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 【中国英雄伝】 創刊号 2004年8月4日発行      
 「第9話 伍子胥伝9 〜讒言〜」
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 「呉王様に申し上げたいことがございます」

 「なんだ」

 「子胥のことでございます」

 太宰ひは以前から子胥と仲が悪く、王に日夜讒言を繰り返していた。

 「子胥はその性質は剛情かつ乱暴で、猜疑心・毒害心の強い男でございます」

 「……」

 「先年も王が斉を討とうとされた際、子胥はとめたのに、王は思い切って斉を
  討たれ、大功をたてられました」

 「そうだったな」
  
 「しかし、子胥は王の勝利を喜ぶのではなく、自分のはかりごとが用いられな
  かったことを恥じ、かえって王を恨みました」

 「それはまことか!?」

 「本当でございます。その証拠に、このたびも王がまた斉を討とうとされると、
  子胥だけが王の思し召しに逆らって強諫し、私たちなどをそしりました」

 「そうだったのか」

 「これなどは、呉の国が負けてもかまわず、ただ自分のはかりごとさえ通れば
  いいという自分勝手な考えでございます」

 「それはそうだな」

 「さらに、今、王が自ら国中の武力をあげ、斉を討たれようとしているのに、
  子胥は自分のはかりごとが用いられないからといって、従軍を辞退し、病と
  いつわって随行さえしようといたしません」

 「……」

 「王におかれましては、ご用心なさいませ。いつわざわいが起こるかわかりま
  せん」

 「それはどういうことだ?」

 「…実は、私がひそかに人にさぐらせたところ、子胥が使者として斉に行った
  とき、我が子を斉の鮑氏にたくした事実がございます」

 「それは本当か! …子胥の奴!」

 「王のお怒りもごもっともでございます。いったい臣下として、内に我が意を
  得ないからといって、外に諸侯を頼り、また、自ら先王(闔盧)の謀臣を任
  じながら、いま用いられないからといって、常に怏々(おうおう)として楽
  しまず、王を恨むなど言語道断でございます」

 「……」

 「王に置かれましては、早急なご処置が必要かと存じますが…」

 「…そなたの忠告がなくても、わしも、また子胥を疑っていたところだ。」

 そういって呉王夫差は、属鏤(しょくる)の剣を手に取り、使者に手渡した。

 「この剣を持って、伍子胥の元に行き、こう告げよ。『この剣で自害せよ』と」
 
 ●参考文献:「史記」筑摩世界文学大系7 小竹文夫 小竹武夫訳

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