薩摩藩の近代化遺産 登録運動の有無:2006〜07年、山口・福岡・長崎・熊本県の近代化遺産と合同で文化庁の暫定リスト公募に応募。09年、暫定リストに記載! 登録の可能性評価:★★(中) 所在地:鹿児島県鹿児島市 |
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【世界遺産に登録できるか?】 私は数年前にここに行ったことがありますが、 予備知識がなければ、 ただの日本庭園と洋館があるだけの普通の史跡公園といった感じでした。 ですから当時の私は薩摩藩の近代化遺産の世界遺産化なんてまず無理だろうと考えていました。 また島津藩は鎌倉・室町時代から続く守護大名の名家であり、 成り上がりの戦国大名とは家柄や格式が全然違いますので、 廃仏毀釈さえなければ薩摩藩には京都や鎌倉に劣らぬ貴重な仏教文化財が、 綺羅星のごとく保存されていたはずでした。 しかし南九州の廃仏毀釈はあまりに激烈であり、 現在貴重な寺院・仏像は皆無です。 そのため今でも鹿児島県にはマシな文化財がほとんどない残っていない状況であり、 幕末の薩摩藩の先見性は評価できる反面、 過激で無謀な廃仏毀釈の蛮行などは全く評価できないというのが正直な気持ちです。 ところが最近、 鹿児島県では、 幕末に島津藩が行った近代化遺産の調査が盛んに行われています。 そしてその遺構は、 これまで想像していたものよりはるかに規模の大きい工場であったことが判明してきました。 例えば尚古集成館では薩摩切子や反射炉で大砲を造っていたわけですが、 そのために数キロ先の水源から水を引くための通水施設まで整備していました。 この工場が機能したのはたった数年間で、 しかも島津斉彬はその指示をほとんど江戸から行っていたにもかかわらず、 短い期間でよくぞここまで整備したものだと感心します。 当時ここがアジア中で、 というより植民地化されていない数少ない国々の中で最も進んだ工場であったことは事実であり、 その後の日本の近代化を考える上でも貴重な史跡であるのは事実です。 やはりその進取の気風は積極的に評価すべきでしょう。 現在、 尚古集成館は資料館として開放されています。 尚古集成館に収蔵されている古文書は近世・近代の文書や日記類が中心で、 島津家に伝わった古文書約6000点を含む約10000点の史料を収蔵しています。 また東京大学史料編纂所所蔵には島津家文書15000点余り現存し、 東京大学史料編纂所と鹿児島県歴史資料センタ−黎明館によって順次活字化されているそうです。 さらに歴代藩主の肖像画や書画、武具、装束、道具類や薩摩切子、 薩摩焼など約4000点の資料が収蔵されています。 そして現在でも鹿児島県歴史資料センタ−黎明館や鹿児島市立美術館では、 資料の収集が積極的に行われているそうです。 また隣接する仙巌園(磯庭園)も国の史跡に指定され、 史跡の保存状態は良好です。 フランスにはアルケスナンという製塩工場の遺構が、 フランスの世界遺産の中でも割と早くに世界遺産になっています。 私はそこに行ったことがありますが、 外観や外壁は当時のままでも、 内装は現代風の博物館に改装されていました。 尚古集成館と単純には比較は出来ませんが、 アルケスナンが可能なら、 尚古集成館も世界遺産化が可能ではないかという気もします。 また島津家ゆかりの日新寺、妙円寺、南林寺のような名刹の中には神社となって再興されたものもあるみたいで、 そういった神社や旧家の蔵からひょっとしたら破壊を免れた仏教文化財が発見される可能性はあります。 ですから今後の調査如何では、 世界遺産も夢ではないという気がしています。(著=収斂) 2003/03/24 |
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