ヨーロッパの「世界の記憶」



・説明文は原則としてUNESCO公式サイトからの抄訳です。一部、ほかの資料を参考にしたものは文末に注記しました。
・写真は特記のないものはUNESCO公式サイトからの転載です。各写真に転載元のリンクを貼っています。


■アイスランド
  名称 登録年 説明
アルナマグナイアン写本コレクション
The Arnamagnæan Manuscript Collection
2009 アイスランド人の古物収集家アウルトニ・マグヌッソン(16631730)が収集した、初期スカンジナビアの貴重写本群。3000点近くからなる膨大なコレクションだ。スカンジナビア史の研究上、重要な役割を果たし、古いものは12世紀にさかのぼる。アウルトニの死後コペンハーゲン大学に遺贈されたが、20世紀に一部がアイスランドに返還された。
※アイスランド、デンマーク共同登録



■アイルランド
  名称 登録年 説明

wikipediaより転載
ケルズの書
Book of Kells
2011 アイルランド史上最高の至宝として世界的に名高く、中世キリスト教美術の最高傑作の一つとされる四福音書。800年前後に制作された。本文の頭文字装飾や挿絵が、赤・青・黄・緑・紫・白など様々な顔料で色彩豊かに描かれている。大きさは33.0cm×25.5cmで、全340枚(680ページ)。ダブリンのトリニティ・カレッジ図書館にて保管され、同館をヨーロッパ屈指の観光名所にした人気の写本である。



■アゼルバイジャン
  名称 登録年 説明
医学・薬学の中世写本
Medieval manuscripts on medicine and pharmacy
2005 アゼルバイジャン国立科学アカデミーの写本学会が所蔵する中世写本のうち、動植物や鉱物などの薬用利用について記した『Zakhirai-Nizamshahi』(16世紀の複製本)、アゼルバイジャンに現存する最古の薬学法規『Al-Qanun Fi at-Tibb』(1143年)、およそ200点の中世の外科手術器具を紹介する論文集『Al-Makala as-Salasun』(13世紀の複製本)の3点が登録された。



■アルバニア
  名称 登録年 説明
ベラティヌス古写本
Codex Purpureus Beratinus
2005 アルバニア中部の古都ベラトで発見された、2点の福音書。『ベラティヌス第一』は6世紀、『ベラティヌス第二』は9世紀のもの。アンシャル体の飾り文字で装飾された『第一』は、世界に3〜4点しか現存しないとされる最古級の新約聖書のうちの一点である。



■アルメニア
  名称 登録年 説明
マシュトツ・マテナダランの古写本コレクション
Mashtots Matenadaran ancient manuscripts collection
1997 マシュトツ・マテナダラン(マシュトツ古文書館)は世界屈指の古文書館として知られる。所蔵する古写本はおよそ1万7000点を数え、古代から中世にかけてアルメニアで作成・編纂された科学・文化に関するほとんどすべての書籍を網羅している。

Digitized First Byurakan Surveyより転載
第一次ビュラカン観測(マルカリアンの観測)
First Byurakan Survey (FBS or Markarian survey)
2011 ビュラカン天文台(1946年開設)で65〜80年に行われた天体観測。ベンジャミン・マルカリアン(1913〜1985)を中心とする研究チームが行った。活動銀河をとらえるために対物プリズムを組織的に用いた、史上初の天体観測である。使われた口径1mのシュミット式望遠鏡は、全天の8割以上(1万7000平方度)を観測できた。この観測ではあらゆる天体の低分散スペクトル画像を撮影し、記録された天体数は2000万個にもおよぶ。現在にかけて、もっとも大規模に行われた分光観測である。
そもそもこの観測は、強力な紫外線を放出する紫外線超過銀河の探索が目的だった。(観測者の名を取り、紫外線超過銀河はマルカリアン銀河とも呼ばれる)。15年間の観測で1500個の紫外線超過銀河が発見されたが、そのほかにクエーサー、惑星状星雲、白色矮(わい)星、炭素星など、いくつもの興味深い天体が見つかるという副産物の多さも特徴である。一連の調査は第一次ビュラカン観測と呼ばれ、その後、第二次観測が行われた。
以下サイトで第一次ビュラカン観測の結果が一般公開されている。
Digitized First Byurakan Survey



■イタリア
  名称 登録年 説明
コルヴィナ文庫コレクション
The Bibliotheca Corviniana Collection
2005 (解説はハンガリーの項を参照)
※イタリア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー共同登録
マラテスタ・ノヴェッロ図書館
The Malatesta Novello Library
2005 近代的な印刷技術が発明される以前の、いわゆる「古代型の図書館」として最後につくられたのが、マラテスタ・ノヴェッロ図書館だ。1452年、チェゼーナの地に開設された。建物それ自体が、世界に現存する唯一の15世紀の図書館としての価値をもち、室内の調度品や343冊の古写本も手つかずのまま保管されている。
ルッカ司教区の歴史的記録
Lucca's Historical Diocesan Archives
2011 合計1万3000枚の羊皮紙記録。イタリアのみならず、ヨーロッパの中世〜近代にかけての政治・経済・宗教・文化の一大記録群となっている。このうち1800点の文書は10世紀以前に書かれた。最古の部分は685年にまでさかのぼる。



■ウクライナ
  名称 登録年 説明
ユダヤ音楽コレクション(191247
Collection of Jewish Musical Folklore (1912-1947)
2005 ヴェルナツキー国立図書館は、エジソン蓄音機により録音されたユダヤ音楽の世界最大の保管所として知られる。このコレクションは191247年にかけて、ウクライナとベラルーシのユダヤ人地区で録音したもの。録音時間2〜7分のシリンダーレコード1017枚よりなる。
ラジヴィウ家の文書とネスヴィシェ図書館コレクション
Radzwills' Archives and Niasvizh (Nieswiez) Library Collection
2009 ラジウィウ家は15〜18世紀、リトアニア大公国とポーランド・リトアニア連合王国で絶大な権力をほこった。6カ国10施設で保管されている8万点以上の関連資料が登録対象。
左写真はミコワイ・クシシュトフ・ラジヴィウ(1549〜1616)の書簡で、ウクライナ中央歴史アーカイヴで保管されている。
※ウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、ロシア共同登録



■英国
  名称 登録年 説明
1940年6月18日の呼びかけ
The Appeal of 18 June 1940
2005 (解説はフランスの項を参照)
※英国、フランス共同登録
ソンムの戦い
The Battle of the Somme
2005 第一次世界大戦で最大の激戦であるソンムの戦いの記録映画。戦闘の歴史的重要性とともに、戦争を記録した世界初の長編映画という点が評価され、「世界の記憶」に登録された。
→この動画を見る Amazon.co.uk:The Battle Of The Somme [DVD]

wikipediaより転載
ヘレフォード図
Hereford Mappa Mundi
2007 中世につくられた世界図(マッパ・ムンディ)のなかで最大。縦1.5m、横1.2mほどで、東を上にしてエルサレムを中心に、ヨーロッパ、小アジア、北アフリカが描かれている。1290年代の制作と推定。ヘレフォード大聖堂蔵。

wikipediaより転載
1215年発布のマグナ・カルタ
Magna Carta, issued in 1215
2009 英国史上、最も重要な書類の一つ。失政続きのジョン王(位11991216)の権限を制限するもので、前文と63カ条の条文からなる。不当な上納金、軍役代納金の徴収への反対(12条)、貴族らの封建的特権の尊重(34条)をはじめとして、適正な裁判、商人の保護などを要求した。15世紀以降、忘れられたが、17世紀に英国の自由の伝統を象徴するものとして思い起こされた。19世紀には近代民主主義の原点として過剰評価されたが、英国憲政の発展に果たした役割は大きい。
現存する4点の原本すべてが登録対象で、それぞれ英国図書館(2点)、リンカーン城、ソールズベリー大聖堂にて保管されている。
参考/『日本大百科全書』(小学館)
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲の記録を開始。21年には西インド植民地の総督らが、該当地域の奴隷の資料と索引のコピーを要求した。これらの文書のうち、現在7カ国の各公文書館・図書館で保存されている奴隷の登録簿が登録対象である。なお、奴隷交易は33年に廃止。34年8月1日をもって、英国領のほとんどの地域で奴隷制度も廃止された。
※英国、ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ共同登録
オランダ西インド会社の文書
Dutch West India Company (Westindische Compagnie) Archives
2011 (解説はオランダの項を参照)
※英国、オランダ、アメリカ合衆国、ブラジル、ガーナ、ガイアナ、オランダ領アンティル、スリナム共同登録
大英図書館の歴史的・民族学的録音記録(1898〜1951)
Historic Ethnographic Recordings (1898-1951) at the British Library
2011 言語学者や音楽学者が、世界各地で現地録音した口承文化の録音記録。録音地域はイングランドや米国にとどまらず、アフリカ、アジア、オセアニアの各大陸におよんだ。1910年ごろに日本で録音されたシリンダーも7枚含まれている。
→この音声を聴く
1898〜1915年の民族音源集 ※リンク先には登録対象外の音源も含まれる
アーサー・モリス・ジョーンズ・コレクション
クラウス・ワッシュマン・コレクション
シルバー・マン:パナマ運河の西インド出身労働者
Silver Men: West Indian Labourers at the Panama Canal
2011 パナマ運河(1914年開通)は、「自発的に」移民となったカリブ海諸国の労働者によって開削された。これは人類史上、最も重要な移住の例。パナマ地峡に集結した労働者は10万人を超え、そのほとんどが二度と故国へ戻らなかった。
6カ国の史料が登録対象で、英国からは駐パナマ大使クロード・マレが書いた書簡・書類が登録された。合計点数は未集計。
※英国、アメリカ合衆国、ジャマイカ、セントルシア、パナマ、バルバドス共同登録



■エストニア
  名称 登録年 説明
バルトの道−自由を求めバルト三国を結んだ人間の鎖
The Baltic Way - Human Chain Linking Three States in Their Drive for Freedom
2009 1989年8月23日、全長600kmにもおよぶ「人間の鎖」が、バルト三国を結んだ。これは、バルト三国のソ連併合を認めた独ソ不可侵条約から50年が経過したことを記念し、三国の自由を求めて行われたものである。運動の様子を記録した映像や写真、文書、さらには「人間の鎖」と書かれたプラカードなど、三国で保管されている38点の資料が一括認定された。
※エストニア、ラトビア、リトアニア共同登録



■オーストリア
  名称 登録年 説明
ウィーン会議の最終議定書
Final document of the Congress of Vienna
1997 ウィーン会議(181415)は、フランス革命とナポレオン戦争により無秩序化していたヨーロッパを再編した国際会議。革命派を抑え、君主・貴族などの復古勢力による国際秩序を保つことを目的とした。しかし会議は遅々として進まず、主催者のオーストリア宰相メッテルニヒ(17731859)は、機が熟するのを待つため舞踏会を開き、「会議は踊る。されど進まず」という状態が続いた。
最終議定書は全220枚。赤いビロード製の表紙と裏表紙には、署名した主要8カ国(オーストリア、グレートブリテン、ロシア、プロシア、フランス、スペイン、スウェーデン、ポルトガル)の国章が飾りつけられている。大きさは38cm×25cm
参考/『日本大百科全書』(小学館)
ウィーンのディオスコリデス
Vienna Dioscurides
1997 ディオスコリデス(40?90頃)は古代ローマの薬学者。その著作は、古代世界の薬学に関する最も重要な資料で、薬草を用いた治療技術の礎をなし、中世からルネサンス期にかけて多くの医師が参考にしていた。現存する写本は6世紀のもの。芸術的な価値も高い。
ウィーン視聴覚記録保管所の歴史的コレクション(18991950
The Historical Collections (1899-1950) of the Vienna Phonogrammarchiv
1999 ウィーン視聴覚記録保管所は、1899年に創設された世界初の音声資料の保管施設。その後100年間で5万点以上の録音資料を収集した。なかでも1950年までのコレクションには、言語学や民族音楽学的見地から重要な音声が数多く含まれている。ベルリン録音資料館のコレクション(1999年「世界の記憶」に登録)とともに、西欧文明の影響を受ける以前の世界各地の口承伝統をいまに伝える貴重な存在だ。
→この音声を聴く ウィーン視聴覚記録保管所サンプル音源集
パピルス・エルツヘルツォーク・ライナー
Papyrus Erzherzog Rainer
2001 オーストリア国立図書館が所蔵する18万点のパピルス古文書コレクション。この種のものとして世界最大規模で、古代エジプトで書かれた『死者の書』(前1500年)から、1500年ごろにヘブライ語で印刷された物語作品までを網羅。
ウィーン市立図書館のシューベルト・コレクション
The Vienna City Library Schubert Collection
2001 実業家ニコラウス・ドゥンバ(18301900)の遺言により、ウィーン市立図書館が遺贈を受けたことに始まるコレクション。作曲家フランツ・シューベルト(17971828)に関する記録群としては世界最大で、自筆譜をはじめとする初稿を数多く所蔵し、シューベルト研究の中核施設としても機能している。
オーストリア国立図書館の「アトラス・ブラウ・ファン・デル・ヘム」
The Atlas Blaeu-Van der Hem of the Austrian National Library
2003 これまで発行された地図帳のなかで、最も美しく、最も見事なものとされる。全50巻からなり、2400点もの図面、絵画、素描をもって全地表面を描いている。発行は17世紀。「視覚版百科事典」を目指して編集されたものである。
ブラームス・コレクション
Brahms Collection
2005 ヨハネス・ブラームス(183397)はロマン派を代表する大作曲家で、現在の映画音楽の原型となった楽曲を残すなど、文化史上の重要性も高い。ウィーンの楽友協会には、死後に遺贈された自筆譜や書簡、書籍などが保管されている。自筆譜には『ダブル・コンチェルト』『ドイツ・レクイエム』『弦楽四重奏曲』(第1番〜第3番)の全譜面のほか、交響曲第5番など未完成・未発表曲のスケッチも含まれている。
ゴシック建築の製図コレクション
Collection of Gothic Architectural Drawings
2005 ウィーン造形美術アカデミーが所蔵する282枚の建築図面。このうち143枚は裏面にも描かれているため、図面総数は425点になる。1辺がおよそ5cmのものから4.5mのものまで、サイズもさまざま。世界に現存する中世のゴシック建築図面は500点足らずといわれているため、実に8割以上がこのコレクションに含まれていることになる。そのためゴシック建築史上、最も重要な資料群の一つに位置づけられる。
保存されている図面はウィーン大聖堂のほか、プラハ(チェコ)、レーゲンスブルク、ウルム、ケルン、アウグスブルク(ドイツ)、ストラスブール(フランス)の各大聖堂のもの。そのほかにも多くの教会建築が含まれ、中世後期から近代初期にかけての文化交流に関する証拠としても重要。
コルヴィナ文庫コレクション
The Bibliotheca Corviniana Collection
2005 (解説はハンガリーの項を参照)
※イタリア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー共同登録
タブラ・ペウティンゲリアーナ
Tabula Peutingeriana
2007 タブラ・ペウティンゲリアーナ(ポイティンガー図)は、もともとは3世紀にまでさかのぼるとされる道路地図。縮尺率を考慮せずに古代ローマ街道を描いている。現存するのは12世紀末に羊皮紙に描かれた複製のみ。ばらばらに切り離された状態で、11葉がオーストリア国立図書館にて保管されている。古代ローマ帝国の版図を超え、アレクサンダー大王が支配下に治めた中東も描かれている。
→この地図を見る History and Geography of Europe
アルノルト・シェーンベルクの遺産
Arnold Schönberg Estate
2011 作曲家アルノルト・シェーンベルク(1874〜1951)は、「十二音音楽」という新しい技法による音楽を創造し、20世紀の芸術音楽の展開に決定的な影響を与えた。30代初めから、表現主義的な無調音楽を確立し、第二次大戦中に米国に亡命。戦中・戦後はナチズムへの抵抗音楽を発表した。コレクションは、譜面やスケッチなど自筆の音楽書類8000枚、音楽理論や講義録、さらには政治的・民族的意見をまとめた随想を中心とする文書1万2000枚、本人や家族、弟子を写した写真3500点などで構成される。
参考/『日本大百科全書』(小学館)
オーストリア国立図書館の『マインツ詩篇』
Mainz Psalter at the Austrian National Library
2011 『グーテンベルク聖書』に続く、印刷上の大偉業として歴史に名を残すのが、この『マインツ詩篇』である。1457年8月14日、グーテンベルクの弟子ペーター・シェーファー(1425?〜1503)が出版した。活版印刷で世に出された最初の詩篇であり、何より、多色刷りである点で注目されている。



■オランダ
  名称 登録年 説明

TANAPより転載
オランダ東インド会社の文書
Archives of the Dutch East India Company
2003 近世初期のヨーロッパ商社として、最も強烈な存在感を放っている東インド会社(16021795)。総計2500万ページにもおよぶ同社の記録が、ハーグ(オランダ)、チェンナイ(インド)、ジャカルタ(インドネシア)、コロンボ(スリランカ)、ケープタウン(南アフリカ)の各地にて保管されている。ハーグにあるオランダ国立公文書館(左写真)には、1万5000点近くにおよぶ写本・文書・書簡・図面が収蔵されている。
これらの史料に関しては2000〜08年、「世界の記憶」登録運動と連動して、オランダ国立公文書館とライデン大学により、TANAP(Towards a New Age of Partnership)プロジェクトが行われた。これは、オランダ国立公文書館がもつ史料保存技術を各国の文書館に提供し、同時に目録などの整備を行うというものである。概要はTANAPのサイトで紹介されている。
http://www.tanap.net/
参考/島田竜登著「歴史学はすでに『国境』をこえつつある グローバル・ヒストリーと近代史研究のための覚書」
※オランダ、インド、インドネシア、スリランカ、南アフリカ共同登録
エッツ・ハイム図書館
Library Ets Haim - Livraria Montezinos
2003 エッツ・ハイム図書館は1616年に設立された、ユダヤ人資料の調査・研究に特化した世界初の図書館。1484年から現在までに出版された3万点の書籍と、1282年から20世紀までに作成された500点の写本を蔵する。
アンネ・フランクの日記
Diaries of Anne Frank
2009 アンネ・フランク(1929〜45)が1942年6月14日から44年8月1日まで記した日記。ナチスによるユダヤ人強制収容からのがれ、アムステルダムの屋根裏部屋に隠れ住んでいたフランク一家4人と、同居人4人の日常が描かれている。登録対象は日記が書かれたノート3冊とルーズリーフ360枚、自作の物語をつづったノート1冊、「好きなもの」を書いたノート1冊。日記は65言語に翻訳され、世界で最も広く読まれている書籍の一つとなっている。
→この作品を読む Amazon.co.jp:アンネの日記(岩波文庫)
ミデルブルフ商業会社(MCC)の文書
Archive Middelburgsche Commercie Compagnie (MCC)
2011 18世紀、オランダにおける大西洋三角貿易をになったのが、ゼーラント州ミデルブルフに本社をかまえたミデルブルフ商業会社である。同社の交易の3分の1は奴隷交易だった。登録された文書は、当時の奴隷交易についての理解を助ける貴重な資料となっている。
※オランダ、オランダ領キュラソー、スリナム共同登録
デスメット・コレクション
Desmet Collection
2011 1907〜16年の35ミリフィルム933本、ポスター1050枚などで構成されるコレクション。20世紀初頭にオランダで映画配給を行ったジャン・デスメット(1875〜1956)のコレクションで、1957年にアイ・フィルム協会に遺贈されたものである。コレクション中のフィルムの9割以上は1907〜16年に作成されたもので、そのほとんどが上映時間10分前後のショート・フィルムである。
オランダ西インド会社の文書
Dutch West India Company (Westindische Compagnie) Archives
2011 「世界初の株式会社」といわれるオランダ東インド会社の設立から19年後の1621年、アフリカ西海岸や新大陸、ニューギニア東方の太平洋の島々との交易を目的とする、オランダ西インド会社が設立された。活動を停止する1791年までの間に書き残された奴隷交易の記録や、初期の外交史を物語る史料などが、8カ国・地域の10機関で保管されている。
※英国、オランダ、アメリカ合衆国、ブラジル、ガーナ、ガイアナ、オランダ領アンティル、スリナム共同登録
『ラ・ガリゴ』
La Galigo
2011 スラウェシ島南部で話されているブギス語は「美しく、かつ難解」と評価されているが、このブギス語で書かれた最も有名な書が、叙事詩『ラ・ガリゴ』である。その起源は王家の伝統にあり、14世紀には成立したと考えられている。上質な文学表現のなかに、イスラム以前の神話体系が表されているのが特徴。1850年代に書かれた2851ページの写本(オランダのライデン大学図書館所蔵/左写真)と、19世紀前半に書かれた217ページの写本(インドネシアのラ・ガリゴ博物館所蔵)が登録された。
※オランダ、インドネシア共同登録



■グルジア
  名称 登録年 説明
グルジアのビザンチン写本
Georgian Byzantine Manuscripts
2011 ビザンチン文化の展開を教えてくれる451点の写本コレクション。いずれもトビリシの国立写本センターが所蔵している。制作は10〜15世紀。ビザンチン文学史を研究するうえで貴重な資料であるばかりか、創造性にも見るべきものが多い。1054年にエジプトのシナイ山で書かれた多彩色の「アラヴェルディの四福音書」(左写真)、金箔貼りの銀製カバーをもつ12世紀の「ベルタの四福音書」などは、ビザンチン芸術の至宝というにふさわしい。



■クロアチア
  名称 登録年 説明

wikipediaより転載
タブラ・ハンガリエ
Tabula Hungariae
2007 1528年以前に印刷された65cm×85cmの地図。北東を上にして、ハンガリー王国の版図を描いている。当時存在した集落や国家のランドマークが詳細に描かれ、書き込まれている自然地名は1400、集落名は1270を数える。ハンガリーの国立セーチェーニ図書館と、クロアチアのザグレブ国立大学図書館で保管されている地図が登録対象。
※クロアチア、ハンガリー共同登録



■スイス
  名称 登録年 説明
ジャン・ジャック・ルソーのジュネーヴ・コレクションとヌーシャテル・コレクション
Jean-Jacques Rousseau, Geneva and Neuchâtel Collections
2011 ルソーの代表作『社会契約論』『ジュネーヴ草稿』のほか、遺作となった『孤独な散歩者の夢想』など、数々の作品の原稿をはじめ、書簡や図版などが登録対象となった。ジュネーヴ図書館、ヌーシャテル市立・大学図書館、ジュネーヴ市とヌーシャテル市のルソー協会で保管されている。



■スウェーデン
  名称 登録年 説明
アストリッド・リンドグレーンの文書
Astrid Lindgren Archives
2005 アストリッド・リンドグレーン(19072002)は世界的に知られる児童文学作家。このコレクションは彼女の手書き原稿を中心に構成され、わずかながら、初期の未発表作品も含まれている。
エマヌエル・スウェーデンボリ・コレクション
Emanuel Swedenborg Collection
2005 最も有名なスウェーデン人作家の一人が、エマヌエル・スウェーデンボリ(16881772)。もともと科学者だったが、のちに心霊研究を行い、キリスト教を批判するようになった。とくに最後の25年間は研究と著述に没頭し、聖書に関する分析を行っている。死後、2万枚の原稿が、ストックホルムの王立科学アカデミーに遺贈された。
イングマール・ベルイマンの文書
Ingmar Bergman Archives
2007 20世紀を代表する映画監督、イングマール・ベルイマン(19182007)は、2002年より、自らが65年かけて収集・整理したコレクションをスウェーデン国立映画協会に寄贈し始めた。コレクションはオリジナルの脚本やノート類、写真、メイキング映像などで構成される。
アルフレッド・ノーベル一家の文書
The Alfred Nobel Family Archives
2007 ノーベル兄弟が開発に携わったバクー油田に関する記録をはじめ、ロシア帝国で工業・商業を営んだノーベル一家の書簡、特許申請書、訴状などの文書記録群。アルフレッド・ノーベル(183396)ほか、父イマヌエル(180172)、兄ロベルト(182996)、ルートヴィヒ(183188)らにまつわる18401900年ごろの記録が中心。

wikipediaより転載
銀文字写本
Codex Argenteus - the 'Silver Bible'
2011

6世紀初頭、北イタリアのおそらくラヴェンナで書き写された考えられている四福音書。朱に染めた羊皮紙に金銀の文字を用い、失われた言語のゴート語で書かれている。もとは330ページ程度あったとされ、そのうち半分強の188枚しか残っていないが、それでも現存する最も網羅的なゴート語文献として、民族的・言語学的に極めて重要な資料となっている。ウプサラ大学図書館で厳重に保管されている。
→もっと知りたい人は Amazon.co.jp:銀文字聖書の謎 (新潮選書):小塩 節

ストックホルム都市計画委員会の文書
Stockholm City Planning Committee Archives
2011 1713年から現在までのストックホルムの都市計画に関する資料。一つの都市計画に関して、市域の全域、計画の全段階の網羅することから、顕著な記録といえる。また、図面も、貧困層の簡素な住宅から豪華な邸宅まで、行政建築から教育施設、商業・産業建築まで、あらゆる種類の建物を含んでいる。



■スペイン
  名称 登録年 説明
トルデシリャス条約
Treaty of Tordesillas
2007 大航海時代に新世界をうばい合ったスペインとポルトガルの間で1494年6月7日に結ばれた条約。カボベルデ諸島の西370リーグ(約2186km)のところに引いた子午線の東をポルトガル領、西をスペイン領とするものである。
スペイン・セビリアのインディアス総合古文書館(建物は1987年に世界遺産登録)に保管されているのが、カスティーリャ語版(左写真)。1494年7月2日、アレバロにて、アラゴン王フェルナンド2世(位1479〜1516)とカスティーリャ女王イサベル1世(位1474〜1504)により批准された。
※スペイン、ポルトガル共同登録
サンタ・フェ協約書
Santa Fe Capitulations
2009 1492年4月17日、クリストファー・コロンブス(1451?1506)とアラゴン王フェルナンド2世、カスティーリャ女王イサベル1世が署名した協約書。大西洋航海を前に、コロンブスを、新たに発見されるであろう大陸や島々の総督とし、そこで得られる資源の一部を彼の収入とすることを認めたもの。



■スロバキア
  名称 登録年 説明
イスラム写本のベシャギッチ・コレクション
Basagic Collection of Islamic Manuscripts
1997 1619世紀にボスニアのイスラム教徒が残した文学作品(散文や詩)、学術書(技術・法律・歴史・イスラム神秘主義に関わるもの)、それにクルアーン(コーラン)など284点の写本からなる。書かれている言語はアラビア語のほか、トルコ語、ペルシア語などさまざま。ブラチスラバ大学の図書館で保管されており、旧ユーゴ内戦中の1992年にサラエボ国立図書館(ボスニア・ヘルツェゴビナ)が焼失してからは、ボスニアのイスラム教徒の生活をいまに伝える唯一のコレクションとなっている。
ブラチスラバ参事会図書館の装飾写本
Illuminated Codices from the Library of the Bratislava Chapter House
1997 ヨーロッパの中央に位置するスロバキアでは古来多くの政治権力が衝突し、そのたびに貴重な記録遺産が失われてきた。ブラチスラバ参事会図書館には1219世紀の古書3000点が保管されていて、そのうち100点ほどが中世のオリジナルの写本である。なかでも全5巻の交唱聖歌集の写本(1516世紀)は華美な装飾をもち価値が高い。
バンスカー・シュティアフニツァの鉱山事務所の設計図と鉱山地図
Mining maps and plans of the Main Chamber - Count Office in Banská Stiavnica
2007 17世紀から20世紀初頭にいたる2万点の文書・地図・図面資料。地図類はスロバキアや周辺各国の地下坑道に関するもので、なかには近世の鉱山での採掘風景を描いたものもある。なお、バンスカー・シュティアフニツァの鉱山都市と関連する鉱業遺構は、1993年に世界遺産に登録された。



■スロベニア
  名称 登録年 説明
スプラスル古写本−3月のメノロギオン
Codex Suprasliensis - Mineia cetia, Mart (The Suprasl Codex - Menology, March)
2007 9世紀に用いられた古代教会スラブ語で書かれた写本は世界に数点しか現存しないが、このスプラスル写本は最も長文で、この言語を研究するうえで第一級の情報を提供する。その内容は、聖人の生涯などを記したメノロギオン(教会暦)のうち、3月の部分。東方正教のスラヴ地方への布教に関する初期の記録としても重要である。全285枚で構成され、スロベニア国立大学図書館に118枚、ロシア国立図書館に16枚、ポーランドの国立図書館に151枚が分割保管されている。
※スロベニア、ポーランド、ロシア共同登録



■セルビア
  名称 登録年 説明
ニコラ・テスラの文書
Nikola Tesla's Archive
2003 セルビア出身の米国人発明家ニコラ・テスラ(1856〜1943)は、とりわけ電気工学における功績が大きく、現代社会の礎を築いた科学者の一人である。テスラの特許出願書や、数々の草稿、実験データ、発明品を撮影した写真などが登録された。
ミロスラヴ福音書−1180年に起源をもつ写本
Miroslav Gospel - Manuscript from 1180
2005 中世、セルビア支配下にあったハム地方のミロスラヴ王子(?〜1198)が作成を命じた福音書。セルビア語の挿絵入り写本としては現存最古のもの。東方正教の様式による写本に、中世イタリアに起源をもつ細密画の技術を組み合わせていることから、西欧美術と東欧美術の合作として名高い。全181枚で構成され、ベオグラード国立美術館に保管されているが、第166葉のみサンクトペテルブルクのロシア国立図書館が所有している。
章頭飾りは第1葉を除いて簡素だが、頭文字装飾は各ページで華麗になされている。たとえば「V」の文字は、ヨハネ(第36葉)、マルコ(第61葉)、アレキサンダー大王(第65葉)、聖母マリア(第175葉)など、ページごとに様々な人物で装飾されている。また、第115葉で見られる、2羽の鳥をあしらった「P」の頭文字は、ベオグラード国立美術館のロゴマークにも採用されている。



■チェコ
  名称 登録年 説明
チェコ宗教改革の中世写本コレクション
Collection of medieval manuscripts of the Czech Reformation
2007 14〜16世紀、主にフス派が中心となって行われたチェコ宗教改革に関する写本群。手書きの写本と初期の活版印刷本からなり、ヨーロッパ史上の一つの転換点となった時代をいまに伝える歴史物語でもある。
ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人亡命者の定期刊行物コレクション(1918〜45)
Collection of Russian, Ukrainian and Belorussian émigré periodicals 1918-1945
2007 戦間期、チェコスロバキアには世界各国から亡命者が入国し、彼らの活動拠点が形成された。同国政府が彼らを支援したため、多くの出版物が世に送り出されたのである。スラブ図書館には当時の亡命者たちの生活の手がかりとなる貴重なコレクションが残る。
1637〜1754年の大学論文526点のコレクション
Collection of 526 prints of university theses from 1637-1754
2011 中央ヨーロッパ最古のカレル大学(1348年創立)で印刷された論文。単一の教育機関でつくられたこの種の論文記録群としては世界最大。当時のヨーロッパの大学を満たしたバロックの風潮や、教科内容に関する資料でもある。



■デンマーク
  名称 登録年 説明
デンマークの海外交易会社の記録
Archives of the Danish overseas trading companies
1997 ヨーロッパ諸国やロシア、トルコ、北アフリカ、南北アメリカの各国とデンマークとの交易を記録した古文書で、国立公文書館に保管されている。王室が発行した書簡や地図、航海日誌など、およそ4000点で構成。
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの原稿と書簡
Manuscripts and correspondence of Hans Christian Andersen
1997 デンマーク政府は、「王立図書館の貴重書」(Treasures from the Royal Library - National Collections)の名称で、6つの文書群を世界の記憶に推薦した。ユネスコの公式サイトでは、このうち左掲の2件のみがリストアップされている。物件の解説ページでは、いずれも「王立図書館の貴重書」について説明されているので、一括登録されたのか、2件のみが登録されたのか、判断しかねる。
なお、デンマーク政府が推薦した6つの文書群の概要は以下のとおり。
(1) ハンス・クリスチャン・アンデルセンの原稿と往復書簡……童話作家アンデルセン(1805〜75)の原稿コレクションとして世界最大。恋人ルイーサ・コリン宛のものをはじめ、膨大な数の書簡類を含む。
(2) セーレン・キルケゴールの文書……『死に至る病』などの著作で知られる哲学者キルケゴール(1813〜55)の原稿、草稿、メモ、書簡などが対象。
(3) 『ダルビー・ブック』……1060年ごろに羊皮紙に書かれたラテン語の福音書。全285葉で、うち4葉にはページ1面に福音者のイラストが描かれている。
(4) 『インカ年代記』……インカ人のワマン・ポマ(1550?〜1616?)がペルーで作成した年代記。2007年、『新しい記録とよき統治』の書名で「世界の記憶」に登録。
(5) 『デンマーク人の事績』……デンマーク最初の年代記で、このうち1200年ごろに書かれた最古の写本のうち現存する4葉を推薦。
(6) 極地の地図集……18〜20世紀に作成されたグリーンランドと周辺地域の地図。
セーレン・キルケゴールの文書
The Søren Kierkegaard Archives
1997
リンネ・コレクション
The Linné Collection
1997 生物学者カール・リンネ(170778)とその後継者に関する、デンマーク国立科学医学図書館所蔵の文書。1735年以降のおよそ2000点からなる。リンネ・コレクションとしては世界で4番目の規模。
『新しい記録とよき統治』
El Primer Nueva Coronica y Buen Gobierno
2007 スペイン植民化前の南米アンデスに関する記録を含む『新しい記録とよき統治』は、インカ人ワマン・ポマ(1617世紀)が1615年に記した書簡。当時のアンデスについて、先住民の視点で書かれた唯一の記録とされる。1200枚の手書きの書簡(うち400枚は全面がイラストになっている)で、1908年に再発見された。
海峡通航税記録集
Sound Toll Registers
2007 1497年から1857年まで、デンマークとスウェーデンの間のエーレスンド海峡を航行する船舶に課していた通航税に関する記録。とくに1557年から、廃止される1857年までの300年間は連続した記録が残り、バルト海地方の国家・経済史の貴重な資料となっている。なお、船舶の監視に使われたクロンボー城は2000年に世界遺産に登録された。
アルナマグナイアン写本コレクション
The Arnamagnæan Manuscript Collection
2009 (解説はアイスランドの項を参照)
※アイスランド、デンマーク共同登録
一般に『ハンブルク聖書』または『ベルトルドゥス聖書』と呼ばれるラテン語聖書第1巻〜第3巻
MS. GKS 4 2°, vol. I-III, Biblia Latina. Commonly called "the Hamburg Bible", or "the Bible of Bertoldus"
2011 1255年にハンブルク大聖堂に納められた、3巻からなるラテン語の聖書。89カ所にほどこされている文頭の装飾文字の部分では、羊皮紙を使った中世の書籍製作の工程が描かれている。ヨーロッパの中世書籍文化の証拠であり、不朽の記念碑。



■ドイツ
  名称 登録年 説明
ベルリン録音資料館所蔵の初期シリンダーレコードによる世界の伝統音楽記録(18931952
Early cylinder recordings of the world's musical traditions (1893-1952) in the Berlin Phonogramm-Archiv
1999 ヨーロッパ音楽およびポピュラー音楽を除いた、世界のあらゆる音楽を記録した145000点の音声資料。
→この音声を聴く Experimental cylinders of the Berliner Phonogramm-Archiv
『メトロポリス』−部分保存第1:2001年の修復・復元ネガ
"METROPOLIS" -Sicherungsstück Nr. 1: Negative of the restored and reconstructed version 2001
2001 『メトロポリス』はドイツ無声映画芸術の代表作。フリッツ・ラング監督(18901976)により1926年に制作、27年に公開された。第二次世界大戦時の混乱でオリジナルのネガは紛失したが、2001年に復元版が完成し、ベルリン映画祭で上映。「世界の記憶」に登録されたのも、このときの復元ネガである。
→この作品を見る Amazon.co.jp:メトロポリス 完全復元版(2枚組)[DVD]
上質紙に印刷された『グーテンベルク42行聖書』と当時の文書的背景
42-line Gutenberg Bible, printed on vellum, and its contemporary documentary background
2001 ヨーロッパの活版印刷の創始者とされるヨハネス・グーテンベルク(1398?1468?)は、1445年ごろにドイツのマインツに印刷所を設立した。ここで印刷された代表的な書籍が、本文を42行組みでレイアウトした『42行聖書』である。印刷は145256年。50部ほどが現存するうち、ゲッティンゲン大学図書館が保管する1点が登録された。また、原稿の手本となった『ゲッティンゲン・モデル・ブック』と、聖書印刷の事実を記録した唯一の資料『ヘルマスペルガー文書』も同時登録された。
ちなみに『ヘルマスペルガー文書』の内容は、グーテンベルクが、印刷所設備のために貸与された資金を『42行聖書』の印刷に使ってしまい、貸し手から訴追されるというものである。

wikipwdiaより転載
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:『交響曲第9番』ニ短調作品125
Ludwig van Beethoven: Symphony no 9, d minor, op. 125
2001 ベートーヴェン(17701827)の交響曲第九番は世界で最も有名な楽曲の一つであり、19世紀以降の音楽史に計り知れないほど大きな影響を与えた。登録対象にはベートーヴェンの署名入り自筆譜だけでなく、6点の歴史的録音の音源も含まれた。
音源として登録されたもののうち、1923年に行われた世界初の全楽章録音(ブルーノ・ザイドラー=ヴィンクラー指揮、ベルリン新交響楽団、第2楽章のみ部分演奏)は、とくによく知られている。
→この作品を聴く YouTubeにヴィンクラー指揮のレコードをかけた動画あり(第1楽章第2楽章第3楽章第4楽章前半後半
ゲーテ・シラー記録保管所所蔵のゲーテの文学遺産
The literary estate of Goethe in the Goethe and Schiller Archives
2001 世界で最も有名なドイツ人作家ゲーテ(17491832)の著作を保管する目的で設立されたコレクション。小説はもとより、日記や書簡、科学に関するエッセイまで、ゲーテが生涯に著したあらゆる文書を保管する。ゲーテの創作を網羅するということは、すなわち、ドイツの古典主義時代を代表する一大記録をなすということでもある。
ライヒェナウ島(コンスタンツ湖)の修道院でオットー朝時代に作成された装飾写本
Illuminated manuscripts from the Ottonian period produced in the monastery of Reichenau (Lake Constance)
2003 ドイツのオットー朝時代(9361024)の典型的な装飾本。10世紀後半から11世紀初頭につくられた10点の写本が登録対象。ライヒェナウ島のマリーエン修道院での装飾写本制作は、皇帝や有力な司教の支援を受けたため発達し、当時のヨーロッパで最高水準に達していた。挿絵もまた当時の宗教観を教えてくれる貴重な資料で、カロリング王朝やビザンツ帝国時代の作風がもとになっている。宗教的な意味合いは、これら旧時代のものを引きずっているが、作風はもはや完全に独自のスタイルを確立している。
『子どもと家庭の童話』
Kinder- und Hausmärchen (Children's and Household Tales)
2005 いわゆる『グリム童話』。おそらく、ドイツ語圏で最も広く読まれている本だろう。民間に伝わる童話を学術的に収集し、組織的に編纂した、世界で最初の書籍であり、民話のために文学としての形式を創造した最初の作品でもある。「世界の記憶」には、グリム兄弟(兄17851863、弟17861859)が自身の手で注釈を加えた初期原稿や、初版(1812年)前の1810年に書かれた草稿「エーレンベルク稿」などが登録された。
参考/『世界大百科事典』(平凡社)
→この作品を読む Amazon.co.jp:完訳 グリム童話集(岩波文庫)
コルヴィナ文庫コレクション
The Bibliotheca Corviniana Collection
2005 (解説はハンガリーの項を参照)
※イタリア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー共同登録

wikipediaより転載
プトレマイオスの慣例に習いアメリゴ・ヴェスプッチの探検を組み入れた世界地図
Universalis cosmographia secundum Ptholomaei traditionem et Americi Vespucii aliorumque Lustrationes
2005 1507年に印刷された地図。製作者の名を取り、一般には「ヴァルトゼーミュラー地図」として知られている。「アメリカ」という地名を記載した最初の地図で、米国議会図書館に世界でただ1点が保管されているのみ。この唯一の図面は、2003年に移管されるまでドイツのヴァルトブルク・ヴォルフエッグ図書館が所蔵していた。当時からドイツ国内で「世界の記憶」への推薦の動きがあり、現在では米国・ドイツの2カ国での登録という扱いになっている。
→この地図を見る American Memory
※ドイツ、アメリカ合衆国共同登録
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツの原稿コレクション中のゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ往復書簡
Letters from and to Gottfried Wilhelm Leibniz within the collection of manuscript papers of Gottfried Wilhelm Leibniz
2007 『単子(モナド)論』の著者として知られる哲学者ライプニッツ(16461716)の原稿コレクションは5万点、全15万〜20万枚を数える。このなかに、彼が1100人の文通相手に送り、また返信された書簡1万5000点が含まれている。文通相手はヨーロッパはもとより、遠く中国にまでおよんだ。
『ニーベルンゲンの歌』、中世ヨーロッパに起源をもつ英雄詩
Song of the Nibelungs, a heroic poem from mediaeval Europe
2009 『ニーベルンゲンの歌』は、民族移動期のブルグント族の史実や伝説に題材をとった叙事詩で、英雄ジークフリートの活躍と死、妻クリームヒルトによる復讐がうたわれている。古代バビロニアの『ギルガメッシュ叙事詩』、古代インドの『マハーバーラタ』、中世日本の『平家物語』とならぶ、世界で最も有名な英雄譚の一つ。全編が完成したのは1204年ごろと推定されている。
その存在は長い間忘れられていたが、18世紀になって続々と写本が発見された。異本が多く、発見された写本は断編を入れれば37種。そのうち、13世紀初頭に
アルプス地方で筆写された3点の古写本が「世界の記憶」の登録対象。なかでも写本B(左写真)が最も原型をとどめるとされる。
参考/『ニーベルンゲンの歌』(相良守峯訳、岩波文庫)
→この作品を読む Amazon.co.jp:ニーベルンゲンの歌(岩波文庫)
1886年のベンツの特許
Benz Patent of 1886
2011 1886年にカール・ベンツ(1844〜1929)がドイツ帝国より認可された「ガスエンジン駆動の乗り物」の特許。史上初の実用的なガソリン自動車とされる「ベンツの三輪車」の特許である。カール・ベンツは特許取得前の1878年、独力で2ストローク・ガソリンエンジンを完成。83年にベンツ&C・ライン・ガスエンジン工場を設立し、84年には「三輪車」に用いられた4ストローク・エンジンを製作している。
参考/『日本大百科全書』(小学館)
ベルリンの壁の建設と崩壊、1990年のツー・プラス・フォー条約
Construction and Fall of the Berlin Wall and the Two-Plus-Four-Treaty of 1990
2011 1989年11月9日の夜、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊した。自由と民主主義を求め、ヨーロッパが革命を起こした瞬間である。壁の崩壊は、東西ドイツの物理的な統一を意味するだけでなく、ヨーロッパを分断していた鉄のカーテンが開かれ、第二次世界大戦後の冷戦が終結したことを象徴的に物語るできごとだった。
ツー・プラス・フォー(2+4)条約は、正式にはドイツ最終規定条約といい、2カ国(東西ドイツ)の統一後における、ドイツと、占領4カ国(米国、英国、フランス、ソ連)との関係を定めたもの。90年9月12日にモスクワで署名され、同年10月3日にドイツは統一された。



■トルコ
  名称 登録年 説明
カンデリ地震研究所の写本
Kandilli Observatory and Earthquake Research Institute Manuscripts
2001 オスマン帝国で発達したイスラム科学の中心的な学問が、数学・医学・天文学だった。カンデリ地震研究所付属図書館では、とくに天文学や占星術、数学などの書籍を多く収集している。これらの学問分野の古写本コレクションとして世界最大規模のもので、合計5811339点の資料より構成される。
ボアズキョイ出土のヒッタイトくさび型文字銘板
The Hittite cuneiform tablets from Bogazköy
2001 ボアズキョイ(古代名ハットゥシャ、1986年世界遺産に登録)からは、ヒッタイト文明に関する現存する唯一の文字記録である、くさび形文字を刻んだ粘土板が出土した。合計2万5000点近くにのぼり、当時の社会や政治、商業、軍事、宗教、法律、芸術などの描写が見られる。ヒッタイトとエジプトの恒久平和を約束した、かの有名なカデシュ条約(前1284年ごろの世界初の国際条約)の刻銘も含まれる。
スレイマニエ図書館所蔵のイブン・シーナーの作品群
The works of Ibn Sina in the Süleymaniye Manuscript Library
2003 イブン・シーナー(9801037)は、ゲーテの知能とレオナルド・ダ・ヴィンチの才能をあわせもつとたたえられる賢人。近世まで医学テキストとして用いられた『医学典範』を著すなど、医師・科学者としての才覚はもとより、偉大な哲学者としても広く知られる。その生涯に450ほどの著作を残したとされるが、現存するものはおよそ240点。スレイマニエ図書館は、現存する全作品の写本・複製を保管しており、なかには11世紀にさかのぼるものもある。



■ノルウェー
  名称 登録年 説明
ヘンリック・イプセン:『人形の家』
Henrik Ibsen: A Doll's House
2001 1879年に完成したヘンリック・イプセン(1828〜1906)作の戯曲『人形の家』は、女性解放論者と保守派とのあいだに激しい賛否論争を巻き起こし、上演を禁じる国も出たほどだった。その一方で主人公のノラは、新しい女性の代名詞にもなった。ノルウェー国立図書館蔵のイプセン自筆原稿が登録された。
参考/『日本大百科全書』(小学館)
→この作品を読む Amazon.co.jp:人形の家(新潮文庫)
ベルゲンのハンセン病文書
The Leprosy Archives of Bergen
2001 ハンセン病と人類の格闘を物語る、医師ダニエルゼン(181594)やアルマウェル・ハンセン(18411912)にまつわる一連の記録。19世紀、ベルゲンはハンセン病研究の一大拠点となり、1873年にはこの地でらい菌(Mycrobacterium leprae)が発見され、ハンセン病が遺伝病ではないことが証明された。「世界の記憶」には、ハンセン病博物館を併設する聖ヨルゲン病院をはじめ、ベルゲン市内の6機関が所有する記録を登録。その内容は、ハンセンらの検査報告や日記、書簡、器具・備品目録、患者の職業や食事に関する記録、各ハンセン病院との通信履歴、帳簿類など、多岐におよぶ。
ロアール・アムンゼンの南極点遠征(19101912
Roald Amundsen's South Pole Expedition (1910-1912)
2005 総勢5名のアムンゼン隊による人類初の南極点到達は、19111214日。その歴史的瞬間にいたる道のりを記録したフィルムが登録対象。
→この動画を見る ナショナル・ジオグラフィックで1分40秒に編集した動画を公開している
トール・ヘイエルダールの記録
Thor Heyerdahl Archives
2011 作家・科学者・探検家として多方面で活躍したトール・ヘイエルダール(1914〜2002)は、その生涯に数々の写真、フィルム、それに、歴史的・芸術的・文化的価値の高い文書を残した。とくに、彼が撮影した写真やフィルムのなかには、近代化のため撮影後失われたり変容した風景を切り取ったものもあり、現代社会をひもとくうえでも大変貴重な資料である。



■ハンガリー
  名称 登録年 説明
ティハニー・カルマンの1926年の特許出願「ラジオスコープ」
Kalman Tihanyi's 1926 Patent Application "Radioskop"
2001 ハンガリーの物理学者ティハニー・カルマン(18971947)が1926年に提出した、テレビ放送システム「ラジオスコープ」の特許出願書類。彼は28年に英国とフランスでも特許を出願したが、その内容をもとに米国の技術者ウラジミール・ツヴォルキン(18891982)が新たな受像技術を開発。現在のテレビの原型が確立された。
コルヴィナ文庫コレクション
The Bibliotheca Corviniana Collection
2005 コルヴィナ文庫は、ルネッサンス時代のヨーロッパで、ヴァティカンに次ぐ第二の規模を誇る図書館だった。ハンガリー王マーチャーシュ(位145890)が創設し、哲学、神学、歴史、法学、文学、地理学、自然科学、医学、建築学などあらゆるジャンルの図書2000点以上を所蔵した。その後のイスラム勢力の侵攻で蔵書はしだいに失われたが、216点が現存する。このうちハンガリー本国に残るのは53点。ほかはオーストリア(39点)、イタリア(49点)などで保管されている。
※イタリア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー共同登録
タブラ・ハンガリエ
Tabula Hungariae
2007 (解説はクロアチアの項を参照)
※クロアチア、ハンガリー共同登録
ハンガリー科学アカデミー図書館のショマ文書
Csoma Archive of the Library of the Hungarian Academy of Sciences
2009 アレクサンダー・ショマ・デ・コロス(17841842)は、チベット文化をヨーロッパに伝えた最初の人物。彼はチベット語の文法書とともに、初の「チベット語=英語辞典」を1834年に編纂した。これらの業績のうち、チベット語に関する概要を記した4冊の「アレクサンダー・ブック」や、ショマが購入したり自ら筆写した32点のチベット語の写本・版木類、250点近い書簡などが登録された。
ボーヤイ・ヤーノシュ:『空間の絶対的真性科学の証明のための補遺』(1832年)
János Bolyai: Appendix, scientiam spatii absolute veram exhibens. Maros-Vásárhelyini, 1832
2009 ボーヤイ・ヤーノシュ(180260)は非ユークリッド幾何学の創始者の一人。父ボーヤイ・ファルカシュ(17751856)も著名な幾何学者で、平行線理論の研究者だった。ヤーノシュは父が証明できなかった「直線外の1点をとおり、この直線と交わらない直線は1本ではない」ことを、父の著書の付録として1832年に発表。わずか26ページのうちに理論を展開し、その名を不朽ならしめた。ただし、これに先立つ1816年ごろには、ガウス(17771855)もこのことを発見していた。(しかしガウスは発表していなかった)。
参考/『世界大百科事典』(平凡社)、雄松堂広報誌->西洋文明との出会いPart2



■フィンランド
  名称 登録年 説明
AE・ノルデンショルド・コレクション
The A.E. Nordenskiöld Collection
1997 「地図製作史学」とでもいうべき研究の先駆者となった探検家アドルフ・エリク・ノルデンショルド(18321901)が収集した地図や地誌、紀行文。とりわけ地図製作の初期の歴史に関わるものや、「プトレマイオス図」の印刷本、海図のコレクションが顕著。
ラジヴィウ家の文書とネスヴィシェ図書館コレクション
Radzwills' Archives and Niasvizh (Nieswiez) Library Collection
2009 (解説はベラルーシの項を参照)
※ウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、ロシア共同登録



■フランス
  名称 登録年 説明
「人間と市民の権利宣言」のオリジナル原稿(1789年、91年)
Original Declaration of the Rights of Man and of the Citizen (1789 1791)
2003 1789年にフランス国民議会が議決した「人権宣言」(人間と市民の権利宣言)。前文と17条の条文からなり、第1条で絶対王政に対する自由・平等の原理を、第3条で国民主権をうたっている。フランス革命の基本原則ともいうべき思想で、フランスの「1791年憲法」の前文になった。1948年の国連宣言をはじめ、後代への影響も大きい。
メートル法の導入(17901837年)
Introduction of the decimal metric system, 1790-1837
2005 「北極から赤道までの距離の1000万分の1の長さを1メートルとする」と定めた提案書(1790年)から、フランスで公布された「メートル法以外の単位の使用を禁止する」という法律(1837年)まで。現在、あまねく世界で使われているメートル法の提案から導入に至る経緯を物語る9点の資料が「世界の記憶」に認められた。
リュミエールの映画
Lumière Films
2005 リュミエール兄弟(兄18621954、弟18641948)はフランスの映画発明者兄弟。1894年にエジソンのキネトスコープ(映写機)を知り、その後フィルムをスクリーンに映して一時に多くの人々が見られる方法を発明した。また、世界各地にカメラマンを派遣して当時の都市や風物を撮影したほか、喜劇映画作品もわずかながら残している。「世界の記憶」にはリュミエール兄弟が撮影したフィルムのうち、現存する全1405点が登録された。
参考/『世界大百科事典』(平凡社)
1940年6月18日の呼びかけ
The Appeal of 18 June 1940
2005 世界のラジオ放送史上、最も重要な放送の一つが、これ。ロンドンのBBCスタジオから、フランスのシャルル・ド・ゴール将軍(18901970)が、ナチスへの徹底抗戦を呼びかけたものである。放送の原稿、6月22日のラジオ録音、ロンドン在住のフランス人に向け作成された戦意高揚のためのポスター(原本と掲示用に印刷されたポスター)が登録対象。
ポスターには、"La France a perdu une bataille! Mais la France n'a pas perdu la guerre!"(フランスは戦闘に負けたが、戦争に負けたわけではない!)というド・ゴールの言葉も印刷されている。
→この音声を聴く Youtube:L'Appel du 18 juin 1940 De Gaulle parle a la BBC
※英国、フランス共同登録
コルヴィナ文庫コレクション
The Bibliotheca Corviniana Collection
2005 (解説はハンガリーの項を参照)
※イタリア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー共同登録
バイユーのタペストリー
Bayeux Tapestry
2007 ノルマンディー公ウィリアム(のちのウィリアム1世、位106687)のブリテン島征服(1066年)を描いた、長さ70m、縦幅50cmのタペストリー。1730年にバイユー大聖堂で発見された。
タペストリーは、イングランドのエドワード懺悔王(位104266)の義弟ハロルド(102266)が、王位継承の約束をウィリアムに伝えに行く場面から始まる。その後、エドワード懺悔王が没し、ハロルドが王位を継承するが(位1066)、王位を要求するウィリアム軍との戦いで戦死する。全部で58景からなるが、結末部は失われている。
→このタペストリーを見る Britain's Bayeux Tapestry
参考/『詳説世界史』(山川出版社)

The library of Clairvaux in 1472より転載
ピエール・デ・ヴィレー修道院長時代(1472年)のクレルヴォーのシトー会修道院の図書館
Library of the Cistercian Abbey of Clairvaux at the time of Pierre de Virey (1472)
2009 クレルヴォーの写本コレクションは、修道院のものとしては、中世西ヨーロッパで最大規模。1472年にピエール・デ・ヴィレー大修道院長(1425?〜1506)が作成した目録に記載された写本が登録対象。当時この図書館には1790点の写本が収められ、そのうち1115点が現存する。現在、フランス最大かつ最も保存状態のよい中世写本群である。
ウェブ上にデータベースが作成され、一部の写本が公開されている。
The library of Clairvaux in 1472
ベアトゥス・レナヌス図書館
Beatus Rhenanus Library
2011 ベアトゥス・レナヌス(1485〜1547)はフランス・アルザス地方出身の人文学者。パリやバーゼルなど各地での活動の足跡を示すのが、このコレクションだ。1287点の印刷資料、264点の直筆文書、33冊の古写本などからなる。この図書館は、もとは1840年に建てられた小麦倉庫で、1889年からコレクションの収蔵庫として使われるようになった。
フランソワ1世の治世にさかのぼるパリ・シャトレ裁判所の文書(国立中央文書館Y9)
Banniere Register at Châtelet, Paris, during the reign of Francois I (National Archives Y9, France)
2011

法令や特許状など、立法権のある文書の記録と出版に関する規定として、1461年に作成に着手したシャトレ裁判所文書。その第3巻(Y9文書)がフランソワ1世の治世(1515〜1547)のもので、当時続々と制定された法律や行政文書を含んでいる。なかでも特筆すべきは、1537年12月28日に宣されたモンペリエ勅令を含んでいること。全291ページの文書中、たった2ページにすぎないが、このために本件が「世界の記憶」に登録されたといっても過言ではないだろう。
モンペリエ勅令は世界初の本格的な納本制度で、「フランスで執筆、集成、加筆、校正、修正されたすべての作品の納本」を規定した。制度の制定の目的は大きく2つ。出版活動の管理と資料保存である。背景には印刷技術の普及があったが、制度開始からしばらくの間は、適用が不十分だったこともあり、王のコレクションの大半は写本だったという。
Y9文書は現在、フランス国立中央文書館所蔵。1980年に装丁が修復された。
参考/松浦茂著「フランスの新しい法定納本制度」(『現代の図書館』1996年第3号所収)



■ブルガリア
  名称 登録年 説明
11世紀の古ブルガリア・キリル文字写本『エニナ・アポストロス』(部分)
Enina Apostolos, Old Bulgarian Cyrillic manuscript (fragment) of the 11th century
2011 教会スラヴ語で書かれた現存最古の『使徒の働き』と『使徒書簡』(いずれも新約聖書)の写本。初期のキリル文字の書体や、その後のスラヴ系言語の変遷をたどるうえで貴重な資料である。11世紀、羊皮紙に書かれた。



■ベラルーシ
  名称 登録年 説明
ラジヴィウ家の文書とネスヴィシェ図書館コレクション
Radzwills' Archives and Niasvizh (Nieswiez) Library Collection
2009 リトアニア大公国とポーランド・リトアニア連合王国で絶大な権力を握ったラジヴィウ家。同家の文書保管所は事実上、リトアニア大公国の公文書館として機能し、数多くの書簡とともに大公国の記録や国際条約の条文などを保管してきた。今回、6カ国10施設から合計8万点以上の資料が登録された。
左写真はポーランド・リトアニア連合王国の地図。1735年に出版された『ポーランド革命史』(P.F.ギュヨー著)に収めらている。その版図はほぼ現在のベラルーシに相当する。
※ウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、ロシア共同登録



■ベルギー
  名称 登録年 説明
オフィシーナ・プランティニアーナの商業文書
Business Archives of the Officina Plantiniana
2001 オフィシーナ・プランティニアーナ(1555〜1876)はアントウェルペン(アントワープ)にあった活版印刷所。1563年から連綿と続く、詳細な記録と正確な日付をもつ帳簿など、事業と家計に関する文書は、書物の歴史だけでなく、ヨーロッパのビジネス・社会経済史研究のための貴重な資料である。印刷所は現在、プランタン・モレトゥス博物館として公開されていて、建物は2005年に世界遺産に登録された。
参考/『プランタン=モレトゥス博物館展 印刷革命がはじまった:グーテンベルクからプランタンへ』(凸版印刷株式会社印刷博物館)
コルヴィナ文庫コレクション
The Bibliotheca Corviniana Collection
2005 (解説はハンガリーの項を参照)
※イタリア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー共同登録
アントウェルペンの資産管理所の文書
Archives Insolvente Boedeldskamer Antwerpen
2009 アントウェルペンは16世紀、世界経済の中心地として絶頂期を迎えた。貿易拠点がスペイン領ネーデルランド(現オランダ)に移った17世紀、黄金時代は終息したが、その後は主に贅沢品の交易により繁栄を続けた。アントウェルペンにおけるこれら2つの時代の社会・経済を物語る資料が、一連の債権者記録群である。
1518年、アントウェルペン市議会は、急成長する世界貿易の荒波から債権者を守るため、破産者の財産や文書記録を没収し、公的に管理する制度を設けた。これにより18世紀にいたるまで、アントウェルペン市庁舎には、様々な会社や貿易商らによる150以上の「破産アーカイヴ」が没収され、また、監視されることとなったのである。市の公文書館に現存する資料は、16〜18世紀のアントウェルペンの商業記録であるばかりか、当時の世界交易の実態をいまに伝える貴重なものばかり。ヨーロッパでの商取引や、はるか中国やブラジルとの間で行われた交易についても教えてくれる。



■ポーランド
  名称 登録年 説明
ニコラウス・コペルニクスの代表作『回転についての6巻』
Nicolaus Copernicus' masterpiece "De revolutionibus libri sex"
1999 一般に「天体回転論」として知られる『(天体の)回転について』は、全6巻からなるコペルニクス(1473〜1543)の代表作で、地動説に立って天体の体系を構築した。クラクフのヤギェウォ大学に、1520年ごろに書かれた自筆原稿が保管されている。
→この作品を読む Amazon.co.jp:天体の回転について(岩波文庫)※第1巻のみ、絶版
参考/『詳説世界史』(山川出版社)
フレデリック・ショパンの代表作
The Masterpieces of Fryderyk Chopin
1999 ロマン派を代表する大作曲家ショパン(1810〜49)は、独創性と新奇性に富んだ楽曲の数々を残したことでつとに名高い。「世界の記憶」には自筆譜86点、書簡78点などが登録された。
このコレクションはワルシャワのショパン協会が1935年から回収をはじめたもので、39年に発見された『24の前奏曲』(作品28)の自筆譜などを含む。77年にはピアニストのアルトゥール・ルービンシュタイン(1887〜1982)の個人コレクションが寄贈された。
ワルシャワ・ゲットーの文書(エマヌエル・リンゲルブルムの文書)
Warsaw Ghetto Archives (Emanuel Ringelblum Archives)
1999 ワルシャワ・ゲットーは第二次世界大戦中にナチスが設けたユダヤ人隔離施設。このアーカイヴはエマヌエル・リンゲルブルム(1900〜44)がゲットーで収集した1680点の文書からなる。いずれも1939〜43年ごろに書かれたもので、収容されていたユダヤ人の手紙や手記が中心。当時のユダヤ人社会の様子をいまに伝える記録として、世界に二つとない貴重な記録遺産である。
1573年1月28日のワルシャワ連盟協約:宗教の自由の保障
The Confederation of Warsaw of 28th of January 1573: Religious tolerance guaranteed.
2003 16〜17世紀のポーランドは思想・宗教に寛容な「火刑なき国」で、多くの異端者の避難所となった。宗教の自由を認めたのは、ヤギェウォ王朝断絶後の空位期に、宗教的平和を保障する必要があったため。その根拠となったのがワルシャワ連盟協約である。「信仰において相違なる我々は、お互いの間で平和を維持する。また、異なった信仰と教会における差異のために血を流すことをせず、財産没収、名誉剥奪、投獄、追放によって罰しない」(第3項)などと記述されている。
参考/小山哲著「ワルシャワ連盟協約の成立 16世紀のポーランドにおける宗教的寛容の法的基盤」(『史林』90年9月号所収)
1980年8月のグダニスクの「21項目の要求」。大規模な社会運動「連帯」の誕生
Twenty-One Demands, Gdañsk, August 1980. The birth of the SOLIDARITY trades union - a massive social movement
2003 1980年、グダニスクでは反共産主義労働者による大規模なストライキが発生した。「21項目の要求」は、交易の自由、検閲の廃止、政治犯の釈放などを求め、彼らが合板に手書きしたものである。現代ヨーロッパ史に与えた影響は大きく、この要求が発端となり、中央ヨーロッパにおける自由化の道が開かれた。
参考/「グダニスクの見所」
スプラスル古写本−3月のメノロギオン
Codex Suprasliensis - Mineia cetia, Mart (The Suprasl Codex - Menology, March)
2007 (解説はスロベニアの項を参照)
※スロベニア、ポーランド、ロシア共同登録
国民教育委員会の文書
National Education Commission Archives
2007 ポーランドの国民教育委員会は、1773年に設立された世界初の教育省。1794年までの間に作成された法令や教育課程など、教育に関する印刷物や書類が登録対象。
パリ亡命出版社の文書(19462000)(インスティテュート・リテラツキ社の雑誌『クルトゥーラ』)
Archives of the Literary Institute in Paris (1946-2000) (Association Institut Littéraire 'Kultura')
2009 第二次世界大戦後の1946年、ソ連の支配下に置かれたポーランドから亡命した文化人たちは、ローマでインスティテュート・リテラツキ出版社を設立した。同社は翌47年に拠点をパリへ移し、文芸誌『クルトゥーラ』を創刊。『クルトゥーラ』はやがて共産主義に対する批評や、市民運動を支持する論評を掲載するようになり、2000年まで刊行を続けた。原稿を寄せたのは、アンドレ・マルロー、アルベール・カミュ、アレクサンダー・ソルジェニーツィン、ヨシフ・ブロツキー、チェスワフ・ミウォシュ(いずれもノーベル賞作家)など、そうそうたる面々である。「世界の記憶」には全637巻の『クルトゥーラ』誌、134冊の『ゼシュティ・ヒストリチュネ』誌、10万点の書簡などが登録された。
参考/岡野詩子著「パリ亡命雑誌『クルトゥーラ』に見るカティンの森事件と戦後」
ラジヴィウ家の文書とネスヴィシェ図書館コレクション
Radzwills' Archives and Niasvizh (Nieswiez) Library Collection
2009 ラジウィウ家は15〜18世紀、リトアニア大公国とポーランド・リトアニア連合王国で絶大な権力をほこった。6カ国10施設で保管されている8万点以上の関連資料が登録対象。
左写真は15世紀半ば、ラジヴィウ家の創始者とされるラジヴィウ・アスティカス(1384〜1477)が、リトアニアのカジミエシュ大公(1427〜92)から受け取った農奴の許可証。
※ウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、ロシア共同登録
ワルシャワ再建局の文書
Archive of Warsaw Reconstruction Office
2011 ポーランドの首都ワルシャワは、第二次世界大戦末期、ナチスによる徹底攻撃により灰燼に帰した。戦後、1945〜53年にかけて町並みが復原され、1980年には「たぐいまれな都市復原の一例」として世界遺産に登録されている。
世界の記憶に登録された文書は3種類のコレクションからなる。コレクション第25号は、写真、図面、統計資料のほか、議事録や発注書などの雑文書類。コレクション第26号は、1946年4月12日設立のワルシャワ復原会議の資料。コレクション第27号は、ワルシャワ再建局歴史建築部門と、首都ワルシャワ保存局の報告書などから構成される。



■ポルトガル
  名称 登録年 説明
ペロ・ヴァス・デ・カミーニャの書簡
Letter from Pêro Vaz de Caminha
2005 ブラジルのヴェラ・クルス島に上陸したペロ・ヴァス・デ・カミーニャ(14501500)が、ポルトガル王マヌエル1世(位14951521)へ宛てて書いた手紙。1500年5月1日付で、一般にブラジル「発見」を報告した書簡といわれる。ポルトガルが新大陸と出会った瞬間をとらえた貴重な書簡である。
年代記集成(ポルトガル大航海時代の写本コレクション)
Corpo Cronológico (Collection of Manuscripts on the Portuguese Discoveries)
2007 11611699年の年代記集成だが、とくに1516世紀初頭のコレクションが中心となっている。アフリカ沿岸での難破や、新たな島「発見」の報告、ヴァスコ・ダ・ガマの遠征隊に発布されたポルトガル国王の勅令、さらには当時の中国に関する情報まで、合計8万点以上の記録からなる。
トルデシリャス条約
Treaty of Tordesillas
2007 大航海時代に新世界をうばい合ったスペインとポルトガルの間で1494年6月7日に結ばれた条約。カボベルデ諸島の西370リーグ(約2186km)のところに引いた子午線の東をポルトガル領、西をスペイン領とするものである。
ポルトガルのリスボン大学で、ポルトガル語版(左写真)が保管されている。1494年9月2日、ポルトガル王ジョアン2世(位1481〜1495)により批准された。スペインにあるカスティーリャ語版同様、羊皮紙8枚で構成されている。
※スペイン、ポルトガル共同登録
1922年の初の南大西洋横断飛行
First flight across the South Atlantic Ocean in 1922
2011 ガーゴ・コーチニョ(1869〜1959)とサカドゥラ・カブラル(1881〜1924)の2人の飛行士によって成し遂げられた、初の南大西洋横断飛行を記録する80ページの文書。ブラジル沖のロカス環礁での不時着などいくつもの困難を乗り越え、実に80日にわたって達成された。
記録は飛行成功後の1923年1月に作成された。前半はコーチニョの執筆で、横断飛行に挑戦した理由から、予行演習の内容、そして実際の横断飛行中の様子までが、まるで一編の叙事詩のようにまとめられている。後半はカブラルの手により、写真をまじえた技術的な記録となっている。
デンボスの記録/ンデンブの記録
Arquivos dos Dembos / Ndembu Archives
2011 アンゴラの国立公文書館とポルトガル・リスボンの熱帯科学調査研究所が所蔵する、17世紀末〜20世紀初頭の1160点の手書き原稿。アンゴラ北部のデンボス地域でンデンブ族が記録し、1934年、当地に派遣された医者・人類学者のアントニオ・アルメイダ(1900〜94)によって収集・整理したコレクションである。ポルトガルによる植民化政策のなかで変容した南アフリカの先住民文化に関する貴重な資料を提供し、歴史学・人類学・言語学の観点で、史上稀にみる記録集成とされる。
※ポルトガル、アンゴラ共同登録



■ラトビア
  名称 登録年 説明
民謡のキャビネット
Dainu Skapis - Cabinet of Folksongs
2001 ラトビアではほかのヨーロッパ諸国と同様、19世紀後半に民謡の記録・収集が進められ、これによりラトビア人のアイデンティティが形成された。採集された22万点近い歌詞は、18941915年に8巻本にまとめられた。一連の作業で中心的な役割をになったのが、ラトビア音楽の父といわれるクリスヤノス・バロンス(18351923)。彼が残した35万点にもおよぶ歌詞カードは、特製のキャビネットで大切に保管されている。
バルトの道−自由を求めバルト三国を結んだ人間の鎖
The Baltic Way - Human Chain Linking Three States in Their Drive for Freedom
2009 (解説はエストニアの項を参照)
※エストニア、ラトビア、リトアニア共同登録



■リトアニア
  名称 登録年 説明
ラジヴィウ家の文書とネスヴィシェ図書館コレクション
Radzwills' Archives and Niasvizh (Nieswiez) Library Collection
2009 (解説はベラルーシの項を参照)
※ウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、ロシア共同登録
バルトの道−自由を求めバルト三国を結んだ人間の鎖
The Baltic Way - Human Chain Linking Three States in Their Drive for Freedom
2009 (解説はエストニアの項を参照)
※エストニア、ラトビア、リトアニア共同登録



■ルクセンブルク
  名称 登録年 説明
「ファミリー・オブ・マン」
Family of Man
2003 ルクセンブルクに生まれ、ニューヨーク近代美術館の写真部長を務めたエドワード・スタイケン(18791973)が1955年に行った企画展が、「ファミリー・オブ・マン」だ。これは68カ国273人のプロ・アマチュアカメラマンから寄せられた、人の生の営みをとらえた503枚の写真で構成したもので、それまで類例のない試みだった。二度の大戦後という時代背景のもと生まれた人間主義的な写真表現であり、独創的な企画であることなどが、「世界の記憶」への登録理由。現在、ルクセンブルクのファミリー・オブ・マン美術館で常設展示されている。
→この写真を見る Amazon.co.jp:The Family of Man (公式カタログ)



■ロシア
  名称 登録年 説明
1092年のアルハンゲリスク福音書
Archangel Gospel of 1092
1997 ロシアにおける文章語成立上、最も重要な資料であり、スラブ世界で最初の文章語「古代教会スラブ語」の伝播過程をさぐるうえで貴重な手がかりを提供する。主要部分は1092年に成立した。四福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)から各章句断片を抜粋した聖務日課書(アプラコス)で、復活祭を起点とし聖土曜日を終点とするシュナクサリオンと、一般の暦にしたがい9月1日を起点とするメノロギオンの2カ所よりなる。(一部「詩篇」からの引用もある)。聖務日課書とは、教会の日々の典礼で読まれるべき聖句を、教会暦にしたがって編纂した書物のこと。
参考/岩井憲幸著「『アルハンゲリスク福音書』1092年のSynaxarion部分について」(『明治大学文学部紀要』83号所収)、岩井憲幸著「『アルハンゲリスク福音書』1092年の本文の不明箇所若干について」(同98号所収)
ヒトロヴォ福音書
Khitrovo Gospel
1997 ロシアを代表するイコン画家アンドレイ・ルブリョフ(1360頃〜1430頃)を中心とする作家が作成した福音書。現存する4点のルブリョフ派福音書の1冊で、サイズは32.2cm×24.8cm。鑑定によると、本書中の4点の細密画はルブリョフ本人の手によるものという。教会スラヴ語の普及に果たした役割も大きい。
18世紀のロシア帝国の地図コレクション
Maps of the Russian Empire and its collection of the 18th century
1997 18世紀にシベリアで行われた地図作成は、アジア大陸北海岸から極東、ロシア太平洋岸地方にかけての知識獲得に寄与しただけでなく、ロシア側からの「北米発見」をもたらした。具体的な登録対象や点数は不明(公式サイトに記載されていない)。
ロシアでは1701年、モスクワの数学・航海学学校に測地学の専門クラスが設けられて以降、測地学者の体系的な養成が始まった。そして、チュコト半島やカムチャツカ半島までが正確に描かれた「ロシア帝国全図」(1734年)や、へき地での測量に基づく「バイカル湖図」(1772年)、北米の一部が明瞭に描き込まれた「ロシアのアトラス」(1792年)など、数々の貴重な地図が世に送り出された。
参考/日ロ国立図書館交流実行委員会編『ロシア国立図書館所蔵地図展〜18・19世紀〜展示会目録』
新聞紙コレクション
Newspaper collections
1997 18世紀初頭、ピョートル大帝(位16821725)が推し進めた西欧の技術導入にともなう内政改革期に発行された4点の新聞紙をはじめ、ロシア革命期(190517)の新聞紙など、ロシア国立図書館が所有する歴史的な新聞報道を登録。
19世紀末〜20世紀初頭のロシアのポスター
Russian posters of the end of the 19th and early 20th centuries
1997 ロシア国立図書館蔵。世界最大規模のロシアのポスター・コレクションであり、1920世紀のロシア芸術・文化の研究資料にもなっている。
キリル文字で書かれた15世紀の教会スラヴ語書籍
Slavonic publications in Cyrillic script of the 15th century
1997 ロシア国立図書館が所蔵する63点の書籍。15世紀から16世紀初頭にかけてつくられたもので、スラヴ民族の文化から、当時の出版の歴史までを解明する手がかりになる。ときは、イヴァン・フェドロフ(1525〜83)によるロシア初の活版印刷(1553年)より70年も前。
サンクトペテルブルク録音記録保管所の歴史的コレクション(18891955
The Historical Collections (1889-1955) of St. Petersburg Phonogram Archives
2001 民族音楽学から言語学までの分野にまたがる、合計500時間の録音資料を含むコレクション。とくに1910年以前のフィールド録音資料は貴重。伝統儀礼や文化の口伝えの音声など、すでに途絶えた文化的伝統を記録したものもある。
スプラスル古写本−3月のメノロギオン
Codex Suprasliensis - Mineia cetia, Mart (The Suprasl Codex - Menology, March)
2007 (解説はスロベニアの項を参照)
※スロベニア、ポーランド、ロシア共同登録
ラジヴィウ家の文書とネスヴィシェ図書館コレクション
Radzwills' Archives and Niasvizh (Nieswiez) Library Collection
2009 (解説はベラルーシの項を参照)
※ウクライナ、フィンランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、ロシア共同登録
オストロミール福音書(1056〜57)
Ostromir Gospel (1056-1057)
2011 古東スラヴ語で書かれた現存最古の書籍。当時のロシアで使われていたキリル文字で書かれている。本書は、それまで他地域から隔絶された「異教徒」だった東スラヴの諸民族に、キリスト教を布教させるきっかけとなった点でも重要。
トルストイの個人蔵書と写本・写真・フィルムコレクション
Tolstoy's Personal Library and Manuscripts, Photo and Film Collection
2011 『戦争と平和』で知られる作家・思想家のレフ・トルストイ(1828〜1910)は、19世紀後半〜20世紀初頭を代表する知性の一人でもあった。そのことを証明するかのように、彼が個人で蒐集した図書は40カ国語2万2000冊におよび、作家の個人蔵書として世界有数の規模を誇っている。また、写本・写真・フィルムコレクションのなかには、トルストイの直筆書簡や日記、社会活動を記録したノート類、文学・演劇作品の原稿が含まれる。




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