隅田川の橋梁群と両岸の下町地域 登録運動の有無:なし 登録の可能性評価:★(低) 所在地:東京都中央区、台東区、江東区、墨田区ほか |
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【世界遺産に登録できるか?】 日本の首都・東京には国内で最も多くの近代建築が残り、 昭和建築として初めて重要文化財になった「明治生命館」、 あるいは現在のところ重文建築として最も築造年が若い「国立西洋美術館本館」(昭和34年築)などの存在が、 その質の高さを教えてくれます。 東京の中心を流れる隅田川は、 ご存知のとおり江戸時代から多くの文学・絵画作品の題材となり、 歴史上の重要性はあえてふれるまでもないでしょう。 その隅田川の現代の景観を決定づけるのが橋です。 隅田川は「橋の博物館」とも呼ばれるように、 様々なタイプの長大橋が架かっています。 この景観は関東大震災後、 大正末期から昭和初期にかけての震災復興期に形成されました。 当時、復興は橋から行うことが計画され、 景観に配慮した橋が次々に架けられたのです。 加えて隅田川の両岸の運河には、 石橋、コンクリート橋、鉄橋などデザイン性の豊かな小さな橋が無数に架けられ、 東京が水の都であることを実感させます。 これらは近代建築の町・東京のなかでも、 最も素晴らしい一連の作品群と見なせると思います。 隅田川に架けられた「復興橋」は一つだけ架け替えられたものの(相生橋)、 残りはすべて現存します。 しかし両岸に作られた小さな復興橋は、 残念ながらすでに多くが解体・架替されています。 また隅田川には高度経済成長期に高速道路なども架けられ、 復興期に構想された橋と川と両岸の景観のバランスが崩れてしまっています。 ところで隅田川が世界遺産になれるかということについてですが、 正直いって可能性はほとんどありません。 理由は景観が悪すぎることと、 復興計画から100年もすぎていないのに、現存する遺構が少ないことです。 しかし、川を中心に再興が試みられ、 それまで江戸を引きずっていた巨大都市に新たな都市文化の芽を育んだという点では、 立派な「顕著で普遍的重要性」を有しているだろうと私は思います。 そして将来、 川辺の景観が整えられ、 再び橋が都市における特に重要な一連の建造物群であると見なされるようになれば、 世界遺産にしよう!という声が自然とあがってくると期待したいです。(著=浦に〜と) 2003/02/09 |
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