、伍尚、伍員(子胥のこと)兄弟のもとに平王からの使者がやってき
た。
「かしこまりました。すぐにうかがいます」
「兄さん、なぜ、こんな命令に応じようとするんだ! 平王が我々を呼び寄せ
るのは、父を生かそうとするものではなく、我らがここで逃げ出せば、後々
楚の国の禍になるのを恐れ、父を人質にとっていつわりの命令を出したのだ」
「…」
「我ら2人がゆけば、父子ともども殺され、父の命の何の足しにもならない。
行けば、あだを報いられるようなものだ。」
「…」
「だから、いっそのこと他国に逃れ、その力をかりて、父の恥をすすぐほうが
ましだ。ともに滅びてしまっては全くの無駄だ」
「…行ったところで、所詮父の命が助からないことは私も分かっている」
「だったら、なぜ応じるのだ?」
「しかし、父が私を呼び、生きながらえようとしているのに行きもせず、その
上、後日、恥をそそげないようなことがあったら、それこそ天下の笑いもの
である。私はそれだけが気がかりなのだ。」
「確かにそうだが…」
「員よ、お前は逃げるといい。お前は父を殺したあだに報いることができるだ
ろう。私は死地に赴こう」
「兄さん…」
こうして兄の尚は縛についたが、使者が子胥を捕らえようとすると、子胥は弓
をつがえ、弓を引き絞って立ち向かい、使者がたじろぐ間に逃げ出した。
そして、太子建が宋にいると聞き、宋に向かい従った。
「そうですか、員は逃亡しましたか。楚国の君臣たちよ、これであなた方はゆ
くゆく兵難に苦しむことだろう」
尚が楚につれられてくると、平王は奢と尚を2人とも殺した。