ラテンアメリカ・カリブ海諸国の「世界の記憶」



・説明文は原則としてUNESCO公式サイトからの抄訳です。一部、ほかの資料を参考にしたものは文末に注記しました。
・写真はすべてUNESCO公式サイトからの転載です。各写真に転載元のリンクを貼っています。


■アルゼンチン
  名称 登録年 説明
リオ・デ・ラ・プラタ副王領の文書遺産
Documentary heritage of the Viceroyalty of the Río de la Plata
1997 リオ・デ・ラ・プラタ副王領時代の書物はブエノスアイレス市にて保管されており、国立公文書館ではウルグアイ、パラグアイ、ボリビアの各共和国とペルー副王領に関する古文書コレクションも保管している。ブエノスアイレスやモンテビデオの港湾活動に関する記録は、副王領とほかのアメリカ・ヨーロッパ・アフリカ諸国との交易などの情報も伝える。
197683年の人権文書遺産−反軍事政権闘争の記憶、正義、真実の記録
Human Rights Documentary Heritage 1976-1983 - Archives for Truth, Justice and Memory in the struggle against State Terrorism
2007 「コンドル作戦」として知られた恐怖政権時代、自由を求めて抗争した左翼活動家の活動記録。18の施設で保管されている写真および音声資料からなる。



■ウルグアイ
  名称 登録年 説明
カルロス・ガルデルのオリジナル録音−オラシオ・ロリエンテ・コレクション(191335
Original records of Carlos Gardel - Horacio Loriente Collection (1913-1935)
2003 史上最高のクレオール歌手とたたえられる美声の持ち主、カルロス・ガルデル(18871935)の録音資料。フランスに生まれたカルデルは、4歳で母とともにアルゼンチンに渡り、働きながらギターを習得。1910年にデビューした。17年の『わが悲しみの夜』でタンゴ歌手としての人気を不動のものとし、以後レコードや映画で華々しい活躍を続けた。
参考/『日本大百科全書』(小学館)



■オランダ領アンティル/キュラソー *
  名称 登録年 説明
パピアメント語で書かれた最初の教理問答書
First Catechism Written in Papiamentu Language
2009 パピアメント語はスペイン語・ポルトガル語・オランダ語の混合により生まれた言語で、西インド諸島のABC諸島(アルバ島、ボネール島、キュラソー島)で話されている。ローマカトリックの教理問答書がパピアメント語に翻訳されたのは182637年のこと。同書はパピアメント語で書かれた史上初の書籍である。
ミデルブルフ商業会社(MCC)の文書
Archive Middelburgsche Commercie Compagnie (MCC)
2011 18世紀、オランダにおける大西洋三角貿易をになったのが、ゼーラント州ミデルブルフに本社をかまえたミデルブルフ商業会社である。同社の交易の3分の1は奴隷交易だった。登録された文書は、当時の奴隷交易についての理解を助ける貴重な資料となっている。
※オランダ領キュラソー、スリナム、オランダ共同登録
オランダ西インド会社の文書
Dutch West India Company (Westindische Compagnie) Archives
2011 「世界初の株式会社」といわれるオランダ東インド会社の設立から19年後の1621年、アフリカ西海岸や新大陸、ニューギニア東方の太平洋の島々との交易を目的とする、オランダ西インド会社が設立された。活動を停止する1791年までの間に書き残された奴隷交易の記録や、初期の外交史を物語る史料などが、8カ国・地域の10機関で保管されている。
※オランダ領アンティル、ガイアナ、スリナム、ブラジル、ガーナ、オランダ、英国、アメリカ合衆国共同登録
*地域名について/オランダ領アンティルは2010年に解体した。同地を構成していた5島のうち、キュラソー、シントマールテンは、解体後もオランダの海外領となっているが、残る3県は本国に編入されている。
オランダ領アンティルのものとして「世界の記憶」に登録されている3件のうち、「パピアメント語で…」と「オランダ西インド会社の文書」は、2012年現在も、オランダ領アンティルに所在するものとして登録されている。しかし、「ミデルブルフ商業会社の文書」に限って、所在地は「キュラソー島」となっている。



■ガイアナ
  名称 登録年 説明
オランダ西インド会社の文書
Dutch West India Company (Westindische Compagnie) Archives
2011 8カ国・地域にまたがるオランダ西インド会社の文書記録が登録対象。ガイアナからは国立公文書館にあるウォルター・ロドニー・アーカイヴの史料群(1747〜1792)が登録された。
※オランダ領アンティル、ガイアナ、スリナム、ブラジル、ガーナ、オランダ、英国、アメリカ合衆国共同登録
インド人移民労働者の記録
Records of the Indian Indentured Labourers
2011 年季奉公契約を結んだインド人労働者は、1830年代から移民として世界各地にわたり、その後の100年間で119万人以上が19地域に移住した。この記録は、これらインド人移民の血統を示す唯一の資料。4カ国の国立公文書館が保管する1838〜1962年の書類一式が登録された。
※ガイアナ、スリナム、トリニダード・トバゴ、フィジー共同登録



■キューバ
  名称 登録年 説明
「ホセ・マルティ・ペレス」の史料
"José Martí Pérez"Fonds
2005 ホセ・マルティ・ペレス(185395)は「キューバ独立の父」と称される革命家・詩人。1891年に論文「われらのアメリカ」を発表後、ラテンアメリカの団結を呼びかけ、「彼らのアメリカ」(米国)の帝国主義的侵略を警告した。92年には亡命キューバ人を中心にキューバ革命党を結成し、第二次独立戦争を指揮した。「世界の記憶」には、マルティ個人の書簡や原稿のほか、19世紀前半からの新聞・雑誌記事、革命・外交にまつわる記録のコレクションなど、合計2435点が登録された。このうち1821点はマルティの直筆によるもの。
参考/『日本大百科全書』(小学館)
キューバ映画芸術産業庁の「ラテンアメリカ・ニュース」のオリジナル・ネガ
Original Negative of the Noticiero ICAIC Lationamericano
2009 「ラテンアメリカ・ニュース」は、196090年に、キューバ映画芸術産業庁が週刊で作成していたニュースフィルム。世界の二極化、アフリカ諸国の独立、反体制運動など、この時代の世界で起きたあらゆるできごとを記録した、ユニークな記録群である。また、キューバ革命に関する最も網羅的な記録としても、「世界の記憶」に登録しうる価値をもっている。
→この動画を見る YouTube:Noticiero ICAIC Latinoamericanoで検索



■コロンビア
  名称 登録年 説明
黒人と奴隷の文書
Negros y Esclavos Archives
2005 現在のコロンビアを中心に、エクアドル、パナマ、ベネズエラの一部を含むネオグラナディーノ地域における、奴隷交易に関する情報を提供するコレクション。5万5000枚の書面で、コロンビアの国立公文書館が所蔵。
アメリカ植民音楽:その豊かな記録の一例
American Colonial Music: a sample of its documentary richness
2007 1618世紀のアメリカ音楽に関する文書記録群。新たな音楽文化を生むにいたった、先住民・アフリカ人・ヨーロッパ人の文化の証拠をなす。4カ国から1点ずつが登録された。
コロンビアの登録対象は、グティエレ・フェルナンデス・イダルゴ(15531620)が1584年に作成した、現存する南米最古級の讃美歌集『リブロ・デ・コロ』(サンタフェデボゴタ大聖堂蔵)
※コロンビア、ペルー、ボリビア、メキシコ共同登録



■ジャマイカ
  名称 登録年 説明
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲を記録しはじめ、奴隷制度が廃止される34年まで続けられた。
7カ国の公文書館・図書館が所蔵する文書が登録対象。ジャマイカからは教区別にまとめられた1817〜32年の奴隷統計書140冊を登録。
※ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ、英国共同登録
シルバー・マン:パナマ運河の西インド出身労働者
Silver Men: West Indian Labourers at the Panama Canal
2011 パナマ運河建設に従事した西インド諸島からの移民に関する資料群で、6カ国から登録。このうちジャマイカが所有するのが23点の史料で、その内容は、1893年に制定された移民労働者保護法、1956年の労働者の本国送還報告、パナマ運河の写真などとなっている。
※ジャマイカ、セントルシア、パナマ、バルバドス、アメリカ合衆国、英国共同登録



■スリナム
  名称 登録年 説明
ミデルブルフ商業会社(MCC)の文書
Archive Middelburgsche Commercie Compagnie (MCC)
2011 (解説はオランダ領アンティルの項を参照)
※オランダ領キュラソー、スリナム、オランダ共同登録
オランダ西インド会社の文書
Dutch West India Company (Westindische Compagnie) Archives
2011 スリナム国立公文書館など、8カ国・地域にある10機関が保管する史料が登録対象。1975年のスリナム独立後、西インド会社関連史料を含む古文書は、一時的に旧宗主国のオランダ政府が管理していた。2010年に首都パラマリボに新たな保存庫が設けられたため、今後、返還される予定。
※オランダ領アンティル、ガイアナ、スリナム、ブラジル、ガーナ、オランダ、英国、アメリカ合衆国共同登録
インド人移民労働者の記録
Records of the Indian Indentured Labourers
2011 (解説はガイアナの項を参照)
※ガイアナ、スリナム、トリニダード・トバゴ、フィジー共同登録



■セントクリストファー・ネイビス
  名称 登録年 説明
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲を記録しはじめ、奴隷制度が廃止される34年まで続けられた。
7カ国の公文書館・図書館が所蔵する文書が登録対象。セントクリストファー・ネイビスからは、1817年の奴隷名簿と22〜34年の奴隷統計書7点が登録された。左写真はロムニー農園の女性奴隷名簿。
※ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ、英国共同登録
1821〜34年のバミューダの奴隷登録簿
Registry of Slaves of Bermuda 1821-1834
2011 5冊の登録簿と1冊の目録で構成。なかでも1821年の登録簿は、バミューダで編纂された最初の奴隷登録簿であり、バミューダ島の奴隷人口調査書として網羅的な情報を提供する。
上掲「英領カリブ海の奴隷登録簿(1817〜34)」に追加登録することが望まれている。



■セントルシア
  名称 登録年 説明
ウィリアム・アーサー・ルイスの書類
Sir William Arthur Lewis Papers
2009 ウィリアム・アーサー・ルイス(191591)はセントルシア生まれの経済学者。79年、「発展途上国問題の考察を通じた経済発展に関する先駆的研究」により、ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞を受賞した。アーサー・ルイスの論文・報告書・書簡・講義ノートなどの書類と、講義映像、スウェーデン国立銀行賞受賞授賞式の映像が登録された。
シルバー・マン:パナマ運河の西インド出身労働者
Silver Men: West Indian Labourers at the Panama Canal
2011 パナマ運河建設に従事した西インド諸島からの移民に関する資料群で、6カ国から登録。セントルシアからは、同国官報に掲載された1904〜05年の公安当局の報告が登録された。
※ジャマイカ、セントルシア、パナマ、バルバドス、アメリカ合衆国、英国共同登録



■チリ
  名称 登録年 説明
チリの人権活動の文書
Human Rights Archive of Chile
2003 197389年のチリの軍事独裁政権下で行われた人権活動の記録。当時の新聞紙や雑誌などのニュースクリップや、1000人もの行方不明者の写真、人権活動の普及を目的としたリーフレットやポスターなどが登録対象。国内の6機関・施設で保管されている。
アメリカのイエズス会修道士
Jesuits of America
2003 ラテンアメリカ、カリブ海地域、フィリピン、スペインにおける1718世紀のイエズス会修道士の活動記録。チリ国立公文書館で保管されている。



■ドミニカ共和国
  名称 登録年 説明
奴隷洗礼の書(163670
Book for the Baptism of Slaves (1636-1670)
2009 794件の洗礼の記録や、1659年に行われた83件の堅信儀礼のことなどが筆記されている。ほとんど知られていない植民地時代の奴隷制度の様子や、社会制度の変遷などを記録する貴重な書物。
ドミニカ共和国の人権闘争の文書遺産(193061
Documentary Heritage on the Resistance and Struggle for Human Rights in the Dominican Republic, 1930-1961
2009 193061年、ドミニカ共和国はラファエル・トルヒーヨ大統領(18911961)の圧制に苦しめられてきた。数千人にもおよぶドミニカ人や外国人が収監・拷問のうえ処刑されたり、精神病をわずらうなどしたのである。登録された文書や写真、録音、映像は、民主主義、自由、そして人権の尊重を求めて闘ったドミニカ人たちの記録である。



■ドミニカ国
  名称 登録年 説明
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲を記録しはじめ、奴隷制度が廃止される34年まで続けられた。
7カ国の公文書館・図書館が所蔵する文書が登録対象。ドミニカ国からは1817〜32年の奴隷名簿8点と名簿目次1点を登録。
※ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ、英国共同登録



■トリニダード・トバゴ
  名称 登録年 説明
デレック・ウォルコット・コレクション
The Derek Walcott Collection
1997 セントルシア出身の作家デレック・ウォルコット(1930〜)は、92年にノーベル文学賞を受賞したのをはじめ、数多くの国際的な文学賞を受賞し、最も重要な現代作家の一人といえる。直筆原稿(未発表稿を含む)、日記、ノート類などが、母校・西インド諸島大学の中央図書館に所蔵されている。
エリック・ウィリアムズ・コレクション
The Eric Williams Collection
1999 トリニダート・トバゴ初代首相のエリック・ウィリアムズ(191181)は歴史学者としても知られ、とくに同国の奴隷史の編纂に果たした功績が大きい。また、新たな研究分野として「カリブ海史」を確立した点でも評価されている。コレクションは、黒人・白人の写真1200点や録音テープ450点を筆頭に、講義録・会議録、映像記録などからなる。
CLR・ジェームズ・コレクション
The C.L.R. James Collection
2005 20世紀を代表する左派活動家CLR・ジェームズ(190189)は、第二次世界大戦後まで英国と米国で活動したが、トリニダード・トバゴ生まれである。4050年代には米国におけるトロツキー理論の第一人者となり、帰国後の5070年代には、汎アフリカ主義運動家としても活躍した。ジェームズの生涯を記録する書簡、直筆原稿、パンフレット、ポスター、新聞記事のスクラップや、彼が所蔵した書籍など、第一級の記録群が登録された。
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲を記録しはじめ、奴隷制度が廃止される34年まで続けられた。
7カ国の公文書館・図書館が所蔵する文書が登録対象。トバゴ島からは、1819〜24年の農園奴隷の統計書、19〜32年の独身奴隷の統計書、トリニダード島からは、15〜16年の農園奴隷家族のリスト、21年の独身奴隷の統計書などが登録された。
※ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ、英国共同登録
コンスタンティン・コレクション
Constantine Collection
2011 リアリー・ニコラス・コンスタンティン(1901〜71)は、英国のプロ・クリケット・リーグ初の黒人選手。第二次世界大戦後、英国で西インド洋出身者が活躍するうえで先駆けとなった人物である。生涯に9冊の書籍を著したほか、競技ガイドや冊子など400点以上を残した。そのタイプライター原稿や、5000点以上の公私にわたる写真などが登録対象となった。
インド人移民労働者の記録
Records of the Indian Indentured Labourers
2011 (解説はガイアナの項を参照)
※ガイアナ、スリナム、トリニダード・トバゴ、フィジー共同登録



■ニカラグア
  名称 登録年 説明
識字率向上運動
National Literacy Crusade
2007 193679年にかけてソモサ一族が私物化してきたニカラグアで、80年に開始されたプロジェクトが、識字率向上運動である。当時のニカラグアは識字率50%。そこで6万人の若者を対象に、16カ国から参加したボランティア教員が教育を行うことにした。わずか5カ月間のプログラムだったが、これにより識字率は88%にまで急上昇。教育・文化事業として、ニカラグア史上最大の成果を残すこととなった。プロジェクトで用いられた教科書やノート、カセットテープ、そのほか関連する書簡や報告書が登録対象である。



■パナマ
  名称 登録年 説明
シルバー・マン:パナマ運河の西インド出身労働者
Silver Men: West Indian Labourers at the Panama Canal
2011 パナマ運河(1914年開通)は、「自発的に」移民となったカリブ海諸国の労働者によって開削された。これは人類史上、最も重要な移住の例。パナマ地峡に集結した労働者は10万人を超え、そのほとんどが二度と故国へ戻らなかった。
「世界の記憶」に登録されたのは、葉書2186枚を含むチャールズ・ミュラー・コレクション(パナマ/左写真)、パナマ運河の建設・管理に関する書類や写真1500点を所蔵するフロリダ大学スマサーズ図書館のコレクション(米国)など。
※ジャマイカ、セントルシア、パナマ、バルバドス、アメリカ合衆国、英国共同登録



■バハマ
  名称 登録年 説明
ファーカーソンの日記
Farquharson's Journal
2009 サンサルバドル島東部のプロスペクト・ヒル綿花園のオーナーだったチャールズ・ファーカーソン(17601835)の日記。1831年1月1日から321231日まで、この農園で起きたできごとを仔細につづっている。当時の農家の生活を知る貴重な記録。
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲を記録しはじめ、奴隷制度が廃止される34年まで続けられた。
7カ国の公文書館・図書館が所蔵する文書が登録対象。バハマからは1821〜34年の奴隷統計書9冊を登録。
※ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ、英国共同登録



■パラグアイ
  名称 登録年 説明
テロルの記憶
Archives of Terror
2009 199212月、パラグアイのアスンシオンにて、アルフレド・ストロエスネル独裁政権(195489)時代の政治警察が作成した公文書が見つかった。通称「テロルの記憶」として知られるこの書類は4トンにも達し、警察ファイル、非合法活動に関する命令文書、外国人数千人の身分証明書、そしてコンドル作戦(南米6カ国によって行われた、左派市民の逮捕・誘拐・虐殺などの弾圧行為)に言及した資料が含まれていた。
参考/鍼を送る会->ピノチェットとコンドル作戦南米テロリズムのネットワーク



■バルバドス
  名称 登録年 説明
カリブ海の奴隷の文書遺産
Documentary Heritage of Enslaved Peoples of the Caribbean
2003 1719世紀のカリブ海の奴隷に関する文書の集積で、バルバドス博物館が所蔵。バルバドスはカリブ海地域および北米の農園開発のモデルとなった地だが、その歴史研究のうえでも重要な史料。
連邦の記録史料
Federal Archives Fonds
2009 西インド連邦(195862)の成立は、第二次世界大戦後の新たな独立運動の始まりを告げるものだった。わずか4年で崩壊した連邦だったが、その歴史は旧時代の英国植民地との関連も深い。同連邦で作成された行政文書や議事録、統計資料、さらには発行された新聞や電報、写真、それに連邦の国旗・国章は、世界史上で連綿と続いた英国植民地の歴史の一端を記憶するものとして貴重である。
ニータ・バロー・コレクション
Nita Barrow Collection
2009 20世紀で最も偉大な女性の一人、ルース・ニータ・バロー(191695)の生涯とその時代を記録する一大コレクション。ニータは世界教会協議会(WCC)会長(198391)、キリスト教女子青年会(YWCA)会長(197583)、国際成人教育協議会(ICAE)会長(198990)と、3つの国際組織の長を務め、20世紀半ばには南アフリカのアパルトヘイト反対運動にも協力し、女性と黒人の権利回復に努めた。コレクションには直筆書簡や学術論文が含まれる。
シルバー・マン:パナマ運河の西インド出身労働者
Silver Men: West Indian Labourers at the Panama Canal
2011 パナマ運河建設に従事した西インド諸島からの移民に関する資料群で、6カ国から登録。バルバドスからは、309点のエアメールスタンプ・コレクション、108点の葉書コレクションなどが登録された。
※ジャマイカ、セントルシア、パナマ、バルバドス、アメリカ合衆国、英国共同登録



■ブラジル
  名称 登録年 説明
皇帝のコレクション:19世紀のブラジル人と外国人の写真
The Emperor's collection: foreign and Brazilian photography in the XIX century
2003 ブラジル皇帝ペドロ2世の妃、テレサ・クリスティナ・マリア(182289)が1代で集めた写真コレクション。ラテンアメリカの古写真集積としては最大規模。2万1742枚の写真で、皇后没後にブラジル国立図書館に移管された。ブラジルや世界各地の人々の暮らしや習慣をとらえている。
オランダ西インド会社の文書
Dutch West India Company (Westindische Compagnie) Archives
2011 1630年、オランダ西インド会社はブラジルのニューホラント(現レシフェ)に商館を建設。オランダによるブラジルの植民化の足がかりをなした。
「世界の記憶」は8カ国・地域の共同登録。コレクションの中心は西インド会社の商業記録だが、ブラジル先住民が手書きした通称「トゥピ族書簡」と呼ばれる珍しい書類も残されている。
※オランダ領アンティル、ガイアナ、スリナム、ブラジル、ガーナ、オランダ、英国、アメリカ合衆国共同登録
ブラジル軍事政権下の情報網および攻勢情報網(1964〜1985)
Network of information and counter information on the military regime in Brazil (1964-1985)
2011 20世紀の中南米では多くの軍事国家が生まれた。全部で17点の史料からなる本件は、その特異な歴史と、自由を求める抗争の証拠である。軍事政権側の報告書は長らく非公開だったり、私有物であるため研究されていなかったが、近年ようやくその全貌が明らかになりつつある。登録された史料は、1964〜85年の軍事独裁政権時代にブラジルに存在した情報網の姿をいまに伝えている。



■ベネズエラ
  名称 登録年 説明
19世紀のラテンアメリカ写真コレクション
Collection of Latin American photographs of the 19th Century
1997 都市開発や港湾、風景、田園生活、著名人などを撮影した8000タイトルの写真コレクション。19世紀のラテンアメリカを写した最も網羅的なもので、ラテンアメリカ・カリブ海地域のすべての国で撮影されている。ベネズエラ国立図書館蔵。
国立公文書館−解放者シモン・ボリバルの文書
General Archive of the Nation - Writings of The Liberator Simón Bolívar
1997 南米各国を独立に導いたシモン・ボリバル(17831830)その人の重要性は、世界的にも顕著なものである。彼が残した書簡、証書、法令、宣言、演説原稿など8万2000点が登録された。
コロンベイア:フランシスコ・デ・ミランダ総司令官の文書
Colombeia: Generalissimo Francisco de Miranda's Archives
2007 ラテンアメリカの独立に情熱を注いだフランシスコ・デ・ミランダ(17501816)に関する文書記録。アメリカ独立戦争の過程とフランコ・スペイン艦隊の参戦、エカテリーナ女帝時代の帝政ロシアの政治、フランス革命とそこから派生した各地の抗争、そしてスペイン・アメリカ植民地の独立運動の萌芽期の様子などを記録する文書や地図、書籍などで構成されている。18世紀末〜19世紀初頭、大西洋の東西で活躍したミランダの生涯をたどるコレクションとなっている。



■ベリーズ
  名称 登録年 説明
英領カリブ海の奴隷登録簿(181734
Registry of Slaves of the British Caribbean 1817-1834
2009 1819年、英国はロンドンに奴隷登録所を設立し、すべての奴隷に関する売買・相続・移譲を記録しはじめ、奴隷制度が廃止される34年まで続けられた。
7カ国の公文書館・図書館が所蔵する文書が登録対象。ベリーズからは1834年の英領ホンジュラス(現ベリーズ)の奴隷名簿を登録。
※ジャマイカ、セントクリストファー・ネイビス、ドミニカ国、トリニダード・トバゴ、バハマ、ベリーズ、英国共同登録



■ペルー
  名称 登録年 説明
アメリカ植民音楽:その豊かな記録の一例
American Colonial Music: a sample of its documentary richness
2007 1618世紀のアメリカ音楽に関する文書記録群。新たな音楽文化を生むにいたった、先住民・アフリカ人・ヨーロッパ人の文化の証拠をなす。4カ国から1点ずつが登録された。
ペルーの登録対象は、トレホン・イ・ベラスコ(16641728)が作曲した、現存するラテンアメリカで唯一のスペイン・バロック風の歌劇『ばらの紫色』の自筆譜(ペルー国立図書館蔵)
※コロンビア、ペルー、ボリビア、メキシコ共同登録



■ボリビア
  名称 登録年 説明
アメリカ植民音楽:その豊かな記録の一例
American Colonial Music: a sample of its documentary richness
2007 1618世紀のアメリカ音楽に関する文書記録群。新たな音楽文化を生むにいたった、先住民・アフリカ人・ヨーロッパ人の文化の証拠をなす。4カ国から1点ずつが登録された。
ボリビアの登録対象は、スペイン領アメリカで最も偉大な詩人といわれる修道女ソル・フアナ・イネス・デ・ラ・クルス(164895)の詩に着想して書かれた2作のビリャンシーコ(ボリビア公文書館蔵)。ビリャンシーコとはスペイン伝統音楽の一種で、民謡をもとにした歌曲。
※コロンビア、ペルー、ボリビア、メキシコ共同登録
ラ・プラタ・アウディエンシア領の文書史料
Documentary Fonds of Royal Audiencia Court of La Plata (RALP)
2011 スペイン植民時代の1561〜1825年の記録。ポトシ銀山での採鉱や銀の輸出に関する文書も含まれ、16〜17世紀に全世界を巻き込んだ銀の取引きの貴重な資料となっている。



■メキシコ
  名称 登録年 説明
テチャロヤン・デ・クアヒマルパ古写本
Codex Techaloyan de Cuajimalpaz
1997 現在のメキシコシティ付近一帯における先住民集落の成立などを伝える書。地域の概観や地図、歴史的・経済的なデータ、人口、さらに生物学的特徴などが、先住民のナワトル語で書かれている。
オアハカ渓谷の古写本
Codices from the Oaxaca Valley
1997 16世紀中期から後期にかけて作成された33点の古写本が登録対象。スペインによる植民化後、先住民の写本筆写者が、自らの言語と筆記方法をもって、リュウゼツランでつくった伝統的な紙に記したもの。植民化から間もない時期のオアハカ渓谷の様子をいまに伝える。
メキシコの古写本コレクション
Collection of Mexican Codices
1997 先スペイン期の古写本1点、植民地時代の原本92点、複写本68点で構成。このうち先スペイン期のものは単に『古写本』と呼ばれている。スペイン人支配者と先住民とのごく初期の関係や、植民化前の文化について知ることができる当時の記録として、唯一のものである。
『忘れられた人々』
Los olvidados
2003 スペイン生まれのメキシコ人映画監督ルイス・ブニュエル(19001983)の1950年の作品。20世紀半ば、大都市の周縁部のスラムに生きた子どもや若者の存在を伝えてくれる、最も重要なスペイン語による記録である。この作品をもってブニュエルは、『アンダルシアの犬』(1928)や『黄金時代』(1930)などの初期作品で描いたシュールな世界観とは決別。悲劇的かつ詩的な要素と、荒々しくも素直な表現により、忘れられた人々を情熱的に描ききったのである。これにより本作は、いつの時代のだれにとっても新鮮な映画となり得た。
→この作品を見る Amazon.co.jp:忘れられた人々[DVD]
ビブリオテカ・パラフォシアナ
Biblioteca Palafoxiana
2005 ビブリオテカ・パラフォシアナ(パラフォシアナ図書館)は1646年に創設されたアメリカ最古の公立図書館。4万1000点の貴重書や写本を蔵し、そのうち14731821年に刊行・作成された約1万9000点が、とくに貴重なものとして「世界の記憶」に認定された。
アメリカ植民音楽:その豊かな記録の一例
American Colonial Music: a sample of its documentary richness
2007 1618世紀のアメリカ音楽に関する文書記録群。新たな音楽文化を生むにいたった、先住民・アフリカ人・ヨーロッパ人の文化の証拠をなす。4カ国から1点ずつが登録された。
メキシコの登録対象は、プエブラ大聖堂をはじめ新世界で活躍したポルトガル人作曲家ガスパル・フェルナンデス(15701629)が編纂した284ページの音楽書(オアハカ大司教区歴史アーカイブ蔵)
※コロンビア、ペルー、ボリビア、メキシコ共同登録
先住民言語コレクション
Colección de Lenguas Indigenas
2007 ハリスコ州立図書館が所蔵する128タイトル166冊の書籍群。先住民言語で書かれた書籍および先住民言語に関する研究書からなり、19世紀に作成された。
メキシコ・アシュケナージ社会文書調査センターのコレクション(1620世紀)
Collection of the Center of Documentation and Investigation of the Ashkenazi Community in Mexico (16th to 20th Century)
2009 アシュケナージとは、離散後のユダヤ人のうち中欧・東欧に住み着いた者の子孫のこと。このコレクションは合計1万6000冊で、中欧・東欧からメキシコに渡ったユダヤ人社会についての記録群である。主にイディッシュ語、ヘブライ語、ロシア語で書かれている。
メキシコ国立公文書館の「地図、描画、図画」のなかの16〜18世紀の絵文字
Sixteenth to eighteenth century pictographs from the "Maps, drawings and illustrations" of the National Archives of Mexico
2011 地図や文書に記されている334点の絵文字が登録対象。当時アメリカ大陸に存在した先住民の世界観を物語る重要な資料。




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