アラブ諸国の「世界の記憶」



・説明文は原則としてUNESCO公式サイトからの抄訳です。一部、ほかの資料を参考にしたものは文末に注記しました。
・写真は特記のないものはUNESCO公式サイトからの転載です。各写真に転載元のリンクを貼っています。


■エジプト
  名称 登録年 説明

Memoire du Canal de Suezより転載
スエズ運河の記憶
Memory of the Suez Canal
1997 運河の掘削・改良工事に関する記録のみならず、1869年の開通から1956年までの海運記録、関連写真・絵画などが対象。エジプト・スエズ運河庁、スエズ運河会社、パリのフランス国立中央文書館など、エジプト、フランスの8カ所で保管されている。
データ化された資料は以下サイトで公開されている。
Memoire du Canal de Suez
スルタンと王子の証書
Deeds of Sultans and Princes
2005 ファーティマ朝(9091171)からマムルーク朝(12501517)まで、エジプトを支配したスルタンと王子の活動記録。紙や羊皮紙に書かれた400点の資料からなり、最大のものは長さ40mになる。
挿絵入りのペルシア語写本
Persian Illustrated and Illuminated Manuscripts
2007 1419世紀にかけてつくられた71点の貴重本。イスラム細密画の歴史や、ペルシア語の書体の変遷を知ることができる。なかでも貴重なのが、古来アラビアの寓話として有名な『カリーラとディムナ』の12世紀の写本、イラン最大の叙事詩といわれるフェルドウスィー作『シャー・ナーメ(王書)』の15世紀の写本(挿絵166点)など。エジプト国立図書館・公文書館蔵。



■サウジアラビア
  名称 登録年 説明
初期イスラム(クーフィー体)碑文
Earliest Islamic (Kufic) inscription
2003 現存する最古のアラビア語碑文。サウジアラビア北西部のアルウラ近郊の岩に刻まれている。ムハンマド没後の第2代カリフ(後継者)、オマル・ビン・アル・カッタブ(位634644)の死没と埋葬を記録している。



■チュニジア
  名称 登録年 説明
18〜19世紀のチュニス太守国の私略船と国際関係
Privateering and the international relations of the Regency of Tunis in the 18th and 19th centuries
2011 オスマン帝国の配下にあったチュニス太守国では、ヨーロッパの船舶を奪取し、乗組員を捕虜としてとらえ、奴隷として使役していた。「世界の記憶」に登録されたのは、18世紀末から19世紀初頭に書かれた捕虜の記録で、彼らの出身国や生い立ちなどがまとめられている。



■モロッコ
  名称 登録年 説明
『イバルの書』
Kitab al-ibar, wa diwan al-mobtadae wa al-khabar
2011 イスラム世界最大の歴史家イブン・ハルドゥーン(1332〜1406)の著作。この大著のうち冒頭部はとくに『歴史序説』として有名で、政治・経済・社会の鋭い分析は、マムルーク朝や、その後の歴史家たちに大きな影響を与えた。
→この作品を読む Amazon.co.jp:歴史序説(1)(岩波文庫)
参考/『日本大百科全書』(小学館)



■レバノン
  名称 登録年 説明
レバノン山ナハル・エル・カルブの記念碑
Commemorative stela of Nahr el-Kalb, Mount Lebanon
2005 「レバノンの入口」にたとえられるナハル・エル・カルブ(ドッグリバー)にある岸壁に、古代から近代までの征服者が刻した碑文が残る。古代エジプト第19王朝のラメセス2世(位前1304頃〜前1237頃)からナポレオン3世(位185270)まで、ここに名を刻んだ歴史上の人物は枚挙に暇がない。
フェニキア・アルファベット
The Phoenician Alphabet
2005 エジプトとメソポタミアという2つの大文明に挟まれたフェニキアでは、古来それぞれの文明の文字であるヒエログリフとくさび形文字を使っていたが、紀元前13世紀に独自の文字を発明した。それがフェニキア・アルファベットで、現在のアルファベットの原型となったことから、人類史上とくに重要な発明とされている。「世界の記憶」には、フェニキア・アルファベットが刻まれたビブロス王アヒラムの石棺(前13世紀)から、ローマ時代の碑文(1世紀)まで、文字の変遷を知る手がかりとなる出土品を一括認定。すべてベイルートのレバノン文化省が管理している。




目次へ戻る


トップページへ戻る