九州・沖縄の世界遺産登録運動地リスト

▼遺産名の帯が青は主に文化遺産からなる場所、緑は主に自然遺産からなる場所です
▼現況は、過去2年間の動きが不明のもの、中止を明言していないものは「休止中」としました
▼登録の可能性は、弊サイトが独断で判断したものであり、各遺産の価値を絶対的に決定づけようというものではありません


九州・山口の近代化産業遺産群
※単独で運動していた「軍艦島」「仙巌園(磯庭園)」を含む
★暫定リスト記載物件
現況:運動中 可能性:★
福岡県/北九州市、大牟田市
佐賀県/佐賀市
長崎県/長崎市
熊本県/荒尾市、宇城市
鹿児島県/鹿児島市
山口県/下関市、萩市
岩手県/釜石市
静岡県/伊豆の国市

経緯
●01年、弊サイト管理人が近○日本ツーリストのガイドに聞いたところ、「仙巌園(磯庭園、鹿児島県)で登録運動が起きていると聞いた」との情報を得る。
●03年、長崎県で「軍艦島を世界遺産にする会」設立、「端島(はしま)(軍艦島)を遺跡としての保存に関する提起書」を作成。
●06年、経済産業省が新日鉄八幡製鉄所(福岡県)などの近代遺産の世界遺産登録支援を表明(06/08/21朝日新聞)。
●06年、単体で運動していた「端島」と「仙巌園」(旧集成館など)を吸収し、6県13件を一括して文化庁の第1回暫定リスト公募に応募。しかし記載は見送られ、「次年度へ継続審査」となる。
●応募の提案名は「九州・山口の近代化産業遺産群−非西洋世界における近代化の先駆け−」。
●07年、候補資産を6県22件に増やして文化庁の第2回暫定リスト公募で引き続き審査。08年にリスト記載の認定を受ける。
●09年、日本の暫定リストに正式記載。
●09年、遺産価値を検討する専門家委員会が、世界遺産評価基準への適合性などを評価した提言書をまとめ、候補を6県22件から7県28件に再編。この過程で、文化庁への応募時に候補に含まれていた「旧伊藤伝右衛門邸」「旧三井田川鉱業所伊田竪坑櫓」「伊田竪坑第一・第二煙突」(福岡県)、「旧高取家住宅」(佐賀県)、「北渓井坑(ほっけいせいこう)跡」(長崎県)、「新波止(しんはと)砲台跡」(鹿児島県)が外された。その一方、八幡製鉄所開発につながった重要な遺構である岩手県釜石市の「橋野高炉跡」などが加わった(09/10/23佐賀新聞)。
●11年、近代化産業遺産群の世界遺産登録推進協議会総会開催。山口県下関市の「六連島(むつれじま)灯台」を候補から除外し、新たに、鹿児島市の「祇園之洲(ぎおんのす)砲台跡」など3件を追加。構成資産は計30件になった。
●詳細は九州・山口の近代化産業遺産群

構成資産は次の30件
1.岩手県/橋野高炉跡
2.静岡県/韮山(にらやま)反射炉
3.山口県/前田砲台跡
4.山口県/萩反射炉
5.山口県/恵美須ヶ鼻(えびすがはな)造船所跡
6.山口県/萩城下町
7.山口県/大板山たたら製鉄遺跡
8.山口県/松下村塾(しょうかそんじゅく)
9.福岡県/官営八幡(やわた)製鉄所 旧本事務所
10.福岡県/官営八幡製鉄所 旧修繕工場
11.福岡県/官営八幡製鉄所 旧鍛冶工場
12.福岡県/官営八幡製鉄所 遠賀川水源地ポンプ室
13.福岡県/三井石炭鉱業株式会社三池(みいけ)炭鉱宮原坑施設
14.福岡県/三池炭鉱鉄道敷
15.福岡県/三池港
16.佐賀県/三重津海軍所跡
17.長崎県/長崎造船所向島第三ドック
18.長崎県/木型場(長崎造船所史料館)
19.長崎県/長崎造船所ハンマーヘッド型起重機
20.長崎県/占勝閣
21.長崎県/小菅修船場跡
22.長崎県/高島炭鉱跡
23.長崎県/旧グラバー住宅
24.長崎県/端島炭坑
25.熊本県/三井石炭鉱業株式会社三池炭鉱旧万田坑施設
26.熊本県/三角(みすみ)旧港(三角西港)施設
27.鹿児島県/旧集成館
28.鹿児島県/旧集成館機械工場
29.鹿児島県/旧鹿児島紡績所技師館
30.鹿児島県/祇園之洲(ぎおんのす)砲台跡

特徴
日本の近代化を主導した江戸末期から昭和にかけての製鉄・造船・石炭・紡績遺産群。薩摩藩が築いた大規模様式工場の「集成館」、日本最初期の洋式ドック「小菅修船場」、日本初の洋式大規模炭坑の「高島炭鉱」などを含む。[1]



宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群
★暫定リスト記載物件
現況:運動中 可能性:★★
福岡県/宗像市、福津市

経緯
●01年度、早稲田大学総合研究機構ユネスコ世界遺産研究所が、世界遺産としての学術的価値づけと、登録に向けてのコンサルティングを開始。宗像大社社務所、九州毎日放送(RKB)、宗像市の要請を受けたものだった。
●02年、宗像市で「沖ノ島の世界遺産運動をめざすパネルディスカッション」開催。
●03年、宗像市でシンポジウム「『吉村作治と語ろう』〜沖ノ島を世界遺産に〜」、福岡市で「海の正倉院・沖ノ島を世界遺産に」開催。
●06年、文化庁の第1回暫定リスト公募に応募。しかし記載は見送られ、「次年度へ継続審査」となる。
●07年、文化庁の第2回暫定リスト公募で引き続き審査。08年に「リスト記載」と認定を受ける。
●09年、日本の暫定リストに正式記載。
●10年、朝日新聞の夕刊記事「沖ノ島 韓国研究者ら注目」に、韓国の竹幕洞遺跡について「沖ノ島と共同で世界遺産に提案したらどうか、との声もちらほら聞こえてくる」との記述がある(10/06/04)。
●詳細は沖ノ島バーチャルミュージアム

特徴
沖ノ島は宗像市の沖合60kmに浮かぶ孤島。4〜10世紀、日本と大陸との交易を行う船が立ち寄り、航海の安全を祈った。このとき数々の貴重品が奉納され、これまでに武器や馬具、装身具、土器など8万点が出土。その様子から「海の正倉院」とも呼ばれる。[1]



三井三池三川鉱
※暫定リスト記載の「九州・山口の近代化産業遺産群」への追加運動
現況:運動中 可能性:★
福岡県/大牟田市

経緯
●10年、大牟田市三川町の住民が古賀道雄市長を訪れ、三井三池三川鉱を保存し、世界遺産登録に向けた活用を求める陳情書を提出(10/06/04西日本新聞)。

特徴
1940年完成。戦後、日本最大の出炭量をほこった三池炭田の最主力坑。また、60年に日本の労働史上最大の争議が、63年に戦後最大の炭坑事故が起きたことで有名になった。97年の三池炭坑閉鉱後、多くの建物が取り壊され、現存する遺構は少ない。[18]



英彦山(ひこさん) 現況:運動中 可能性:★
福岡県/田川郡添田町

経緯
●11年、寺西明男町長が登録構想を発表。14年度までに遺跡発掘、民俗調査、古文書研究の報告書を作成し、15年度に国史跡となることを目指していることを明らかにした。また、「近世の教育資産」(大分県日田市ほか)の登録運動に加わる可能性についても示唆した(12/03/15読売新聞)。

特徴
英彦山は標高1200m。古くから大峰山(奈良県)、羽黒山(山形県)とならぶ山岳信仰の霊山として知られ、最盛期には山麓に3800以上の坊舎が建ち並んだ。明治時代の神仏分離で衰退したが、現在でも中岳に英彦山神宮上宮が祀られている。[8]



大川内山(おおかわちやま) 現況:休止中 可能性:★★★
佐賀県/伊万里市

経緯
●04年、伊万里市が世界遺産登録を目指すことを明言。

特徴
伊万里の中心街から6km離れた場所にある。幕府や朝廷に献上する陶器をつくる藩窯を構えていた鍋島家が、17世紀、技術の外部流出を防ぐため、この地に移転させたもの。関所や登り窯などが現存する。[11]



吉野ヶ里遺跡 現況:休止中 可能性:★★★
佐賀県/神埼市、神埼郡吉野ヶ里町

経緯
●00年頃に登録運動が存在したが、活動の母体等は不明。

特徴
外濠に囲まれた40haもの広さを持つ日本最大の環濠集落。昭和61〜63年に発見された。弥生時代の墳丘墓、物見やぐら跡、甕棺墓のほか、奈良時代の官道(現在でいう国道)跡や、役所に関係するとみられる建物跡も見つかっている。遺跡発見の2年後に国の史跡に指定、さらにその翌年には特別史跡に格上げされた。[11]



長崎・天草の教会群とキリスト教遺跡群
★暫定リスト記載物件
現況:運動中 可能性:★★
長崎県/長崎市、佐世保市、平戸市、五島市、南島原市、北松浦郡小値賀町、南松浦郡新上五島町
熊本県/天草市

経緯
●01年、「長崎の教会群を世界遺産にする会」設立。
●02年〜06年、「長崎の教会群を世界遺産にする会」が「世界遺産への道 ながさきの教会群」と題する一連の写真展・講演会を開催。
●06年、文化庁の第1回暫定リスト公募に応募。07年に「リスト記載」と認定を受ける。この時点での構成資産は20件。
●07年1月、日本の暫定リストに正式記載。この時点で熊本県の物件は含まれていないが、文化審議会は「隣県の事例も検討を」と指摘し、熊本県天草市の教会建築にも暫定リスト記載の可能性が生まれる。
●07年9月、熊本県と天草市がシンポジウム「天草の教会と集落景観を世界遺産に!」開催。
●07年12月、構成資産が20件→34件に変更。推薦書の素案づくりをする県世界遺産学術会議の初会合で決まった。
●08年12月、長崎県外の類似資産も含め、構成資産候補43件を総評。これにより、構成資産は14件に絞り込まれた。
●12年4月、構成資産が14件→12件に変更。「吉利支丹墓碑」を除外し、地理的に近い「出津教会堂」と「旧出津救助院」を1件にまとめた。
●12年6月、構成資産が12件→13件に変更。熊本県の「天草の崎津集落」を追加。これにより長崎・熊本の2県にまたがるようになった。
●詳細は長崎から世界遺産を。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」南島原市から世界遺産を長崎の教会群を世界遺産に長崎新聞ホームページ:めざせ!世界遺産

構成資産は次の13件
1.長崎県/大浦天主堂
2.長崎県/出津教会堂
3.長崎県/大野教会堂
4.長崎県/日野江城跡
5.長崎県/原城跡
6.長崎県/黒島天主堂
7.長崎県/田平天主堂
8.長崎県/平戸島の聖地と集落
9.長崎県/旧野首教会と関連遺跡
10.長崎県/頭ケ島天主堂
11.長崎県/旧五輪教会堂と関連遺跡
12.長崎県/江上天主堂
13.熊本県/天草の崎津集落

特徴
日本では江戸時代にキリスト教信仰が禁じられたため、古い教会は残っていないが、長崎には現存最古の大浦天主堂(1864年創建)をはじめ、歴史的教会建築が多く残る。西洋と日本の技術が融合した様式や、250年間の禁教時代を経て開花した文化であることなどが特徴。[1]



箱根、出島
※スウェーデンなど8か国が共同で登録運動を目指す「生物系統学の揺籃地」に含まれる
現況:運動中 可能性:★★★
長崎県/長崎市
神奈川県/足柄下郡箱根町

経緯
●09年、スウェーデン政府が、8か国13資産からなる「生物系統学の揺籃地」の暫定リスト記載を計画。同年、自国内の6資産を先行して暫定リストに記載。
●10年、長崎市がスウェーデン政府より、出島の暫定リスト記載の報告を受ける(10/02/18西日本新聞)。

特徴
1775年、スウェーデン人植物学者のトゥンベリー(ツンベルク)は、オランダ人と自称して鎖国中の日本に渡り、出島に滞在。植物採集を行い、『日本植物誌』を著した。また、一度だけ許された江戸旅行の途中でも植物採集を行い、大半の標本を箱根山地で採集した。[17]



被爆のマリア像 現況:運動中 可能性:★★★
長崎県/長崎市

経緯
●98年頃、登録運動が起こる。
●詳細は被爆マリア像を世界遺産へ

特徴
1930年代にイタリアから取り寄せ、長崎市の浦上天主堂に安置されていたマリア像。寄木細工の木彫で、台座を含めた高さは2mあった。45年8月9日の原爆投下で、天主堂もろとも瓦礫と化したが、10月に復員したキリスト教司祭が、頭部だけとなったこの像を偶然発見した。[12]



対 馬 現況:運動中 可能性:★★★
長崎県/対馬市

経緯
●06年、東京対馬会が「対馬を世界遺産にする会」を設立。
●08年、東京対馬会がリーフレット「世界は対馬を待っている」発行。世界遺産の可能性がある場所として、「洲藻白嶽(すもしらたけ)原始林」「龍良山(たてらさん)原始林」「御嶽(みたけ)鳥類繁殖地」「金田城(かねだじょう/かなたのき)跡」の4か所を記載。
●詳細は東京対馬館

特徴
侵食で形成された急な山岳地形をもつ対馬では、南部の龍良山、中部の白嶽、北部の御嶽などで原生林が保存されている。ツシマタンポポ、ツシマヤマネコなどの固有種も多く、IUCNのレッドリスト記載種では“絶滅寸前種”の固有種クチバテングコウモリがあるが、昭和37年に捕獲された1頭しか記録がない。[4]



通潤橋(つうじゅんきょう)と熊本の石橋群 現況:運動中 可能性:★★★
熊本県/八代市、上益城郡山都町、下益城郡美里町

経緯
●00年、「肥後の石橋を世界遺産にする会」設立。
●詳細は熊本国府高等学校->肥後の石橋を世界遺産に

特徴
熊本県や大分県では数多くの石橋が架けられているが、最も有名なのが通潤橋だろう。江戸時代末期、通潤用水の水道橋としてつくられた。このほか熊本県中東部の緑川流域には、日本最大の石橋の霊台橋(れいだいきょう)など、重要な歴史的石橋が残る。[3]



阿 蘇 現況:運動中 可能性:★★★
熊本県/阿蘇市、阿蘇郡南小国町、阿蘇郡小国町、阿蘇郡産山村、阿蘇郡高森町、阿蘇郡南阿蘇村、阿蘇郡西原村

経緯
●03年、熊本県阿蘇郡の12町村(当時)の首長らが紀伊山地(04年に世界遺産登録)を視察(04/12/04朝日新聞)。
●07年、文化庁の第2回暫定リスト公募に応募。08年、記載が見送られた。
●応募の提案名は「阿蘇−火山との共生とその文化的景観」。
●09年、阿蘇市教育委員会が「阿蘇世界文化遺産推進室」を設置。
●13年、世界農業遺産に登録。今後も世界遺産登録をめざした運動は継続。
詳細は阿蘇世界文化遺産推進室

特徴
阿蘇山(1592m)は外周129kmの外輪山をもち、その内側に5万人もの人々が生活する、世界でも類のない土地。春先に行われる野焼きで広大な草地を維持し、その草地では牛馬の放牧が営まれてきた。また阿蘇山は「記紀」にも登場し、古くから信仰の対象でもあった。[3]



JR肥薩線(ひさつせん) 現況:運動中 可能性:★★★
熊本県/人吉市
宮崎県/えびの市
鹿児島県/姶良郡湧水町

経緯
●11年、肥薩線利用促進・存続期成会の総会で、同線での蒸気機関車復活と世界遺産登録運動を目指すことが明らかになる(11/08/09毎日新聞)。

特徴
熊本県の八代駅と鹿児島県の隼人駅を結ぶ124.2kmの鉄道。1909年に全線開通した。球磨川に沿って走る北側は「川線」、国見山地を越える南側は「山線」と通称される。なかでも山線の人吉駅から吉松駅にかけては、大畑(おこば)駅付近のループとスイッチバック、矢岳駅の木造駅舎(1909年築)、真幸(まさき)駅のスイッチバックと、鉄道遺産として見るべきものが集中。



近世の教育資産 現況:運動中 可能性:★★★
大分県/日田市
茨城県/水戸市
栃木県/足利市
岡山県/備前市

経緯
●09年、水戸市の加藤浩一市長の呼びかけで、弘道館(茨城県)、足利学校(栃木県)、閑谷(しずたに)学校(岡山県)の3史跡からなる「『近世の教育資産』世界遺産登録推進会議」を開催(09/02/19常陽新聞)。その9か月後、咸宜園(かんぎえん/大分県)も含めた4史跡での運動に拡大(09/11/06西日本新聞)。
●10年、日田市が咸宜園の登録を目指し、世界遺産登録検討委員会を開催(10/05/26朝日新聞)。
●10年、加藤市長が4市会議を提唱し、初の合同学術研究会議を開催(10/11/18産経新聞)。
●11年、閑谷学校の検討専門委員4名が「旧閑谷学校単独で登録を目指す」とする原案をまとめ、4資産共同運動から外れることが濃厚になった(11/06/03山陽新聞)。

特徴
江戸時代の教育機関には、諸藩が領内に設けた藩学(藩校)、民間の有識者が開いた私塾、庶民の初等教育を行った寺子屋、藩主などが設立・補助した「高等寺子屋」とでもいうべき郷学(ごうがく)などがある。弘道館は藩学、足利学校と閑谷学校は郷学、咸宜園は私塾。[8]



別府温泉 現況:休止中 可能性:★★★
大分県/別府市

経緯
●02年、別府観光産業経営研究会が運営するウェブサイト「BEPPU HATTO WALKERS」に、「『別府のゆけむり』を世界遺産にという動きもあると聞いています」との一文が掲載される。

特徴
古く『豊後国風土記』にも記述がある別府の湧泉。江戸時代までは自然噴出か簡単な掘削技術によるもののみだったが、近代以降、新技術の導入で多くの泉源が確保されるようになった。温泉孔から数多くの湯けむりが立ちのぼる景観は独特。



宇佐・国東(くにさき) 現況:運動中 可能性:★★★
大分県/中津市、豊後高田市、杵築市、宇佐市、国東市

経緯
●00年、大分県の平松守彦知事(当時)が国東半島の世界遺産登録を目指すことを表明。
●02年、「宇佐神宮・国東半島を世界遺産にする会」設立。
●06年、文化庁の第1回暫定リスト公募に応募。しかし記載は見送られ、「次年度へ継続審査」となる。
●応募の提案名は「宇佐・国東八幡文化遺産」。
●07年、文化庁の第2回暫定リスト公募で引き続き審査されるも、08年に再度記載見送りに。
●応募の提案名を「宇佐・国東—『神仏習合』の原風景」に変更。
●詳細は宇佐神宮・国東半島を世界遺産にする会

特徴
奈良〜平安時代、仏教僧の修業の場となった国東半島にはいくつもの山岳寺院が建てられた。現存する九州最古の建物がある富貴寺(ふきじ)や、高さ8mの熊野磨崖仏(まがいぶつ)などがその好例。半島のつけ根の北には、8世紀創建で本殿が国宝の宇佐神宮がある。[1]



臼杵(うすき)と大野川流域の石仏群 現況:休止中 可能性:★★★
大分県/臼杵市、豊後大野市、竹田市

経緯
●00年頃、登録運動が起こる(活動母体は不明)。また、いつ書かれたものか不明だが、「臼杵デザイン会議」のウェブサイトに「今後は『石仏の里』としての景観保全と世界遺産登録を目指す」との一文あり。

特徴
臼杵石仏は平安〜鎌倉時代に、木彫を模して彫られた石仏群。全部で62体あり、国内屈指の規模と保存状態のため、石仏として唯一の国宝に指定されている。また、大分県中南部を流れる大野川流域には、別の製造者集団がつくったと見られる石仏群が点在している。



竹田(たけた)の文化財 現況:休止中 可能性:★★★
大分県/竹田市

経緯
●09年、竹田市が「岡城(おかじょう)跡の世界遺産登録への挑戦」フォーラムを開催。

特徴
竹田は中世、城下町として発展し、いまでも往時の面影をしのばせる町並みが残っている。町の東にある丘陵地には、1185年に緒方氏が築き、のち大友一族の志賀氏が拡張した岡城跡がある。この城跡に着想し、滝廉太郎は『荒城の月』を作曲したといわれている。[8]



綾(あや)の照葉樹林 現況:方針転換して運動終了
宮崎県/東諸県郡綾町

経緯
●97年、九州電力が綾の照葉樹林帯に送電線の鉄塔を建設することを決定。以降、樹林保護の選択肢の一つとして世界遺産登録が議論されるようになる。
●00年、宮崎県の松形祐堯(すけたか)知事(当時)が、「世界遺産登録運動が起これば県としても協力したい」と発言。
●02年、「綾の森を世界遺産にする会」が発足し、登録を目指して署名運動を展開。
●03年、環境省の「世界自然遺産候補地に関する検討会」で国内19か所の最終候補にノミネートされるも、暫定リストには記載されず。
●10年、綾町の前田穣町長が、ユネスコ生物圏保護区への登録を目指す考えを明らかにした。(世界遺産運動は事実上断念)。
●12年7月、国内5カ所目の生物圏保護区として登録された。
●詳細はてるはの森の会

特徴
綾北川と綾南川の中流域に広がる森林。シイ、タブ、カシ類の典型的な照葉樹林が残り、貴重な動植物を育んでいる。深く切れ込んだV字谷が発達し、太平洋に注ぐ耳川や一ツ瀬川の源流域となっている。[4]



フランシスコ・ザビエルゆかりの史跡群 現況:休止中 可能性:★★★
鹿児島県/鹿児島市

経緯
●04年、鹿児島市民や教会関係者が登録運動を準備。
●06年、「ザビエルの道を世界遺産にする会」発足。ヨーロッパ、アジア各地の史跡を含めて運動することを検討。

特徴
1549年、イエズス会宣教師フランシスコ・ザビエルは、現在の鹿児島市に上陸し、ここから日本への布教を始めた。市内には功績をたたえるザビエル滞鹿(たいか)記念碑などがある。なお、ゆかりの史跡は大分市、山口市、堺市など県外にもあるが、登録運動の範囲は不明。



稲尾岳の照葉樹林 現況:休止中 可能性:★★★
鹿児島県/肝属郡肝付町、肝属郡錦江町、肝属郡南大隅町

経緯
●02年、南日本新聞に記事「大隅照葉樹林の素晴らしさ知ろう!−世界遺産指定目指し住民ら活動を」掲載(02/01/24)。
●03年以前、「大隅の照葉樹林を世界遺産にする会」発足。
●03年、鹿屋市の山岳写真家らが世界遺産を目指し署名運動を展開(03/01/13南日本新聞)。

特徴
稲尾岳は標高930m。一帯は国の自然環境保全地域に指定され、イスノキが優占する常緑広葉樹林となっている。日本固有の哺乳類ヤマネの分布南限であり、ワシタカ類で唯一の渡り鳥サシバや、IUCNレッドリストで“危急種”指定のヤイロチョウなどが羽を休める。[4]



奄美群島 現況:運動中 可能性:★★
鹿児島県/奄美市、大島郡大和村、大島郡宇検村、大島郡瀬戸内町、大島郡喜界町、大島郡徳之島町、大島郡天城町、大島郡和泊町、大島郡知名町、大島郡与論町

経緯
●01年、鹿児島県が「21世紀新かごしま総合計画」のなかで、奄美群島の世界自然遺産登録に向けた取組を位置づけ、計画の主要施策である奄美群島自然共生プランの具体的施策の一つとして取り組みを始める。
●03年、環境省の「世界自然遺産候補地に関する検討会」で、奄美群島を含む「琉球諸島」が国内19か所の最終候補にノミネート。「国立公園などの未指定地域の保護強化など、課題が解決できれば登録できる可能性が高い」として、暫定リストへの記載が内定した。
●07年、鹿児島県環境生活部環境保護課、奄美群島広域事務組合が、パンフレット「奄美群島を世界遺産へ」発行。
●詳細は奄美群島を世界遺産へ

特徴
亜熱帯広葉樹林を主とする森林と、サンゴ礁が広がる海域が特徴。IUCNレッドリスト記載種が18種もいる(海生生物は除く)。“絶滅寸前種”こそないが、18種中、以下の7種は奄美群島の固有種である。“絶滅危機種”のアマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミ、オリイジネズミ、オットンガエル、アマミハナサキガエル、“危急種”のルリカケス。[4][5]



琉球諸島
※単独で運動中の「奄美群島」「山原(やんばる)」「西表島」を含む
☆暫定リスト記載内定物件
現況:運動中 可能性:★★★
鹿児島県/奄美市ほか
沖縄県/八重山郡竹富町ほか

経緯
●03年、環境省の「世界自然遺産候補地に関する検討会」で、それぞれ単独で運動していた「奄美群島」「山原」「西表島」を吸収した「琉球諸島」が、国内19か所の最終候補にノミネート。「国立公園などの未指定地域の保護強化など、課題が解決できれば登録できる可能性が高い」として、暫定リストへの記載が内定した。
●現在のところ、正式には暫定リストに記載されていない。
●06年、環境省の検討会時に本件に吸収された「西表島」が、ふたたび単独で登録運動を開始。
●11年、環境省が奄美大島、徳之島、沖縄島北部(山原)、西表島の4島を軸に検討していることが判明。対象区域の国立公園化などの取組みが進められる(11/09/25共同ニュース)。

特徴
暫定リストへの記載が内定した琉球諸島は、トカラ列島から与那国島までのおよそ1000km。固有種・希少種の数は小笠原諸島と並んで全国屈指。IUCNレッドリスト記載種は、“絶滅寸前種”のノグチゲラ(山原固有種)、タイマイ、キクザワトサワヘビ(久米島固有種)、“絶滅危機種”のアマミノクロウサギ(奄美群島固有種)、ヤンバルクイナ(山原固有種)、“危急種”のジュゴン、ミヤコスナガニ(宮古島固有種)など、枚挙にいとまがない。[5]



浦添(うらぞえ)城跡
※00年世界遺産登録の「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」への追加登録運動
現況:運動中 可能性:★★★
沖縄県/浦添市

経緯
●05年、弊サイト管理人が中城城跡のガイドに聞いたところ、「03年から登録運動が始まった」との情報を得る。

特徴
天然の要塞をなす高さ130mほどの丘にある。13世紀末〜14世紀初頭に着工し、以後増改築をくり返した。太平洋戦争などで損傷したが、城門や建物跡などが残されている。また、城の北には「ようどれ」と呼ばれる歴代王の陵墓があり、戦後、修復された。[2]



辺野古(へのこ)・大浦湾海域 現況:運動中 可能性:★★★
沖縄県/名護市

経緯
●09年、WWFジャパンが鳩山内閣に、辺野古・大浦湾海域に海洋保護区を設置し、山原の森とあわせて世界遺産登録を推進することを要請。

特徴
沖縄島中部の東海岸にある。米軍普天間基地の移設先として検討されたため、反対運動の一環として世界遺産運動が立ち上がった。IUCNレッドリストで“危急種”指定のジュゴンが生息し、09年の調査では、36種の新種のエビ・カニ類の生息地であることも確認された。[14]



山原(やんばる) 現況:運動中 可能性:★★
沖縄県/国頭郡国頭村、国頭郡東村、国頭郡大宜味村

経緯
●97年、『沖縄やんばる亜熱帯の森 この世界の宝をこわすな』(平良克之・伊藤嘉昭著、高文研)のなかで、「やんばるの森は世界遺産になるのか?」と言及。
●03年、環境省の「世界自然遺産候補地に関する検討会」で、山原を含む「琉球諸島」が国内19か所の最終候補にノミネート。「国立公園などの未指定地域の保護強化など、課題が解決できれば登録できる可能性が高い」として、暫定リストへの記載が内定した。

特徴
標高498mの与那覇岳を中心とする森林地帯で、ここを分布の北限・南限とする植物が多い。IUCNレッドリスト記載種も見られるが、なかでも山原にしか生息しない固有種の多さは突出。しかも、ノグチゲラ、ヤンバルホオヒゲコウモリ、オキナワトゲネズミの3種が“絶滅寸前種”指定を受けている点も特筆される。このほか、“絶滅危機種”指定の山原固有種に、リュウキュウテングコウモリ、ヤンバルクイナ、ナミエガエル、ハナサキガエル、オキナワミナミヤンマ、オキナワコヤマトンボ、オキナワサラサヤンマの7種がある。[5]



白保サンゴ礁 現況:休止中 可能性:★★★
沖縄県/石垣市

経緯
●95年、「八重山・白保の海を守る会」がニューヨーク・タイムズ意見広告に「世界のサンゴ礁が危ない!−白保の海を世界の遺産に−」を掲載。

特徴
石垣島の東南海岸に位置する。アオサンゴの大群落は世界最大規模。昭和54年以降のオニヒトデの異常発生で琉球諸島のサンゴ礁が壊滅的な打撃を受けるなか、本来の姿をとどめている。海を埋め立てての新石垣空港の建設は回避できたが、陸上の公共工事による赤土の流出が懸念されている。[15]



竹富島・波照間島(はてるまじま)の文化的景観 現況:運動中 可能性:★★★
沖縄県/八重山郡竹富町

経緯
●04年、竹富町から世界遺産を出すことを公約に掲げた大盛武氏が竹富町長に当選。
●06年、文化庁の第1回暫定リスト公募に応募。しかし記載は見送られ、「次年度へ継続審査」となる。
●応募の提案名は「黒潮に育まれた亜熱帯海域の小島『竹富島・波照間島』の文化的景観」。
●07年、文化庁の第2回暫定リスト公募で引き続き審査されるも、08年に再度記載見送りに。
●応募の提案名を「竹富島・波照間島の文化的景観〜黒潮に育まれた亜熱帯地域の小島〜」に変更。

特徴
亜熱帯気候に適応した集落が形成されている竹富島と波照間島。台風や地震津波などの自然災害が多いため、石垣と防風林で囲まれた住居が島の中央部に密集しているのが特徴だ。自然崇拝・祖先崇拝の聖地である御嶽(うたき)、山林・海岸景観もよく残っている。[1]



西表島(いりおもてじま)の自然 現況:運動中 可能性:★★★
沖縄県/八重山郡竹富町

経緯
●03年、環境省の「世界自然遺産候補地に関する検討会」で、西表島を含む「琉球諸島」が国内19か所の最終候補にノミネート。「国立公園などの未指定地域の保護強化など、課題が解決できれば登録できる可能性が高い」として、暫定リストへの記載が内定した。
●04年、竹富町から世界遺産を出すことを公約に掲げた大盛武氏が竹富町長に当選。
●06年、「竹富町世界自然遺産登録推進協議会」設立。
●07年、竹富町が西表島の世界自然遺産登録パンフレットを発行。

特徴
東西28km、南北20kmのほぼ長方形の島。陸地の35%が西表国立公園に指定されている。海水が流入する各河川の下流部にはマングローブ林が発達し、仲間川天然保護区のものは日本最大。石垣島と共通の固有種が多く、代表的なものにIUCNレッドリストで“絶滅危機種”指定のセマルハコガメ、オオハナサキガエル、ヤエヤマハナダカトンボ(西表島固有)などがある。未記載種にもイリオモテボタルなど貴重な種が多い。[4][5]



与那国島近海の海底 現況:休止中 可能性:★★★
沖縄県/八重山郡与那国町

経緯
●00年頃、与那国島近海の海底に遺跡があるとの説を唱える研究者や政治家らが、世界遺産登録を視野に入れると発言。

特徴
1980年代にダイバーが発見し、人為的に水平・垂直に加工された構造物に見えることから、「海底遺跡」として注目を集めた。しかし断定できる加工痕がないことや、過去、周辺地域で巨石文化が栄えた歴史がないことなどから、自然の造形物とする見方が一般的。[16]



主な参考資料
[1] 各自治体作成の世界遺産暫定一覧表記載資産候補提案書(一覧)
[2] 文化庁−文化財データベース
[3] 『日本の文化的景観』文化庁文化財部記念物課監修、同成社、2005
[4] 『日本の自然公園』国立公園協会・日本自然保護協会編、講談社、1989
[5] IUCN Red List
[6] 第4回「世界自然遺産候補地に関する検討会」詳細検討対象地域の個票(案)
[7] パンフレット「日本のラムサール条約湿地−豊かな自然・多様な湿地と賢明な利用−」
[8] 『日本大百科全書』小学館
[9] 『世界大百科事典』平凡社
[10] 『日本名城百選』村田修三著、小学館、2008
[11] パンフレット「テーマ・エリア・四季でみる佐賀 さが観光新書」
[12] パンフレット「被爆マリア像」(カトリック浦上教会)
[13] 天草市観光情報サイト ※リンク切れ
[14] WWFジャパン
[15] パンフレット「この海を守りたい。」(WWFジャパン)
[16] 与那国海底遺跡博物館
[17] The Rise of Systematic Biology(スウェーデンの暫定リスト)
[18] おおむたの宝もの100選


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