サンタロサの歴史的邸宅
Santa Rosa Historic Mansion


国名 コスタリカ
分類 文化遺産
所在地 首都サンホセの北西およそ200km


審議歴
1980年 登録延期 … この史跡があるサンタロサ国立公園には、重要な自然的価値が認められる。そのため委員会は、コスタリカ政府が自然遺産として、この地域を推薦することを望んだ。
1981年 登録延期 … 80年の委員会で要求された「自然遺産としての再推薦」に関して、まだコスタリカ政府から返答がない。
1999年 本物件を含む「グアナカステ保全地区」が世界遺産に登録された。しかし、本物件の文化的価値は認められず、自然遺産としての登録となった。
本物件は暫定リストへの掲載歴はない(2008年現在)


解説/文=収斂さん+浦に〜と

  サンタロサの史跡は、グアナカステ州のリベリア(Liberia)の北36kmのサンタロサ国立公園内にある。ここはコスタリカ有数の貴重な自然保護区であり、またコスタリカで最も重要な歴史地区の一つでもある。それはここが、1856年3月20日に勃発したサンタロサの戦いの激戦地であり、この戦いがいまもコスタリカ国民の自尊心を高揚させる、最も英雄的なできごととして語られているからだ。なかでも戦いの歴史を今に伝えるラ・カソナ(La Casona)と呼ばれる牧場主の邸宅と、その周りの石づくりの簡素な砦の跡が有名で、現在博物館として保存されている。


近代中米史上に残る激戦の舞台

  19世紀、中米の小国ニカラグアを独裁したウィリアム・ウォーカー大統領。彼は中米一帯に、奴隷制をしいた連合国家の建国を企てた。この思想に危機感を募らせた、ほかの中米4カ国(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、コスタリカ)は連合軍を形成する。連合軍では、ニカラグアから亡命した政治家を擁護したコスタリカが中心となり、英国軍の援助を得て、攻め来るウォーカー軍に抵抗した。1856年3月、サンタロサにおいてウォーカー軍と中米連合軍が衝突。連合軍が勝利をおさめ、同年11月のリバスの決戦において、ウォーカー軍は撤退する。ウォーカー軍はアメリカ合衆国に助けられたが、ひとまず一連の抗争は終結した。サンタロサは19世紀の中米の一大事件を知るうえでも、とくに重要な場所となっているのである。


自然的価値が認められ世界遺産に

  またサンタロサ国立公園では、そのほぼ全域にわたって、たいへん貴重な生態系が残っている。1999年には「グアナカステ保全地区」の一部として、自然遺産として世界遺産に登録された。
  ここを世界的に有名にしているのが、ウミガメの産卵地となっている海岸だ。園内にはナンシティ(Nancite)海岸とNaranjo海岸という、2つの産卵スポットがあり、オリーブヒメウミガメ、オサガメ、パシフィックミドリウミガメにとっては最大の産卵場所となっている。
  海岸線ばかりでなく、内陸に入っても貴重な自然が残る。公園内にはサバンナ、草原、オークの森、シューメーカーツリーの森(shoemaker's treeはキントラノオ科)、ラフリーフツリーの森(roughleaf treeはミズキ科の低木)など、10の森林保護区がある。なかでも落葉樹の森には240種以上の樹木や低木が見られる。その中には ear tree(実のなる木)、gumbo-limbo(オクラのようなさやをもった食用植物)、mayflower(5月に咲く花の総称)などの樹木も含まれる。また常緑樹の森では、主にニセアカシア属の樹木(ニセアカシア、モモイロニセアカシア)、オーク、チクル(熱帯アメリカ産の植物でチューインガムの原料になる)などが多く自生している。


膨大な種数の動物が確認されている

  同様に動物の生態系も貴重である。155種類以上の哺乳類が生息し、その種類の半数以上をコウモリが占める。鳥類にいたっても、253種類をみることができ、さらに両生類、爬虫類はおよそ100種類もいる。また昆虫は1000種類以上もいるが、なかでもチョウ、ガの種類はとくに多く、現在3140種が確認されている。
  ここで最も有名な哺乳類はホエザル類であり、ほかにもアルマジロ、オジロジカ、ハナジロハナグマ(熱帯アメリカ産アライグマ科ハナグマ属)、クビワペッカリー(たてがみが短く首周りが白い。90cmくらいの小型イノシシ)、アライグマなども一般的であり、またハリネズミ属のスパイニーポケットマウスは、この公園で最もよく見られる小動物である。
  また、この自然保護区で最も一般的な鳥類は、カササギ、カケス、ミソサザイ、ホウカンチョウ(中南米産のキジ目ホウカンチョウ科の鳥類の総称)、オナガマイコドリ(中南米産のマイコドリ科の小鳥の総称、大きさはスズメくらいで雄が独特の求愛ダンスをするが鳴かないが特徴)、クロタカ、カラカラ(脚が長く地面を走る南米産のタカ類の総称)などがあげられる






ラテンアメリカ・カリブ海地域の裏世界遺産目次へ

裏世界遺産の館目次へ